扉の向こう

笹木紅

文字の大きさ
6 / 6
恨みの連鎖

騙されたクラスメート

しおりを挟む
「梨緒。ほんとのこと言って。」
「ほんとのことって?」
「那月さんにだまされてるんでしょ?
そのくらいわかるよ。ね?あんたのためよ。」
「違うわ、ほんとに葉留佳はなにもしてない。そんなことする子じゃない!私が保証するわ。」
なぜか、私ではなく梨緒が攻められている。こんなのおかしい。たしかに私はなにもしてない。でも、梨緒はもっと関係ない。
「梨緒!もういいから。
みんな!私、やってない!盗ってない!でも、みんながそれを信じられないなら先生を呼んで!」
「そんなの、信じられるわけないじゃない!」
「そーよ。あんたなんてもともと、このクラスでも浮いてたじゃない!」
「まさか、それで?那月さんがそんな人だとは思ってなかった………。」
「ちょっと、みんな!」



「もーやめろって!!!」


「つ、津向くん…………。」
「そんなに那月ばっか攻めたってなんもでてこねーよ。人のこと疑う前に自分だろ!?お前はちゃんと確認したのかよ?
加佐音のことだからしてねーだろ。」





              *

ふふ。いい気味。いいわよ、梨緒。
あなたって、ほんといい子ね。
私の思い通りに動いてくれて。
でも、そこまで必死になってそいつのことをかばう必要はどこにもないのよ?
本当の親友のような顔して。あなたの親友は私でしょ?私から離れたらあなたはなにもできなくなっちゃうよ?
              *

「バカ言わないで!
ちゃんと確認したからこんな大事になってるんでしょ!」
「どーだかな!お前のことだ。自分の失敗他人に押し付けるつもりだろ!そーいうのうんざりなんだよ!」
「はぁ?いくら私の元カレだからって調子にのらないでよ!ちょっと!どーしてくれんのよこの空気!あんたのせいよ?那月さん!さっさと出しなさいよ盗ったお金」
「だから私はやってないって!」
「うるせんだよ、黙れ!
証拠も無しに1人だけ責めんな!おい!お前らさー都合のいい時だけ那月に頼って、こーなったら誰も庇わねーのか?そんなん友達って言うのかよ!お前らみんな偽善者だ!」
「なんなのよさっきから!那月さんばっかり庇って!盗られたこっちの身にもなってよ!」
「だったら1人だけ責められる那月の身にもなってみろ!」
「あーもう!うっさいのよ!那月、那月って!なに?あんた那月さんのこと好きなの?だからそんなに一生懸命庇ってるわけ?」
「なんでそーなるんだ!」
この空気に耐えられなくなって私は2人の言い合いに間髪を入れた。
「もうやめてよ!私はやってない!
それでもみんなが私を疑うなら、募金額分全部私が出すわよ!それでいーでしょ?」
「ちょ、ちょっと葉留佳!そんなの」
「いいよもう。それで納得いかないなら私はこと学校を出てく。」
そこまで覚悟して言った時。教室の片隅で声が上がった。
「あった!」
多分全員が一斉にそっちを向いた。
「あ、ありました。か、加佐根さんの机の中に……」
「はぁ?」
その瞬間。津向くんがそらみたことかという顔で加佐根さんに言葉をかけた。
「ほらな?やっぱりお前だったろ!
人疑う前に自分のことちゃんと確認しろよな!」
「……………………」
「謝れよ!那月に」
「……………………」
「謝れって!」
「いやよ!」
「なんでだよ!お前が持ってたんだろ?那月は悪くないのにお前のせいでみんなから疑われたんだぞ!」
「私のせいじゃないわ!みんなから信頼されてない那月さんが悪いのよ!」
教室はしーんと静まり返った。
そして、あちこちで声があがった。
「さいってー。」
「加佐根さんってそーいう人だったんだ。」
「なんか幻滅ー。」
「ないわ~。」
「いるよね~。自分の失敗認めない人」
「うわー。」
「もー無理。」
「こんな人と友達だったなんて恥ずかし」
なんて言葉が聞こえた。
加佐根さんはいてもたってもいられなくなったのか、走ってどこかへ行ってしまった。
加佐根さんがいなくなると同時にクラスの人が話しかけてきた。
「大丈夫だった?」
「私も那月さんはそんな人だなんて思ってなかったよ?」
「そーそー。だって私たちー。友達じゃん?」
「ね~。」
なんて勝手なこと言ってる。
「おい!」
やっぱり津向くんは見逃さなかった。
「調子いーな。 お前らだって散々言ってたくせに。とにかく謝んのが先だろ!」
「あ、そーだねぇ。ごめんねぇ」
「ごめんごめん」
軽くない?
「ごめん!でも、友達だもん。許してくれるよね!」
いるいる。こーいう人種。
「ふふっ。そっかー。友達ね~。
いつから?」
「は?」
「いやいや。前からだよー?」
「ふーん。前からなんだー。
でもね~、私のこと信じてくれない人は私の中では友達じゃないの。都合のいい時だけ私を使う人は、友達じゃないの。今みたいな時。私を信じてくれる人が本当の友達。みせかけだけの友達なんていらない。あんたたちなんて友達じゃないわ!馴れ馴れしくしないで!」












この時。私の運命が決まってた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

処理中です...