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連行
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「おい、おいイント起きろ」
ガクガクと乱暴に揺すられて、うっすらと覚醒してきたところでマスターの声が聞こえて来た。
「あれ? 俺なんで寝てたんすかね?」
「知らねえよ、突然ひっくり返って動かなくなったからな、忙しかったから放っておいた」
マスターがしかめっ面でこちらを見ているが、マスターの着ている青い調理服を見て全ての記憶が蘇った。
「ああ……青い惨劇で気を失ったみたいっすね」
「お前本当にハンターか?」
マスターが手に持った皿を俺に見せる。
「磯辺揚げで使っている衣を使ったんだがな、こんな感じでエビの天ぷらは平気か?」
マスターが差し出したのは、通常サイズの海老天と変わらないごく普通の海老天だった。
「サイズは包丁を入れて調整したんですか?」
「丼に入りきらなかったからな、揚げてから切るよりも切ってから揚げた方がいいだろう」
尻尾が無いだけで、見た目は海老天になっているので、さすがマスターいいセンスをしている。
「で?」
「で?」
「味見しろよ」
「見ただけで美味いと解ります」
じろりとこちらを睨むマスター。
「おーい、うちのダンナはここに居るかい?」
エステアがうどん屋の扉を乱暴に開ける。
「エステア静かに開け閉めしろって、いつも言ってんだろ? まあいいやいい所に来た。
これ食って見ろ」
マスターが揚げたてのエビの天ぷらを差し出す。
「なんだこれ?」
なんだこれ? の返答を待たずにエステアはひょいと口に放り込んだ。
むぐむぐと咀嚼しながら、腕を組んで考えこむ。
「エビっぽい味だけど、なんかぼやけた味だな? 焼いた方が美味いんじゃねえか?」
「エステア、うどんの汁と一緒に食べるんだよ」
丼にうどんの汁を少し入れて、エビ天を浸けて差し出すと、エステアはまた乱暴に口に放り込む。
「お? これはうまいなマスター、新しいメニューか?」
マスターもうどん汁と一緒にエビ天を噛みしめている。
「ふむ……これは美味いな、あの生意気な姉ちゃんがうだうだ言う気持ちも解らんでもない」
「エビ天の量はあくまでうどんの邪魔をしない程度で、主役はやはりうどんですよ」
「ああ、あまり沢山入れるとうどんを邪魔しちまうな」
腕を組み考えこんでるマスターの横顔は、すっかりうどん屋のご主人だ。
「ああ? 何見てんだ? 俺はうどん屋じゃねえぞ?」
「でも難癖つけられたら面白く無いですよね?」
「おうよ! あの姉ちゃんを黙らすのに今回は特別だ」
エステアが隣でばくばくエビ天を食べながら、不意に顔を上げた。
「そう言えばダンナ、エリーの姉御が仕事しろってよ? 連れ戻して来いって言われたんだった」
脳みその中の重大な情報を、エビ天に押し出されていたエステアが告げる。
「何でそう言う重大な事を先に言わないんすか、帰ったらまた怒られるじゃないっすか」
ばたばたと準備をしてうどん屋を飛び出そうとすると。
「おいイント、あの姉ちゃんに明日来いって伝えておけ! エビ天うどんを食わせて土下座させてやる!」
マスターが勝ち誇った様に弾んだ声を俺の背中に投げかけた。
「言っておくっす」
そんな事より指名依頼を受けてしまった俺は、これで雇用関係になってしまった、雇用主はおおっぴらに俺の事をこき使える様になってしまったので、帰ったらエリーさんに遠慮なしに怒られてしまう、急いで帰らなくては……。
****************************************************
「だからですねエステア、うどんを啜った後咀嚼する前に少し汁を口の中に入れるんですよ、そしてお出汁と一緒にうどんを味わうんです。
そうするとうどんを食べ終わる頃には、お出汁も丼に残らず綺麗に……」
「おおおい!」
「ダンナ、誰か手を振ってるぜ?」
孫の湯の近くまで辿り着いた所で、孫の湯の敷地から誰かが駆け寄ってくる。
「エステア? 俺は逃げた方がいいんすかね?」
「なんでだ?」
「なんかこう言うシチュエーションって、今まで碌な事が無かったんですよ」
