今日このごろの魔法使い

ナカリー=ポットマン

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10.エピローグ

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エピローグ


 その声に応えるかのように、天使が降りてくるのが見えたと言う。

 残念ながら僕はその姿を見ることができなかった。天使を見ることができたのは、その場に集まっていた魔法使い達だけだった。

 そして、弓月さんも天使を見ていないと言う。

 おそらく、偶然の天候と、綾が呪文を唱えている姿が、集団暗示を引き起こしたのではないかと、弓月さんと結論付けた。

 僕と弓月さんは、綾が天使を召喚できると期待していなかったが故に、集団暗示にかからなかったのだろう。

 たぶん。


 選挙の結果は、詩織先生の圧勝に終わった。もしかしたら最初から、僕たちが小細工する必要なんかなかったのかもしれない。そう思わせるほど、投票数には差があった。

 詩織先生は、病院のベットの中で静かに微笑みながら、選挙の勝利報告を聞いていた。

 これで、詩織会長の誕生だ。そういえば、詩織先生は秋葉原魔法協会をどうするつもりなのだろう?今度お見舞いに行くときに、聞いてみたいと思う。


 和喜魔具では、詩織先生勝利の報告があった日、新店舗の中で、祝勝会と称してどんちゃん騒ぎが繰り広げられた。

 あの日の高層ビルの上では、おそらく真木氏の差し金であろう暴漢が乱入して来ていたのだそうだ。結局は和喜魔具のみんなに撃退され、あっという間に退散した。

 不思議な話だが、和喜魔具は魔法よりも殴り合いの方が強い。関係者しか知らない事実ではあるが。

 花火のほうは、打ち上がることなく、和喜魔具の段ボールの中に舞い戻ってきた。弓月さんは、仕方がないからどこかに売り飛ばすと言っていた。この人は意外と商魂たくましい。

 だから社長をやっているわけである。


 みたらしの母親は元気になって戻ってきた。

 病院は、僕と綾のおせっかいを認めてくれて、治療費は要らないと言ってくれた。それだけは正直ありがたい。

 ネコたちはそのまま親子共々、綾の使い魔になった。

 使い魔と言う名の愛ネコは、今日も元気に、食べて、寝て、遊んでいるという。

 個人的な意見だが、母ネコが助かったのは、動物病院のネコを助けたいという、鉄のような意思のおかげだと思っている。


   ◯


 僕と綾に関しては取り立てて言うべき事は何もない。

 今日も今日とて、魔法使いと一般人として、ごく普通の生活を続けている。


 僕は、いまだに綾が魔法使っているところを見たことがない。

 今回だってそうだ。

 あれは魔法じゃない。天候が引き起こした偶然だ。

 天使の梯子と呼ばれる自然現象。

 僕にとっては、それ以上でもそれ以下でもない。


 でも時々思う。

 本物の魔法は、もしかしたら偶然と見分けがつかないのかもしれないと。
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