扉の向こう

笹木紅

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恨みの連鎖

きせられた罪

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母さんのことは大好き。
だけど、家族を裏切る母さんは嫌い。
そんなことを思いながら公園のベンチに座っていた。
「元気ないね。なんか、あった?」
ふと、上から降ってきた声。
驚いて顔を上げると、そこには懐かしい顔があった。
「白石!」
「よっ!」
彼は白石克樹。中学の頃の同級生だ。
高校も一緒だけど、クラスが離れているので学校で会ったことはなかった。
「なに?なんであんたここにいんの?」
「学校帰りだよ。お前こそなに。
家反対じゃん。あっ!まさか、グレたのか?家出か?」
「バッカ!グレてないっ!
人が悩んでんのにあんたはもーっ!!」
「悩み?なんだよ。振られた?」
こいつはもーっ。ほんっとに!!!
「違うって!母さんがっ…!あ……」
口をすべらせてしまった。
「母さん?なんだよ。」
恥ずかしい。家族の中でのことなんて。
しかも、こんなこと………。
「今日の朝、写真が送られてきたの。
写ってたのは母さんと知らない男の人でまさか母さん……。」
でも、なぜかこいつには言えた。
梨緒には言えそうにないこと。
私は泣いていた。気づいたら涙が出ていた。
私は抱きしめられた。力が強くて、正直いって、優しくはない腕の中で泣いた。
「ごめん。こんな時に言うことじゃないけど、俺、俺、お前のことっ!」
「やっ!」
突き飛ばしてしまった。
中学の頃の記憶が蘇る。
みんなにからかわれた。
克樹が私のことを好きだって噂がながれて。
怖かった。ずっとみんなのこと上からみてたから。
「ごめん。でも、俺本気だから。
あの時みたいな目には合わせないから。
考えといて。」
そう言ってまた私を抱きしめた。










               *

だめだよ、克樹。
こんな目立つところで抱き合っちゃ。
私の理性がどっかいっちゃったら、その人がどんな目にあうかわかんないよ?
いいの?
あっ、いいのか。だって克樹は、私のもの。その人のことなんて、どーでも。
残念だったわね、葉留佳。
克樹が今好きなのはあんたじゃなくて、私。今、あんたに告白してる克樹は偽物。嘘をついてるの。
梨緒。あんたの願いもちゃんと叶えてあげる。明日、上手くやってよ?

                 *

「ない!ない!どこにもない!」
この騒ぎは30分も前から続いている。
ことの発端は、募金活動をしているという話しから始まった。
「那月さん。風邪は大丈夫?」
クラスの子が取り巻きを連れて話しかけてきた。
「あー、うん。まあ、へーき。」
そう答えると、
「そっか、よかった。で、早速なんだけど、那月さん、募金してみない?」
「え、募金?」
「うん。緑地募金。」
この、緑地町には町を良くしようという活動からうまれた募金がある。
特に、高校や大学で多く活動している。
「このクラスのみんなは昨日、募金したんだけど昨日那月さんいなかったから。」
「うん。いーよー………。」
「じゃ、箱持ってくるね!」
募金しないかと言っていたけど、クラス全員がしたんだからあんたもしなさいよという目だった。ほぼほぼ無理やりじゃないか。そう思った時だった。
「ちょっと!ないじゃない!」
「なんだ、どーした!?」
「あ、蒼井くん。募金箱が。
な、なくなってるの。」
クラス全員が固まった。
「おい、まじかよ。」
「とりあえず、みんなで探そう。
きっとどこかにあるよ。」
そう言ってみんなをまとめたのはクラス委員の蒼井くんだった。
こういう時、彼はまとめ役に適している。
私たちは窓側を探した。
これは私の提案だった。
廊下側はたくさん人がいたから。
対して窓側には誰もいなかった。


「あった。」
あった。
《緑地募金》
と書いてあった。
窓側にある暖房の後ろにあるのではないかと思い、覗きこんでみると、案の定見つかった。
「あ、ありがとー、那月さん。」
みんなが安堵の表情を浮かべたけど、それは次の瞬間一気に冷めた表情に変わった。
「ない!ない!どこにもない!」
「なにが?」
「集めたお金。」
…………………………………………!!!




「問題は誰が盗ったかだよな。」
「みんな怪しいわよ。
誰?誰よ盗ったの!!」
「そんなにムキになんなって、加佐音」
「はぁ?ムキにもなるわよ!
せっかく集めたのよ?私たち。それにあんたたちだけじゃないのよ。全校生徒分よ!このクラスで最後だからって面倒だったからもってきたのよ。
あ、わかった。あんたでしょ。北郷。
あんたが盗ったんでしょ!」
「はぁ、ふざけんなよ!なんで俺なんだよ。てか、そんなこと言ってお前なんじゃねーえの、加佐音。」
「んなわけないでしょ!」
2人の言い合いは誰も止められなかった。
「そー言えば、結構簡単に見つけてたわよね。那月さん。」
そう言ったのは、地味であまり目立つのが得意ではない猪瀬さんだった。
「そーだ。そーよ、那月さん。あんたじゃないの?お金だけ盗って、箱は隠したけど、騒ぎになったから急いで出したんだわ。あなたが盗ったのね!」
「ちょ、待ってよみんな。私じゃないよ!」
「嘘!そんな人だったなんて……。
信じらんない!」
「やめなよ、麻里子。みんなも。
葉留佳はそんなことする子じゃないよ。
親友の私が言ってんのよ?」
「梨緒、あんた買収された?
素直にいって。これはお金がからんでんのよ。親友とか、クラスメートとかの問題じゃないでしょ?
茉奈、先生呼んできて!話し合いで解決できんのかしらね~、那月さん?」

梨緒以外のクラス全員が私の敵だった。
私は募金泥棒として、みんなから白い目で見られることとなってしまった。






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