12 / 69
サトリ編
012 翔太郎の願い
しおりを挟む
次の日の朝、病院にて。翔太郎は韻の看病にやってきていた。
しかし韻はあれほどの怪我をしたのにも関わらず、元気そうだった。好物のチョコアイスバーを翔太郎から手渡され、韻は満点の笑顔で言う。
「ラッキー!チョコアイスバー買ってきてくれたの?サンキュー!」
昨日の今日でこの元気である為、翔太郎は思わず苦笑。
「韻は相変わらずの回復力だなぁ。二週間入院のはずなのに。」
「ん?もう大丈夫だよ。」
韻はそう言って、チョコアイスバーを頬張る。アイスで幸せそうな顔の韻。すると韻の肩に乗っていたポチは言った。
〔韻、人間としての感覚が麻痺してないかい?普通の人間なら動けなくなって当然の傷だよそれは。〕
そう言われ、韻は目を丸くして黙り込む。そして心配する翔太郎を見ると、韻は大人しくチョコアイスバーを食べながら言う。
「えっと…安静にしています…。」
「よろしい。」
翔太郎はそう言って笑顔を見せると、席を立って言う。
「じゃあ、僕は買い物があるから。」
「おう。兄貴、アイスありがとー!」
陽気に言う韻に翔太郎は笑顔で手を振り、それから病室を出た。翔太郎が廊下を歩いていると、隣を浮遊するレフは言った。
「韻さん、元気そうでしたね。」
「そうだね。お医者さんも言っていた、回復が早すぎるって。もう殆ど傷が塞がっているんだって。」
「普通ではないのですね。死者は怪我をしませんので、どこから普通じゃないかわからないです。」
レフの質問に、翔太郎は思い悩んだ様子で言う。
「普通じゃないよ。…以前も韻が大怪我した日があってね、その時も凄い回復力だったよ。…いや、あの時よりも…」
「彼は人ではないのですか?」
その言葉に、翔太郎は嫌な予感がするのか表情を歪めた。翔太郎は病院の外まで出ていたが、思わず韻の病室を見上げてしまう。翔太郎は少し黙ると、病院に背を向けて言った。
「人…から離れてしまったのかな…?…妖と関わっているから…。」
そう呟くと、翔太郎は悪い予感がした。
(もしかして韻は、これからもっと人間離れしていくんじゃないか…?普通じゃなくなったら、もう人間の生活ができなくなるんじゃないか…?そんなの…良くない事に決まってる…。)
焦りを覚えた翔太郎はレフの方を見て言う。
「あの、僕の願いを聞いてください。願いは、全ての霊能者の力を集めたら黄泉が叶えてくれるんですよね?」
「お?やっとお決めになったのですね。ええ、翔太郎さんの言う通りですよ。」
レフが笑顔を向けると、翔太郎は真面目な表情で言った。
「僕が霊能者の霊力を全て集めたら、…『韻を普通の人間に戻したい』んです。」
願いを聞いたレフは、目を丸くして驚いた。しかし変わらない翔太郎の表情を見ると、レフは優しく笑む。
「やっぱり、自分よりも他人の方が大事ですか…。自分が消えてしまってもですか?」
「勿論です。それに韻は他人じゃないです、家族です。」
「わかっていますよ。」
レフはそう言って笑った。それからレフは続ける。
「翔太郎さんの願いはわかりました。…でも、願いを変えたくなったら変えてもいいんですよ。」
しかし翔太郎の表情から、決意は固いように見えた。
「変わりません。」
「そうですか…。」
レフがそう返事をすると、翔太郎はふと思い出した顔で言う。
「ちなみに屍人の制約を破ると霊力を得られるって話ですが、もし一般人が制約を破ったら霊力は一般人の物になるんですか?例えば、韻に僕の正体がバレて僕が消えたら…韻が僕の力を得るんでしょうか?」
「一般人は難しいですが、霊能者の家系である韻さんなら得る可能性が高いですね。そして韻さんが亡くなれば、彼も屍人になるでしょう。」
それを聞くと、翔太郎は顔が真っ青に。
(負の連鎖だ…!絶対にバレないようにしないと…!)
