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 ハウリーがそっと手を引いて連れてきてくれた場所は、花が咲き誇る庭園だった。

 ガゼボに座り、ハウリーが手早く用意してくれたお茶を飲んでいる。
 あっという間の早業に、ミシェラは戸惑ってしまう。

「準備が早すぎじゃないですか……?」
「実は、最初からここに誘おうと思っていたんだ。この時間に食べる甘いものは背徳の味だよな」

 いたずらっぽく笑うハウリーは、ミシェラにクッキーを渡した。

「そうなんですか? クッキーは高いからですか?」
「……確かにミシェラには無縁の話だったな。美味しく食べてくれ」
「はい。甘いものって本当に美味しいですよね!」

 お肉も美味しいが甘いものも美味しい。ミシェラは最近知ったお菓子というものにすっかり夢中だった。

 すっかり無心で食べてしまう。一枚をあっという間に食べ終わる。

「私のも食べるか?」
「えっ。いいんですか? 有難うございます!」

 美味しいものをくれる人はいい人だ。さっきのはバターの香りのものだったが、こちらはナッツが入っているようで、食感が全然違う。

「ミシェラは美味しそうに食べるな。……でもまだ太らないな」
「えっ。家畜を見るような目で私を見るのはやめてください」
「そんな目では見ていない。……でも、すっかり綺麗になったな」

 風で流れる白髪を撫でながら、ハウリーが目を細めた。

「フィアレーが毎日凄く頑張ってくれるんです。凄いですよね。自分の髪の毛じゃないみたい。それに、凄くいいにおいがするんですよ」

 褒められたのが嬉しくて、ミシェラはずいっとハウリーに詰め寄った。

「本当だ」

 ハウリーは近寄ってきたミシェラの髪をひと房取り、顔を寄せにおいをかぐ。
 そのまま肩を抱き寄せられ、ミシェラは分とは違う柑橘系のいい匂いがすることに気が付いた。

 ハウリーの匂いだ、と意識した瞬間慌てて身体をはなした。

「わー! すいません! 急に近寄ったりして。恥ずかしい」
「まったく。他の人にしたら駄目だよ。……こんな風に距離を詰められるんだから」
「誰にもしませんハウリー様にもしませんごめんなさい!」
「私はいつでも歓迎だけれどね」
「ハウリー様は意外と冗談が好きですよね」
「そうだったかな」

 いたずらっぽく笑うハウリーに、ミシェラも笑ってしまう。

「さぁお茶会の続きをしよう。星もゆっくりみなくてはね」
「ここに来るまでに歩きながら見ましたよ?」
「そういうことじゃない」

 ふたりで楽しく過ごしたガゼボは、ミシェラの宝物の時間になった。

 その日も、ミシェラは夜遅くまで勉強に励んだ。
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