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web連載
海老天
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「認められないわね……まだまだ半人前よ、中途にいい腕持っているばかりに小さく纏まっているわね」
「なんだと! 喧嘩売ってんのか?」
「あなたの腕は認めているわ、だけどね所詮小さなお山の上で、ショボい風景を見て満足している田舎のボス猿だって言ってるだけよ? 喧嘩なんか売ってないわ」
「ぐぬぬぬぬ! おい! イント手伝え! この女の鼻っ柱を叩き折ってやる!」
「え~……」
何故こうなった……。
エンガルのハンターギルドにて聖女のハンター登録を終わらせて、エリーさんから預かった指名依頼委任状を提出、速やかに指名依頼を受理して帰ろうとした時だ。
「イントくーんお腹がペコりんだから、何か食べて行かない?」
リンダがお腹を押さえてクネクネと身体を揺らす。
この上なくウザい。
「うちの旦那様に食べ物の相談をしても、うどんしか返って来ないわよ」
「うどん?! うどんがあるの?」
デックスがウンザリした顔で、答えたセリフにリンダが食い付いた。
「え? あるけど、そんなに食い付く食べ物なの?」
「行きましょ! すぐ行きましょ! れっつらごー!」
リンダがデックスの腕を取りうどん屋を案内させる。
「あなた達が住んでいた所ってそんなにうどんが御馳走なの?」
デックスが呆れた顔で聞いてくる。
「御馳走ですね」
「主食ね」
俺とリンダの返答にデックスは諦めた顔で、うどん屋への道程を歩き始めた。
うどん屋は昼時とあって今日も混雑している。
家族連れやハンター達、商店会の親方連中も素早く食って、消化にもいいうどんを重宝している。
暖簾をくぐるとうどん屋のマスターが若干渋い顔で迎え入れて、カウンターに座らせる。
うどん屋のメニューは素うどんとぶっかけうどんと肉うどんだけだ。
俺はいつも通り素うどんを頼み、デックスは肉うどん、リンダも素うどん、マリアはぶっかけうどんを頼む。
打ち立てのうどんを大きな寸胴で茹で始め、俺がプレゼントした檜の棍棒でゆっくりと混ぜ始める。
中々堂に入った仕草である。
エンガルのうどん屋の第一人者としての風格が出て来た。
やがて各々の前に注文の品が並び、全員が一斉に啜り始める。
うむ、良い出汁である。
うどんの茹で具合も素晴らしい。
リンダも夢中で出汁を啜っているので、お気に召したらしい。
全員がうどんを食べ終わり、丼の中の出汁が一滴も残っていないのをうどん屋のマスターが横目で確認する。
「いつも通りうまいっすね、流石です」
俺が話し掛けるとマスターは苦笑いをする。
「うどんは美味しいわね、出汁もキチンと仕事をしているわ、でもこのうどんは出来損ないね、食べられないわ」
「……」
「……」
「リンダ様のおっしゃる通りです」
「……」
「……」
汁まで残さず完食しておいて何を言い出すのかこの女。
「マスター、勘定お願い致します」
「お、おう」
「無視すんなー! とさかに来たわ!」
リンダが突然激昂する。
「海老天が入ってこそのうどんよ! 1ランク上の優越感がここのうどんには欠けているわ!」
「汁まで全部完食しておいて何言ってんすか……」
「それはそれこれはこれよ!」
「リンダさん勘定は俺が支払いますんで、心配しないでも平気ですよ?」
「ごねてタダ食いしようとしてるんじゃないわよ! 海老天うどんが食べたいの!」
「きちんと完食しといて何言ってんすか、帰りますよ」
ここで今回の冒頭のやり取りになったしだいである。
とりあえずリンダ達はデックスに送らせて、俺はうどん屋に残る。
「マスター、気にしなくていいっすよ、あんなの野良犬にでも噛まれたと思って、忘れちゃいましょう」
むっつりと黙ったままのマスターは、こちらに向き直り口を開いた。
「なあイント、そんなにエビ天ってのは美味いのか?」
「まあ海老天は美味いっすね」
「まあ、いいか、ちょっと買ってくるぜ、店番頼む」
