屍人の陰陽師

うてな

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サトリ編

012 翔太郎の願い

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次の日の朝、病院にて。翔太郎は韻の看病にやってきていた。
しかし韻はあれほどの怪我をしたのにも関わらず、元気そうだった。好物のチョコアイスバーを翔太郎から手渡され、韻は満点の笑顔で言う。

「ラッキー!チョコアイスバー買ってきてくれたの?サンキュー!」

昨日の今日でこの元気である為、翔太郎は思わず苦笑。

「韻は相変わらずの回復力だなぁ。二週間入院のはずなのに。」

「ん?もう大丈夫だよ。」

韻はそう言って、チョコアイスバーを頬張る。アイスで幸せそうな顔の韻。すると韻の肩に乗っていたポチは言った。

〔韻、人間としての感覚が麻痺してないかい?普通の人間なら動けなくなって当然の傷だよそれは。〕

そう言われ、韻は目を丸くして黙り込む。そして心配する翔太郎を見ると、韻は大人しくチョコアイスバーを食べながら言う。

「えっと…安静にしています…。」

「よろしい。」

翔太郎はそう言って笑顔を見せると、席を立って言う。

「じゃあ、僕は買い物があるから。」

「おう。兄貴、アイスありがとー!」

陽気に言う韻に翔太郎は笑顔で手を振り、それから病室を出た。翔太郎が廊下を歩いていると、隣を浮遊するレフは言った。

「韻さん、元気そうでしたね。」

「そうだね。お医者さんも言っていた、回復が早すぎるって。もう殆ど傷が塞がっているんだって。」

「普通ではないのですね。死者は怪我をしませんので、どこから普通じゃないかわからないです。」

レフの質問に、翔太郎は思い悩んだ様子で言う。

「普通じゃないよ。…以前も韻が大怪我した日があってね、その時も凄い回復力だったよ。…いや、あの時よりも…」

「彼は人ではないのですか?」

その言葉に、翔太郎は嫌な予感がするのか表情を歪めた。翔太郎は病院の外まで出ていたが、思わず韻の病室を見上げてしまう。翔太郎は少し黙ると、病院に背を向けて言った。

「人…から離れてしまったのかな…?…妖と関わっているから…。」

そう呟くと、翔太郎は悪い予感がした。

(もしかして韻は、これからもっと人間離れしていくんじゃないか…?普通じゃなくなったら、もう人間の生活ができなくなるんじゃないか…?そんなの…良くない事に決まってる…。)

焦りを覚えた翔太郎はレフの方を見て言う。

「あの、僕の願いを聞いてください。願いは、全ての霊能者の力を集めたら黄泉が叶えてくれるんですよね?」

「お?やっとお決めになったのですね。ええ、翔太郎さんの言う通りですよ。」

レフが笑顔を向けると、翔太郎は真面目な表情で言った。

「僕が霊能者の霊力を全て集めたら、…『韻を普通の人間に戻したい』んです。」

願いを聞いたレフは、目を丸くして驚いた。しかし変わらない翔太郎の表情を見ると、レフは優しく笑む。

「やっぱり、自分よりも他人の方が大事ですか…。自分が消えてしまってもですか?」

「勿論です。それに韻は他人じゃないです、家族です。」

「わかっていますよ。」

レフはそう言って笑った。それからレフは続ける。

「翔太郎さんの願いはわかりました。…でも、願いを変えたくなったら変えてもいいんですよ。」

しかし翔太郎の表情から、決意は固いように見えた。

「変わりません。」

「そうですか…。」

レフがそう返事をすると、翔太郎はふと思い出した顔で言う。

「ちなみに屍人の制約を破ると霊力を得られるって話ですが、もし一般人が制約を破ったら霊力は一般人の物になるんですか?例えば、韻に僕の正体がバレて僕が消えたら…韻が僕の力を得るんでしょうか?」

「一般人は難しいですが、霊能者の家系である韻さんなら得る可能性が高いですね。そして韻さんが亡くなれば、彼も屍人になるでしょう。」

それを聞くと、翔太郎は顔が真っ青に。

(負の連鎖だ…!絶対にバレないようにしないと…!)

するとそこに、海美がやってきていた。海美は韻のお見舞いなのか、チョコアイスバーを沢山買ったビニール袋を持ってきていた。翔太郎はそれを見ると、困った様子で言う。

「海美、さっき韻にはアイスを差し入れしたばかりなんだ。しかもこんなに大量は…。」

海美は翔太郎を見るなり悪態をついた。

「うっせーな弱っちぃ兄貴!海美は今日で寮に戻るから、いない時用に持っていくんだよ!」

「それなら僕に言ってくれれば…」

と言ったが、海美は翔太郎に言い放つ。

「うっせー!私が持っていくんだ!」

そう言って、翔太郎を横切って病院へ向かってしまった。翔太郎は溜息をついてしまうと、レフは笑顔で言う。

「翔太郎さんのご兄弟は、みんな仲良しでいいですね。」

「嫌味ですか…?」

翔太郎は疲れた様子で言い、レフは悪気がない為に首を傾げていた。翔太郎は海美の扱いに困っているのか、深い溜息。

(海美だけは、扱いにくくて困る…。海美は韻が大好きだからなぁ…。)
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