屍人の陰陽師

うてな

文字の大きさ
38 / 69
ヨスガ編

038 共に戦うのなら

しおりを挟む
一方、翔太郎の方では。
翔太郎は大学に来ており、ケンと一緒にいた。ケンは元気のない翔太郎を心配して言う。

「部長、大丈夫ですか?」

「うん。そう言えば琴爪くんは?」

「あぁ、暫く休むそうです。どうやらあの戦いが響いている様で…。」

「そっか…、心配だな。琴爪くんに許可を取って、今日行けたらお見舞い行こうか。」

「おぉ、名案です!」

そこへ、一人の男性がやって来る。

「やあ、神木間。」

「あ、【羽取(ハトリ)】くん。…あれ?」

どうやら二人は知り合いの様だ。しかし翔太郎は羽取という男性を見ると、目を丸くした。羽取は色のついた眼鏡をかけている。

「羽取くん、眼鏡なんてしてたっけ?」

「あぁ、お洒落を最近始めたんだ。」

「そっか。」

翔太郎は納得した。すると羽取は言う。

「俺さ、最近神木間のサークルに興味持ってさ。入ってもいい?」

「え?でも危険だよ?」

「いいのいいの!俺、意外と霊感あるんだ!」

しかし、翔太郎は首を傾げた。

(霊力…は無さそうなんだけどな。)

「う、うん。そこまで言うなら…。」

「やったぜ!」

喜ぶ羽取。ケンは羽取のテンションについていけない様子で、翔太郎に耳打ちする。

「羽取さん、こんな感じの人でしたっけ?前はもっとこう…しっかりした厳格そうな人でしたけど…。」

「確かに。」

翔太郎は羽取を注意深く見ていると、羽取は振り返ってきて首を傾げた。

「どうした?」

「え、いえなんでも。」

「そっか。」

そう笑みを浮かべる羽取の心の中は、こうだった。

(よし、これで潜入は完了。ここには食べるモンも沢山あるし、次こそ楽勝だろ。)

そして翔太郎達の見えない所でニヤリと笑う。羽取の色眼鏡の下には、翡翠色の瞳。

(コイツらも、まさか夢にも思わないだろうな。昨晩の龍が、大学のお友達になっているとか。)

そう。彼は昨晩翔太郎達を襲った龍、ヨスガだったのだ。





その日の講義が終わり、翔太郎とケンは星夜の家を訪ねていた。シャッターは閉まっていたが一階が修理屋なのを見て、二人は感心している。

「修理屋なんだ…!」

「親御さんが営んでいるんでしょうか?それとも星夜さんも直したりするんですかね。」

そして二階の家を尋ねると、星夜が秒で出てきた。見た目は元気そうである。

「出るの早いですね。」

翔太郎が素直な感想を述べると、星夜は二人を家に入れて言った。

「階段を登る音が聞こえたからな。」

「あの、体調の方は…?」

「体調が良ければ大学へ行っている。」

「そうですよね…。」

ケンは俯いてしまう。星夜は二人を部屋へ招き入れると、二人に茶を出してくれた。翔太郎は聞く。

「あの、力を使うと体調が悪くなるんですか?」

「力が失われると体調が優れなくなるのだ。」

「ん…?でしたら安心ですね、少ししたら力も回復するでしょうし。」

翔太郎は笑顔で話したが、星夜は意味深にも黙り込む。その反応に翔太郎は首を傾げると、星夜は言った。

「翔太郎、弟に韻という高校生がいるだろう。」

「韻を知ってるの!?」

思わず翔太郎は声を上げてしまうと、恥ずかしく思って落ち着きを取り戻す。星夜は続けた。

「奴なら貴様の力になれるはずだ。私はもう暫く動けそうにないのだ、身の危険を感じたら弟を頼るといい。」

「そんな事できません!!」

そう言って翔太郎は立ち上がった。翔太郎な真摯な眼差しを見ても、星夜は冷静に言う。

「奴は常に、貴様の役に立ちたがっている。…案ずるな、韻は強い。私が認めているのだ、信じてはくれぬか。」

「でも…!」

「今、昨晩の龍が街に出てきたらどうする。」

「え?」

「私は戦えない。貴様は手も足も出ない、妹も殆ど戦力にならない、イカは論外。」

星夜がそこまで言うと、ケンは少しカチンと来ている表情。頭が赤く変色しているが、翔太郎の前なのでそこは控える。星夜は続けた。

「貴様達が龍に殺されるような事があったら、貴様が嫌でも韻が龍に立ち向かう。どちらにせよ、韻は立ち向かうのだ。なら、協力して共に生きれる選択を選ぶべきだ。」

翔太郎はそう言われると、言葉を詰まらせた。星夜は鼻で笑うと言う。

「ま、昨晩韻がそこにいたのなら、貴様達よりかは働いていた事だろう。守る事しか出来ない翔太郎に比べ、戦う事が出来るからな。」

そう言われると、翔太郎は喉がつっかえる感覚を覚える。そして韻が、以前大怪我をした事を思い出した。

(そうだ韻は…、あの日も一人で果敢に立ち向かって…。あんな大怪我しても、今朝はあんな強気な発言が出来て…。…韻は、強いな……)

翔太郎はそう思っていると、ケンは話がわからず目を丸くしてポカンとしていた。翔太郎は真摯な表情を見せると思う。

(琴爪くんに言われて気づいた…家族を守るって、家族を危険に晒さない事だけなんだろうか?きっと今の状況だと違う…。共に戦って、傍で守る事だって出来るはず。韻を戦いから遠ざける事が出来ないのなら…傍で守るしかない。だって僕には、盾がある…!)

翔太郎の決心の表情を見ると、星夜は無表情ながらも一つ頷いた。そして次に、話が読めないケンが言う。

「お腹空きました、星夜さん。」

「ん、ちょっと待っていろ。卵焼きでも作ってやる。」

「卵焼き…?なぜ?」

ケンは卵焼きでは不満なのか、表情を歪める。星夜は首を傾げた。

「不服か?」

「はい。」

「出てけ。」

星夜に即答されたが、ケンは居座り続けるつもりか一歩も動かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

下っ端宮女のひたむき後宮恋譚 ~前世の夢を追いかけていたらいつのまにか寵愛されていました~

紀本明
キャラ文芸
妃嬪から嫌がらせを受けつつも耐え忍んでいた下っ端宮女の鈴風(りんふぁ)はある日突然前世の記憶を取り戻す。料理人になるのが夢だった彼女は、今世でもその夢を叶えようと決意した矢先、ぼさぼさ頭の宦官・雲嵐(うんらん)と出会い、毎晩夕飯をつくることになる。料理人になるべく奮闘するも、妃嬪からの嫌がらせはひどくなる一方だった。そんなある日、事件が起こり、鈴風は窮地に立たされるが……――?

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

処理中です...