マスターは俺を置き去りにして、暖簾を外し店を出て行った。
マスター……お客さんも置き去りですか……。
「なんだと! 喧嘩売ってんのか?」
「あなたの腕は認めているわ、だけどね所詮小さなお山の上で、ショボい風景を見て満足している田舎のボス猿だって言ってるだけよ? 喧嘩なんか売ってないわ」
「ぐぬぬぬぬ! おい! イント手伝え! この女の鼻っ柱を叩き折ってやる!」
「え~……」
何故こうなった……。
エンガルのハンターギルドにて聖女のハンター登録を終わらせて、エリーさんから預かった指名依頼委任状を提出、速やかに指名依頼を受理して帰ろうとした時だ。
「イントくーんお腹がペコりんだから、何か食べて行かない?」
リンダがお腹を押さえてクネクネと身体を揺らす。
この上なくウザい。
「うちの旦那様に食べ物の相談をしても、うどんしか返って来ないわよ」
「うどん?! うどんがあるの?」
デックスがウンザリした顔で、答えたセリフにリンダが食い付いた。
「え? あるけど、そんなに食い付く食べ物なの?」
「行きましょ! すぐ行きましょ! れっつらごー!」
リンダがデックスの腕を取りうどん屋を案内させる。
「あなた達が住んでいた所ってそんなにうどんが御馳走なの?」
デックスが呆れた顔で聞いてくる。
「御馳走ですね」
「主食ね」
俺とリンダの返答にデックスは諦めた顔で、うどん屋への道程を歩き始めた。
うどん屋は昼時とあって今日も混雑している。
家族連れやハンター達、商店会の親方連中も素早く食って、消化にもいいうどんを重宝している。
暖簾をくぐるとうどん屋のマスターが若干渋い顔で迎え入れて、カウンターに座らせる。
うどん屋のメニューは素うどんとぶっかけうどんと肉うどんだけだ。
俺はいつも通り素うどんを頼み、デックスは肉うどん、リンダも素うどん、マリアはぶっかけうどんを頼む。
打ち立てのうどんを大きな寸胴で茹で始め、俺がプレゼントした檜の棍棒でゆっくりと混ぜ始める。
中々堂に入った仕草である。
エンガルのうどん屋の第一人者としての風格が出て来た。
やがて各々の前に注文の品が並び、全員が一斉に啜り始める。
うむ、良い出汁である。
うどんの茹で具合も素晴らしい。
リンダも夢中で出汁を啜っているので、お気に召したらしい。
全員がうどんを食べ終わり、丼の中の出汁が一滴も残っていないのをうどん屋のマスターが横目で確認する。
「いつも通りうまいっすね、流石です」
俺が話し掛けるとマスターは苦笑いをする。
「うどんは美味しいわね、出汁もキチンと仕事をしているわ、でもこのうどんは出来損ないね、食べられないわ」
「……」
「……」
「リンダ様のおっしゃる通りです」
「……」
「……」
汁まで残さず完食しておいて何を言い出すのかこの女。
「マスター、勘定お願い致します」
「お、おう」
「無視すんなー! とさかに来たわ!」
リンダが突然激昂する。
「海老天が入ってこそのうどんよ! 1ランク上の優越感がここのうどんには欠けているわ!」
「汁まで全部完食しておいて何言ってんすか……」
「それはそれこれはこれよ!」
「リンダさん勘定は俺が支払いますんで、心配しないでも平気ですよ?」
「ごねてタダ食いしようとしてるんじゃないわよ! 海老天うどんが食べたいの!」
「きちんと完食しといて何言ってんすか、帰りますよ」
ここで今回の冒頭のやり取りになったしだいである。
とりあえずリンダ達はデックスに送らせて、俺はうどん屋に残る。
「マスター、気にしなくていいっすよ、あんなの野良犬にでも噛まれたと思って、忘れちゃいましょう」
むっつりと黙ったままのマスターは、こちらに向き直り口を開いた。
「なあイント、そんなにエビ天ってのは美味いのか?」
「まあ海老天は美味いっすね」
「まあ、いいか、ちょっと買ってくるぜ、店番頼む」
マスターは俺を置き去りにして、暖簾を外し店を出て行った。
マスター……お客さんも置き去りですか……。
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