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ヨスガ編
052 残されたものは
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魂が一つ残らずいなくなると、龍の身体は優しく光る。するとみるみる小さくなっていき、翔太郎の手のひらにその光は乗った。翔太郎はそれを微笑んで見ていた。
(龍の姿が…変わって…)
そして光が消えると、手の上にいたのは小さなナメクジだった。黄色いナメクジは点とした目を持ち、背に可愛らしい翼を持っている。マスコットの様な、何とも言えない表情をしている。
しかしそのナメクジを見た途端、翔太郎は顔を青ざめさせて硬直した。
(ナメクジ…!?)
どうやら翔太郎は、ナメクジが苦手のようだ。すると韻は言う。
「あ、兄貴は昆虫以外の節足動物とか軟体動物とか苦手なんだった。」
翔太郎は咄嗟にポケットにあった、父が作ったお守りを出した。そしてお守りの中から清めの塩を出すと、そのナメクジにかけてしまう。しかしナメクジは小さな羽を使って飛ぶと、その塩を避けた。翔太郎は腰を抜かして座り込むが、韻がやって来て呆れる。
「お守りの塩をバラまくって、兄貴バチ当たりだな。」
「だだだだってナメクジが手のひらに…!!」
ナメクジが飛んでいるのを見て、韻は笑顔で手を振った。
「よ!要の兄貴。なんでその姿なんだ?人間の姿でも良くね?」
「これが要くんのお兄さん…!?」
翔太郎が戸惑っていると、ナメクジは高い場所に降りた。そして大きく口を開ける。
「~!」
この掠れたような何とも言えない声が、このナメクジの鳴き声の様だ。さっきの龍や狼の悍ましい雄叫びと違い、かなり可愛らしかった。それを呆然と見つめる翔太郎。笑顔で見る韻に、真顔で見ている星夜。ケンはさり気なく近づくと、少し頬をピンクにして呟く。
「か、可愛い…。」
しかしそこで、空かさずポチは言った。
「まあ、僕の妖姿(ヨウシ)の次くらいにね。」
ポチの謎の発言はさておき、こうして事件の幕は閉じた。
それから数時間後、辺りは暗くなっていた。
場面は変わり、住宅街。夜道を買い物袋を持って歩く、一人の女子高生の姿があった。それは韻の同級生である尾崎まいであり、ポチ曰く妖が見える子。マイはアパートまで向かうと、アパートのインターホンを鳴らした。
暫くすると、やさぐれた女性が扉から出てきた。四十代ほどの年齢で、元気のない様子の女性。マイは女性を見ると、優しい笑みを浮かべて言う。
「こんばんわ、お母さん。これ、良かったら貰って。」
買い物袋には、野菜類や魚類や肉類から何から何まで入っていた。それを見た女性、もといマイの母は思わず口を抑えて涙を浮かべる。
「ごめんねマイ…!私が不甲斐ないばかりで…!」
母にそう言われると、マイは首を横に振って眉を困らせた。
「謝らないでお母さん。お母さんは私を育てる為に、お仕事も育児も頑張ってきたじゃない。私、お母さんを誇りに思うよ。」
マイにそう言われ、涙を流し続ける母。やがて涙を拭き、買い物袋を貰うと母は笑みを浮かべた。
「ありがとう、マイ。学校は大丈夫?お化けが見える体質で、クラスの子にからかわれてない?」
「いいえ、見える事は隠してるの。」
「そう…それならいいのよ。お父さんとの暮らしには、もう慣れたかしら。」
「え、ええ…」
マイはそう返事をしたが、なんだか浮かない様子。それを見ると母は眉を困らせ、やがて呟く。
「何かあったら、絶対に戻ってくるのよ。お母さんの家はお父さんの家と違って裕福じゃないけど、マイの事は絶対に守るから。」
母の優しい言葉に思わず気を使ってしまうマイ。
「そんな、大丈夫だよ。お母さんはお義父さんのお世話で手一杯だもの、私がいたら荷物になっちゃうわ。」
「そんな事ない…!」
そう言った母の目は、真剣そのものだった。母はマイの肩を強く掴むと言う。
「帰りたかったら、いつでも帰ってきていいんだよ…!」
マイはそう言われると、目に涙を薄らと浮かべた。そして無理に笑顔を見せて言う。
「ありがとう、お母さん…。」
「さあ、今日は遅いから早くお家に帰りなさい。お父さんが迎えに来てるかも。」
「流石にそこまでしないよ。」
マイは笑っていたが、足音が近づいてくるのを聞いた。その足音を聞くと、マイの母は蒼白してしまう。マイも気づいた顔をすると、ふと真横を確認した。そこには一人の男性が立っている。
赤く短い髪を後ろで束ね、水色の瞳を持っている男性。見た目は若々しく、マイと同い年と言ってもわからないくらいの若い容姿。黄泉やレフに雰囲気がよく似ており、男性は思惑のある笑みを浮かべていた。
「マイ、遅いから迎えに来たよ。…【有咲(アリサ)】も、会えて嬉しい。」
そう言われると母もとい有咲の身体が震え、マイの腕を掴んだ。マイは有咲の方を見ると、有咲は男性を睨んで言う。
「マイに酷い事してないでしょうね…!」
「どうして?僕と君の子に、酷い事する訳ないじゃないか。」
すると有咲はアパートから飛び出し、男性に掴みかかって言い放つ。
「『ケン』の事は殺そうとした癖にッ…!!」
その言葉に、マイは目を丸くした。すると男性はニコリと笑み、有咲の手を優しく握った。
「『アレ』は僕の子供じゃないから。アイツと君の子でしょ。」
有咲は男性を憎悪の目で睨み続けていたが、やがてマイの視線に気づいてそれを抑える。男性は有咲の様子に関わらず、有咲を抱き寄せようとしたが剥がされた。
「触れないで…!」
「また、一緒に暮らせる日を待ってるよ有咲。」
有咲は男性から顔を背けるばかり。男性は微笑んで、マイの方を見て言う。
「帰ろうマイ、晩ご飯が冷めちゃう。」
「あ、はい。お父さん…。」
マイは有咲の様子を気にしながら、アパートを去った。有咲は涙を耐え忍び、悔しそうにしているのだった。
(龍の姿が…変わって…)
そして光が消えると、手の上にいたのは小さなナメクジだった。黄色いナメクジは点とした目を持ち、背に可愛らしい翼を持っている。マスコットの様な、何とも言えない表情をしている。
しかしそのナメクジを見た途端、翔太郎は顔を青ざめさせて硬直した。
(ナメクジ…!?)
どうやら翔太郎は、ナメクジが苦手のようだ。すると韻は言う。
「あ、兄貴は昆虫以外の節足動物とか軟体動物とか苦手なんだった。」
翔太郎は咄嗟にポケットにあった、父が作ったお守りを出した。そしてお守りの中から清めの塩を出すと、そのナメクジにかけてしまう。しかしナメクジは小さな羽を使って飛ぶと、その塩を避けた。翔太郎は腰を抜かして座り込むが、韻がやって来て呆れる。
「お守りの塩をバラまくって、兄貴バチ当たりだな。」
「だだだだってナメクジが手のひらに…!!」
ナメクジが飛んでいるのを見て、韻は笑顔で手を振った。
「よ!要の兄貴。なんでその姿なんだ?人間の姿でも良くね?」
「これが要くんのお兄さん…!?」
翔太郎が戸惑っていると、ナメクジは高い場所に降りた。そして大きく口を開ける。
「~!」
この掠れたような何とも言えない声が、このナメクジの鳴き声の様だ。さっきの龍や狼の悍ましい雄叫びと違い、かなり可愛らしかった。それを呆然と見つめる翔太郎。笑顔で見る韻に、真顔で見ている星夜。ケンはさり気なく近づくと、少し頬をピンクにして呟く。
「か、可愛い…。」
しかしそこで、空かさずポチは言った。
「まあ、僕の妖姿(ヨウシ)の次くらいにね。」
ポチの謎の発言はさておき、こうして事件の幕は閉じた。
それから数時間後、辺りは暗くなっていた。
場面は変わり、住宅街。夜道を買い物袋を持って歩く、一人の女子高生の姿があった。それは韻の同級生である尾崎まいであり、ポチ曰く妖が見える子。マイはアパートまで向かうと、アパートのインターホンを鳴らした。
暫くすると、やさぐれた女性が扉から出てきた。四十代ほどの年齢で、元気のない様子の女性。マイは女性を見ると、優しい笑みを浮かべて言う。
「こんばんわ、お母さん。これ、良かったら貰って。」
買い物袋には、野菜類や魚類や肉類から何から何まで入っていた。それを見た女性、もといマイの母は思わず口を抑えて涙を浮かべる。
「ごめんねマイ…!私が不甲斐ないばかりで…!」
母にそう言われると、マイは首を横に振って眉を困らせた。
「謝らないでお母さん。お母さんは私を育てる為に、お仕事も育児も頑張ってきたじゃない。私、お母さんを誇りに思うよ。」
マイにそう言われ、涙を流し続ける母。やがて涙を拭き、買い物袋を貰うと母は笑みを浮かべた。
「ありがとう、マイ。学校は大丈夫?お化けが見える体質で、クラスの子にからかわれてない?」
「いいえ、見える事は隠してるの。」
「そう…それならいいのよ。お父さんとの暮らしには、もう慣れたかしら。」
「え、ええ…」
マイはそう返事をしたが、なんだか浮かない様子。それを見ると母は眉を困らせ、やがて呟く。
「何かあったら、絶対に戻ってくるのよ。お母さんの家はお父さんの家と違って裕福じゃないけど、マイの事は絶対に守るから。」
母の優しい言葉に思わず気を使ってしまうマイ。
「そんな、大丈夫だよ。お母さんはお義父さんのお世話で手一杯だもの、私がいたら荷物になっちゃうわ。」
「そんな事ない…!」
そう言った母の目は、真剣そのものだった。母はマイの肩を強く掴むと言う。
「帰りたかったら、いつでも帰ってきていいんだよ…!」
マイはそう言われると、目に涙を薄らと浮かべた。そして無理に笑顔を見せて言う。
「ありがとう、お母さん…。」
「さあ、今日は遅いから早くお家に帰りなさい。お父さんが迎えに来てるかも。」
「流石にそこまでしないよ。」
マイは笑っていたが、足音が近づいてくるのを聞いた。その足音を聞くと、マイの母は蒼白してしまう。マイも気づいた顔をすると、ふと真横を確認した。そこには一人の男性が立っている。
赤く短い髪を後ろで束ね、水色の瞳を持っている男性。見た目は若々しく、マイと同い年と言ってもわからないくらいの若い容姿。黄泉やレフに雰囲気がよく似ており、男性は思惑のある笑みを浮かべていた。
「マイ、遅いから迎えに来たよ。…【有咲(アリサ)】も、会えて嬉しい。」
そう言われると母もとい有咲の身体が震え、マイの腕を掴んだ。マイは有咲の方を見ると、有咲は男性を睨んで言う。
「マイに酷い事してないでしょうね…!」
「どうして?僕と君の子に、酷い事する訳ないじゃないか。」
すると有咲はアパートから飛び出し、男性に掴みかかって言い放つ。
「『ケン』の事は殺そうとした癖にッ…!!」
その言葉に、マイは目を丸くした。すると男性はニコリと笑み、有咲の手を優しく握った。
「『アレ』は僕の子供じゃないから。アイツと君の子でしょ。」
有咲は男性を憎悪の目で睨み続けていたが、やがてマイの視線に気づいてそれを抑える。男性は有咲の様子に関わらず、有咲を抱き寄せようとしたが剥がされた。
「触れないで…!」
「また、一緒に暮らせる日を待ってるよ有咲。」
有咲は男性から顔を背けるばかり。男性は微笑んで、マイの方を見て言う。
「帰ろうマイ、晩ご飯が冷めちゃう。」
「あ、はい。お父さん…。」
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