屍人の陰陽師

うてな

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ヨスガ編

037 龍は何者

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次の日、神木間家にて。
翔太郎は昨晩のショックで朝から布団の中でボーッとしていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。部屋の外から、韻の声が聞こえる。

「兄貴ー、平日に俺より起きるの遅いって…一体どうしちまったんだよ。」

それでも返事が無く、韻は扱いに困り頭を痛めた表情。韻の肩に乗っているポチは言った。

〔昨日の事件、相当ショックだったんだね。〕

「目の前で人が死んだんだろ。確かにそんなの見たら、俺だって同じになりそうだけど…。」

翔太郎はボーッとしていたがやがて我に戻り、飛び出す様にベッドから出て部屋の扉を急に開いた。韻は突然の事で驚いていると、翔太郎は真剣な表情で韻に言う。

「韻…!危険な相手と無理して戦っちゃ駄目だからね…!」

韻はそれを聞くと不機嫌そうに眉を釣り上げた。

「んだよ、顔を見せたと思ったら注意喚起か?言っとくけどな、俺は兄貴の四倍は修羅場くぐり抜けてんぞ。」

「お願いだから…!危ない事はやめて…!!」

翔太郎が切な様子で言っても、韻の不機嫌な様子は変わらない。韻は翔太郎から顔を逸らしてしまうと、無愛想にも言った。

「そりゃお互い様だろ。」

その言葉に翔太郎は反応すると、韻はそのままバッグを背負って家を出てしまった。翔太郎はそれを見送ると、落ち込んだ様子を見せる。そこへレフがやってきた。

「やっと部屋から出てきましたね。お加減はいかがですか?」

「…まあ、少し落ち着きました。」

しかし翔太郎は昨晩その事について相当思い悩んだのか、目の下にクマを作るなど疲れた様子でいた。

「にしても不思議ですね、正体不明の生物。一体何者なんでしょう…?」

「わかりません…。あの、レフさん…」

「なんでしょう?」

「僕は、本当に戦う力を持てないんでしょうか?昨晩も、琴爪くんばかりに戦わせて…何も出来なかったんです…。」

そう言われると、レフは困った顔をした。

「霊力が戦う為の力ではないと、翔太郎さんもよくわかっていますでしょう?力にはそれぞれ、得意分野と言いますか…そういうのが決まっているんです。翔太郎さんが妖力や星夜さんと同じ力を手に入れたら話は別ですが、現実的には無理でしょう。」

「なぜですか…?」

「その器をお持ちでないからです。」

翔太郎は溜息を吐いてしまうと、部屋に入って言う。

「変な事を聞いてごめんなさい。…僕にも出来る事がありますよね。もう少し考えてみます。」

それを聞いても、レフは浮かない様子でいた。部屋の扉を見つめながら、レフは翔太郎を案じた表情で思う。

(翔太郎さん…。この方はいつも、自分の力で何とかしようとするのですね…。)





ここはとある高校。
この高校は韻が通っている高校で、韻は友達と談笑をしていた。友達は韻に言う。

「なあなあ韻!俺、今朝すっげぇモン拾ったんだぜ?」

「なになに!?」

韻は興味津津に聞くと、友達はポケットから一枚の鱗を取り出した。その鱗は大きく、手のひらサイズの白い鱗。韻は目を丸くする。

「すっげぇ…!何の生き物?」

「噂によると、昨晩出てきたって言う龍の鱗。」

その言葉に、韻は反応した。韻はその鱗を見ると、肩に乗るポチに視線を送った。するとポチは言う。

〔この鱗から妖の力を感じる。〕

「ちょっと触らせて?」

「料金は千円です。壊したら一万円な。」

「高ぇよ!無駄にハイリスクだし!」

韻がツッコミを入れると、友達は冗談なのか笑った。

「嘘だよ。ま、韻以外ならガチで金取るけど。」

その言葉に一瞬、背筋が凍った韻。それから鱗が韻の手に渡ると、韻は最初に気づく。

「この鱗、冷たいな…。」

「わかるか?常温で置いててもこんな冷たいんだよ!高値で売れっかなー?」

「お前、金ばっかだな。」

韻は呆れてそう言ったが、次に考える仕草。ポチも鱗を触る。

〔感じた事のある力だ。きっと僕達の知り合いにいるね、昨晩暴れた犯人が。〕

韻は眉を潜めた。そして友達に鱗を返す。

「ありがとな!俺ちょっと便所行ってくる。」

「おう。」

そして韻は席を立つと、廊下を出て小声で話した。

「その龍が、昨晩兄貴や海美を襲ったんだろ?俺、信じらんねぇんだけど。」

〔力を感じてみる限り、相手は妖関連であるのは確か。だけど、あの龍は人間に見えていた。妖に人を捕食する性質はないのに、龍は人間を食べたらしいね。そんな事しそうな妖は思いつかないけど…〕

「それをやっちまう男なら、俺知ってる…」

韻はそう言って、睨むような表情で歩いた。どうやら二人は、あの龍を知っている様子。ポチは言う。

〔でも決め付けるのはまだ早い。僕は放課後に【妖世界】へ戻ってみるよ。本人に確かめる。〕

「俺も行く。」

〔いいや、韻はここにいるべきだよ。万一犯人がここにいて、また現れる様なら戦えるのは韻だけだよ。〕

その言葉に韻は言葉を詰まらせると、韻は突然足を止めた。ポチは何事かと正面を見ると、そこには一人の女子高生がいた。
青緑の肩まで伸ばした髪、黒い瞳を持っている。見た目は物静かで清楚な女子高生。周囲の人が寄り付かないのを見る限り、孤高の女子とも見える。ちなみに女子は、スマホをしながら歩いていた。
韻はその女子高生を見ると、急に顔を赤らめて挙動不審になる。

「お、おお、【尾崎(オザキ)まい】!お、おはよ。」

「おはよう、神木間くん。」

マイは落ち着いた様子だった。その瞬間、マイの視線がポチの方へ行く。ポチはそれを見ていて、マイはそのまま横切って立ち去っていった。韻は惚れた様子でマイの横顔に視線が行く。するとポチは言った。

〔コラ韻、また好きな子見ちゃって。〕

「だって今日も可愛いんだもん仕方ねぇだろ…!」

ポチは思わず溜息。

〔忘れた?韻。尾崎マイは妖が見えるんだよ。得体の知れない女なんだから、関わっちゃ駄目だ。〕

「これが恋の壁ってやつか…」

韻は真剣な表情で言うので、ポチは呆れてしまう。ポチは頭を抱えた。

〔この頭お花畑め。〕

しかし次の瞬間、マイのスマホの待受画面が見えた。なんとボクサーパンツ姿のマッチョの待受画面。それを見ているマイは嬉しそうにしており、手をマッチョに添えて撫でていた。韻はその衝撃的な光景を目撃してしまい、思わず呆然とするのであった。
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