主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

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光の国に転生した闇属性の俺!?

8)闇

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今日は兄に唆されて散歩に行けなかった。…まあ、闇属性の魔導書を俺のために手に入れてきてくれたことは感謝している。

魔導書で、やんわりだが自分の属性のことについて学ぶことが出来た。今の自分はと言うとめちゃくちゃ魔法を使ってみたい。闇属性格好良すぎる!!早くモンスターと戦ってみたい!!

(そんなの、家族が許してくれるわけないもんなあ~)

なんて考えながらベッドに入る。

(闇、夜と親和性がある)

どうにも今日読んだ本の内容が頭から離れない。もともと俺は魔法も使えない人間だったため「使ってみたい」という本能が抑えられない。もう夜も深まっているのに目が冴えてしまう。

(少し、水を飲もう)

ベッドから足を垂らしてふと、下を見る。自分の影を見て魔導書の言葉を思い出す。

ー影との親和性が高く、夜と相性がいい

(いまは夜、もしかしたら…)

気づいたらしゃがみこみ、自分の影に手を伸ばしていた。魔法を使う時は魔力の流れを意識すると使いやすくなると兄に教えて貰ったことがある。未だに魔力の流れなど分からないが影に自分の魔力を流すことを想像して触れる。

昔プレイしていたゲームで闇属性のキャラの中に影を操る奴がいた気がする。そいつの真似をしてみる。

「…影よ」

自分でも厨二病くさいなとは思ってる。一人でこんな事をしてるなんてと恥ずかしくなってくる。まだ俺には無理かと影から手を離そうとする。

グイッ

「え!?」

影に腕を掴まれる。影の中に引き込まれそうになるのを必死に耐える。すると、影の中からもう一本腕のようなものが生えてきて形を変えていく。

「な、なにこれ、どうすれば」

自分がどうやって発動したのかも分からない魔法に困惑する。慌てているとその影は少しずつ形を作り、やがて自分と同じくらいの背丈になる。

「ぼ、僕にそっくり」

「……」

「これどうやって戻すんだろう」

ピクリとも動かなくなった影の周りを観察する。真っ黒だが自分にそっくりだ。

「貴様か?我を呼んだのは」

「ひぇっ、ききき、きみはだれ??」

「お前が影を通じて我を呼んだのだろう。しかしなんだこのへなちょこな姿は」

「へなちょこ!?ぼくのこといってるの?」

突然喋りだした影に驚いた。しかも自我を持っているなんて。俺が呼んだ?どういう意味かよく分からない。

「ふむ、なるほど」

勝手に影は納得し始める。

「貴様、どうやって我を呼び出したか分かっていないな?しかし、こんな童に我を呼び出せるほどの魔力があるとは…面白い」

「なにをぶつぶつ言ってるの」

「童よ、名を名乗れ」

「……」

怪しい。怪しい人には名乗ってはダメだと両親や兄に口酸っぱく言われている。しかも誰かも分からない影に名前を教えるなんて危なすぎる。

「何故名乗らぬ」

「パパとかママが知らない人に名前は教えちゃダメだって」

「…ふむ。我はお前の呼び出した影だ。それに名を教えたところで何か起きるわけなかろう」

「ほんとに?」

「本当だ」

確かにこの影の言っていることも分かる。俺の影なら俺が制御できるはずだ。きっとそうだ。

「ぼくのなまえはナハト。影…君の名前は?」

「俺の名前か?……影(シャドウ)と呼ぶといい。童には分かりやすいだろう」

「うん、よろしくね、シャドウ」

俺には今日影の友達が出来てしまったのかもしれない。
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