エステアが俺の腕をがっしりと掴み、逃げられない様に固定した。
「大丈夫、ダンナの助手だよ」
ガクガクと乱暴に揺すられて、うっすらと覚醒してきたところでマスターの声が聞こえて来た。
「あれ? 俺なんで寝てたんすかね?」
「知らねえよ、突然ひっくり返って動かなくなったからな、忙しかったから放っておいた」
マスターがしかめっ面でこちらを見ているが、マスターの着ている青い調理服を見て全ての記憶が蘇った。
「ああ……青い惨劇で気を失ったみたいっすね」
「お前本当にハンターか?」
マスターが手に持った皿を俺に見せる。
「磯辺揚げで使っている衣を使ったんだがな、こんな感じでエビの天ぷらは平気か?」
マスターが差し出したのは、通常サイズの海老天と変わらないごく普通の海老天だった。
「サイズは包丁を入れて調整したんですか?」
「丼に入りきらなかったからな、揚げてから切るよりも切ってから揚げた方がいいだろう」
尻尾が無いだけで、見た目は海老天になっているので、さすがマスターいいセンスをしている。
「で?」
「で?」
「味見しろよ」
「見ただけで美味いと解ります」
じろりとこちらを睨むマスター。
「おーい、うちのダンナはここに居るかい?」
エステアがうどん屋の扉を乱暴に開ける。
「エステア静かに開け閉めしろって、いつも言ってんだろ? まあいいやいい所に来た。
これ食って見ろ」
マスターが揚げたてのエビの天ぷらを差し出す。
「なんだこれ?」
なんだこれ? の返答を待たずにエステアはひょいと口に放り込んだ。
むぐむぐと咀嚼しながら、腕を組んで考えこむ。
「エビっぽい味だけど、なんかぼやけた味だな? 焼いた方が美味いんじゃねえか?」
「エステア、うどんの汁と一緒に食べるんだよ」
丼にうどんの汁を少し入れて、エビ天を浸けて差し出すと、エステアはまた乱暴に口に放り込む。
「お? これはうまいなマスター、新しいメニューか?」
マスターもうどん汁と一緒にエビ天を噛みしめている。
「ふむ……これは美味いな、あの生意気な姉ちゃんがうだうだ言う気持ちも解らんでもない」
「エビ天の量はあくまでうどんの邪魔をしない程度で、主役はやはりうどんですよ」
「ああ、あまり沢山入れるとうどんを邪魔しちまうな」
腕を組み考えこんでるマスターの横顔は、すっかりうどん屋のご主人だ。
「ああ? 何見てんだ? 俺はうどん屋じゃねえぞ?」
「でも難癖つけられたら面白く無いですよね?」
「おうよ! あの姉ちゃんを黙らすのに今回は特別だ」
エステアが隣でばくばくエビ天を食べながら、不意に顔を上げた。
「そう言えばダンナ、エリーの姉御が仕事しろってよ? 連れ戻して来いって言われたんだった」
脳みその中の重大な情報を、エビ天に押し出されていたエステアが告げる。
「何でそう言う重大な事を先に言わないんすか、帰ったらまた怒られるじゃないっすか」
ばたばたと準備をしてうどん屋を飛び出そうとすると。
「おいイント、あの姉ちゃんに明日来いって伝えておけ! エビ天うどんを食わせて土下座させてやる!」
マスターが勝ち誇った様に弾んだ声を俺の背中に投げかけた。
「言っておくっす」
そんな事より指名依頼を受けてしまった俺は、これで雇用関係になってしまった、雇用主はおおっぴらに俺の事をこき使える様になってしまったので、帰ったらエリーさんに遠慮なしに怒られてしまう、急いで帰らなくては……。
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「だからですねエステア、うどんを啜った後咀嚼する前に少し汁を口の中に入れるんですよ、そしてお出汁と一緒にうどんを味わうんです。
そうするとうどんを食べ終わる頃には、お出汁も丼に残らず綺麗に……」
「おおおい!」
「ダンナ、誰か手を振ってるぜ?」
孫の湯の近くまで辿り着いた所で、孫の湯の敷地から誰かが駆け寄ってくる。
「エステア? 俺は逃げた方がいいんすかね?」
「なんでだ?」
「なんかこう言うシチュエーションって、今まで碌な事が無かったんですよ」
エステアが俺の腕をがっしりと掴み、逃げられない様に固定した。
「大丈夫、ダンナの助手だよ」
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