するとそこに、海美がやってきていた。海美は韻のお見舞いなのか、チョコアイスバーを沢山買ったビニール袋を持ってきていた。翔太郎はそれを見ると、困った様子で言う。
「海美、さっき韻にはアイスを差し入れしたばかりなんだ。しかもこんなに大量は…。」
海美は翔太郎を見るなり悪態をついた。
「うっせーな弱っちぃ兄貴!海美は今日で寮に戻るから、いない時用に持っていくんだよ!」
「それなら僕に言ってくれれば…」
と言ったが、海美は翔太郎に言い放つ。
「うっせー!私が持っていくんだ!」
そう言って、翔太郎を横切って病院へ向かってしまった。翔太郎は溜息をついてしまうと、レフは笑顔で言う。
「翔太郎さんのご兄弟は、みんな仲良しでいいですね。」
「嫌味ですか…?」
翔太郎は疲れた様子で言い、レフは悪気がない為に首を傾げていた。翔太郎は海美の扱いに困っているのか、深い溜息。
(海美だけは、扱いにくくて困る…。海美は韻が大好きだからなぁ…。)
しかし韻はあれほどの怪我をしたのにも関わらず、元気そうだった。好物のチョコアイスバーを翔太郎から手渡され、韻は満点の笑顔で言う。
「ラッキー!チョコアイスバー買ってきてくれたの?サンキュー!」
昨日の今日でこの元気である為、翔太郎は思わず苦笑。
「韻は相変わらずの回復力だなぁ。二週間入院のはずなのに。」
「ん?もう大丈夫だよ。」
韻はそう言って、チョコアイスバーを頬張る。アイスで幸せそうな顔の韻。すると韻の肩に乗っていたポチは言った。
〔韻、人間としての感覚が麻痺してないかい?普通の人間なら動けなくなって当然の傷だよそれは。〕
そう言われ、韻は目を丸くして黙り込む。そして心配する翔太郎を見ると、韻は大人しくチョコアイスバーを食べながら言う。
「えっと…安静にしています…。」
「よろしい。」
翔太郎はそう言って笑顔を見せると、席を立って言う。
「じゃあ、僕は買い物があるから。」
「おう。兄貴、アイスありがとー!」
陽気に言う韻に翔太郎は笑顔で手を振り、それから病室を出た。翔太郎が廊下を歩いていると、隣を浮遊するレフは言った。
「韻さん、元気そうでしたね。」
「そうだね。お医者さんも言っていた、回復が早すぎるって。もう殆ど傷が塞がっているんだって。」
「普通ではないのですね。死者は怪我をしませんので、どこから普通じゃないかわからないです。」
レフの質問に、翔太郎は思い悩んだ様子で言う。
「普通じゃないよ。…以前も韻が大怪我した日があってね、その時も凄い回復力だったよ。…いや、あの時よりも…」
「彼は人ではないのですか?」
その言葉に、翔太郎は嫌な予感がするのか表情を歪めた。翔太郎は病院の外まで出ていたが、思わず韻の病室を見上げてしまう。翔太郎は少し黙ると、病院に背を向けて言った。
「人…から離れてしまったのかな…?…妖と関わっているから…。」
そう呟くと、翔太郎は悪い予感がした。
(もしかして韻は、これからもっと人間離れしていくんじゃないか…?普通じゃなくなったら、もう人間の生活ができなくなるんじゃないか…?そんなの…良くない事に決まってる…。)
焦りを覚えた翔太郎はレフの方を見て言う。
「あの、僕の願いを聞いてください。願いは、全ての霊能者の力を集めたら黄泉が叶えてくれるんですよね?」
「お?やっとお決めになったのですね。ええ、翔太郎さんの言う通りですよ。」
レフが笑顔を向けると、翔太郎は真面目な表情で言った。
「僕が霊能者の霊力を全て集めたら、…『韻を普通の人間に戻したい』んです。」
願いを聞いたレフは、目を丸くして驚いた。しかし変わらない翔太郎の表情を見ると、レフは優しく笑む。
「やっぱり、自分よりも他人の方が大事ですか…。自分が消えてしまってもですか?」
「勿論です。それに韻は他人じゃないです、家族です。」
「わかっていますよ。」
レフはそう言って笑った。それからレフは続ける。
「翔太郎さんの願いはわかりました。…でも、願いを変えたくなったら変えてもいいんですよ。」
しかし翔太郎の表情から、決意は固いように見えた。
「変わりません。」
「そうですか…。」
レフがそう返事をすると、翔太郎はふと思い出した顔で言う。
「ちなみに屍人の制約を破ると霊力を得られるって話ですが、もし一般人が制約を破ったら霊力は一般人の物になるんですか?例えば、韻に僕の正体がバレて僕が消えたら…韻が僕の力を得るんでしょうか?」
「一般人は難しいですが、霊能者の家系である韻さんなら得る可能性が高いですね。そして韻さんが亡くなれば、彼も屍人になるでしょう。」
それを聞くと、翔太郎は顔が真っ青に。
(負の連鎖だ…!絶対にバレないようにしないと…!)
するとそこに、海美がやってきていた。海美は韻のお見舞いなのか、チョコアイスバーを沢山買ったビニール袋を持ってきていた。翔太郎はそれを見ると、困った様子で言う。
「海美、さっき韻にはアイスを差し入れしたばかりなんだ。しかもこんなに大量は…。」
海美は翔太郎を見るなり悪態をついた。
「うっせーな弱っちぃ兄貴!海美は今日で寮に戻るから、いない時用に持っていくんだよ!」
「それなら僕に言ってくれれば…」
と言ったが、海美は翔太郎に言い放つ。
「うっせー!私が持っていくんだ!」
そう言って、翔太郎を横切って病院へ向かってしまった。翔太郎は溜息をついてしまうと、レフは笑顔で言う。
「翔太郎さんのご兄弟は、みんな仲良しでいいですね。」
「嫌味ですか…?」
翔太郎は疲れた様子で言い、レフは悪気がない為に首を傾げていた。翔太郎は海美の扱いに困っているのか、深い溜息。
(海美だけは、扱いにくくて困る…。海美は韻が大好きだからなぁ…。)
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
下っ端宮女のひたむき後宮恋譚 ~前世の夢を追いかけていたらいつのまにか寵愛されていました~
紀本明
キャラ文芸
妃嬪から嫌がらせを受けつつも耐え忍んでいた下っ端宮女の鈴風(りんふぁ)はある日突然前世の記憶を取り戻す。料理人になるのが夢だった彼女は、今世でもその夢を叶えようと決意した矢先、ぼさぼさ頭の宦官・雲嵐(うんらん)と出会い、毎晩夕飯をつくることになる。料理人になるべく奮闘するも、妃嬪からの嫌がらせはひどくなる一方だった。そんなある日、事件が起こり、鈴風は窮地に立たされるが……――?
【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌
双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。
最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる