屍人の陰陽師

うてな

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ヨミ編

053 お友達に約束

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次の日の朝、神木間家にて。
家では朝からリビングで、母と父が黄色い声を上げて喜んでいた。

「可愛い~!」

「おいでおいで…」

二人は要の兄…もといナメクジが我が家にやって来て喜んでいる様子。ナメクジはレタスをムシャムシャ食べるのに夢中で、二人にはあまり興味を示していない。

「~!」

ナメクジが声を出すと、二人は歓喜の声。それを近くで見せられる、朝食中の翔太郎と韻。韻は気味悪そうに見ており、翔太郎は苦笑していた。レフもどうやらナメクジに興味がある様で、二人に並んで喜んでいた。すると、韻の肩の上にいるポチは呟く。

〔僕も人間に見える様になったらこのくらい…〕

「何の嫉妬だよそれ。…ご馳走様ー。」

韻は呆れたように言い、朝食を終えてシンクに食器を持っていった。そして近くのソファーに投げ捨てられいたバッグを背負い、翔太郎に言う。

「いってきまーす。」

すると翔太郎だけでなく、全員から言われる。

「「「いってらっしゃーい。」」」

レフも後から気づき、遅れて言った。

「行ってらっしゃいませー!」

(いや、韻には聞こえないんだけどな…)

翔太郎は苦笑しつつも思った。レフは気になる事があるのか翔太郎の隣へやって来る。

「にしても翔太郎さん。なぜ要さんのお兄さんを家に?」

「実は、妖世界への扉が閉じてしまっていて…。返そうにもにも返せないんです。だから暫くは家で面倒を見ようと…。」

困った様子で翔太郎はナメクジを見る。ナメクジは母の肩の上で、満腹にでもなったのか寝転がっていた。翔太郎は苦笑。

(心象世界では『緑色に名乗る名などない』って言われたけど…緑色の頭をした母さんによく懐いているな、このお兄さん…。)





一方、韻の方では。
韻は高校までの通学路を歩きながらもポチに言う。

「にしても要、どうしたんだかなー。こっからじゃどう足掻いても行けねぇし。」

〔要の事だから、ど忘れしてるのかもね。〕

「やめてくれよそれ…、笑えねぇから。」

すると高校近くに、一台の高級車が止まっているのを韻は発見。韻は不思議そうに見ながら言う。

「なんだあの車。たっかそー。」

そして中から、マイが出てきて韻は仰天した。

「尾崎まい!?なんで尾崎まいが高級車から!?」

対しポチは常に冷静であるが、妖の感覚からその驚きの意味を理解しきれていない。

〔韻がまだ中学の時は、駄菓子屋さんの家の子だったみたいだけど。駄菓子屋って高級車を乗れるほど儲かる仕事なの?〕

「な訳あるかよ…!それに駄菓子屋は親戚の家だから…!」

マイの次に、マイの父親である男性が出てくる。男性がマイを抱き寄せると、韻は顔を真っ赤にしてしまう。恥ずかしいような、どこか嫉妬を感じているような表情。ポチはそれに呆れていると、マイは周りの目を気にして男性から離れようとしていた。
それもその筈、ここは学校の前。生徒達の目にすぐ留まってしまう。韻は正義感に燃えた表情をすると言った。

「きっとマイに付き纏ってる男なんだ…!俺が助けねぇと…!」

〔いや、違うでしょ。〕

ポチはそう言ったが、韻を止められなかった。韻は男性とマイを引き剥がすと、マイを庇って男性の方を見た。マイは驚き、男性は真顔になって韻を見る。韻は男性を睨んで言った。

「嫌がってんじゃねぇか。お前、尾崎まいから離れろ!」

「神木間くん…!」

マイが青ざめた様子で言うと、男性は笑顔を見せる。

「君は?マイのなんなの?」

「クラスメイトだよ、なんか文句あっか。」

そう言われると、男性は笑った。韻はそれに眉を潜めてしまうと、男性は言う。

「僕はマイの父親だけど、何か文句ある?」

そう言い返され、韻はポカンとした。

「お…おお、お父様…?」

「うん。【美輝(ミキ)】って言うんだ。」

韻は思わず愕然としてしまったが、やがて頭を下げて謝罪した。

「ご、ごめんなさい!!てっきり悪い人かと…!」

「いいのいいの。ほら、僕とマイって全然似てないでしょ?勘違いしても仕方ない。」

「本当にごめんなさい…!!」

韻はそれでも、頭を下げるのをやめなかった。美輝は笑っていると、マイを見て言う。

「お友達?」

「え…ええ。困った時とか、いつも親切にして下さるの。」

マイがどこか安心した様子で言うと、美輝は韻の顔を無理に上げた。韻は美輝の顔を見ると、美輝は微笑んで言う。

「これからもマイと仲良くして欲しい。」

そう言われると、韻はなんだか嬉しそう。頬をピンクにして喜ぶと、韻は満天の笑顔で頷いた。

「はい!」

「にしても、足りないな。」

美輝の言葉に、韻は首を傾げる。

「え?」

「いやいや、気にしないで。マイのお友達ならさ、もっとマイの事を知って欲しいなって思ってね。」

美輝にそう言われると、韻はなんだか照れた様子に。ポチは呆れた表情でいると、美輝は韻に言う。

「ねえねえ、今から僕と付き合ってくんないかな?」

突然の誘いに韻は目を丸くした。

「え?でも学校行かねぇと。今日はサッカーの試合もあるし!」

「そうかい。じゃあ今度の休日とかどうかな?マイも入れて三人でさ。学校でのマイの事とか、色々聞きたいんだ。」

美輝が笑顔で言うと、マイは困った顔。

「やめてください…恥ずかしい。」

「いいじゃんいいじゃん、有咲にも報告しておきたいし。」

余所余所しく困るマイとお構いなしな美輝に、韻はどこか違和感を感じた。マイは黙り込んでしまうと、韻は美輝に言う。

「わかりました、日曜なら空いてますよ。」

「本当?じゃあお昼までに家へ迎えに行くよ。」

「え?俺の家知ってるんですか?」

「僕の父がね、昔世話になったからね。お寺の神木間くんだろう。」

「おぉ…!」

思わず感心する韻。
そのまま美輝は乗車すると、窓を開けて韻とマイに笑顔で手を振った。

「じゃ、僕はこれで。あ、マイと遊ぶ事は学校の子には秘密にしてね。」

「はい!」

「行ってらっしゃいお父さん…」

マイが控えめに言うと、韻は笑顔で言う。

「また今度ー!」

実の親子であるマイよりも、韻の方が美輝と打ち解けている様子。車が去っていくと、マイは不安を覚えているのか俯いた。それを韻が見ると、少し照れた様子で言う。

「ご、ごめんな。勝手に約束取り付けて。もし嫌だったら、断るけど…。」

「ううん、いいの。むしろ神木間くんが休日いるなら安心だわ。」

「え?」

韻はその言葉に頬を赤らめたが、マイは俯いた様子のまま。その異変に韻は首を傾げると、一つ心当たりでもあるのか言った。

「そう言えば尾崎まいさ、昔はかーちゃんと一緒にいたよな。とーちゃんいないって言ってたけど。」

〔韻のお馬鹿、そういうのは聞くもんじゃないよ。〕

ポチがそう注意すると、マイは気にしないで欲しいのか首を横に振った。思わず二人がマイの方を見ると、マイは言う。

「本当のお父さんなのよ。でも、ちょっと苦手というか…。あまり長い時間一緒にいたくないの。」

マイは実父に心を開けていない様で、それを悩みとしている様だった。しかし韻はそんな複雑な家庭に想像力が働かないのか、特に重く感じる事も無く単純な回答を思いついた。

「そっか。わかった!だったら日曜、絶対行くぜ。日曜だけとは言わず、いつでも歓迎!」

そう言って韻が笑顔を見せると、マイは表情が釣られることもなく小さく頷いた。

「本当にいつもありがとう、神木間くん。周りにからかわれた時だって、神木間くんはいつも庇ってくれて…。」

「いいんだいいんだ。あ、ほら早く学校へ行かないと遅刻だぜ!」

「ええ。」

そして二人は学校へ登校するのであった。
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