屍人の陰陽師

うてな

文字の大きさ
54 / 69
ヨミ編

054 超えたいのに

しおりを挟む
場面は変わって、放課後の時間帯。
とある中高女子学園。そこに存在する女子寮から、海美が一人で出てきた。海美は女子寮のある偏差値の高い私立の女学園に通っているようだ。
海美は深い溜息を吐く。

「あー、まさか配管ぶっ壊れて水使えねーとか。実家帰るしかないだろ。」

海美はそう言ったが、SNSの記事を見漁る。どこもかしこも歪などの事件。海美は非常に不快なのか難しい顔を見せた。

(あの弱兄貴が解決したって話じゃねぇか…!海美を差し置いてだ!!)

そう海美は思ったが、急に気力を失ったように暗くなる。

(だけど、私が弱いのも事実…。あの龍相手に、手も足も出なかった。それは私が、式神しか使えないから…。)

海美は式神召喚用の紙を出すと、侘しい様子になった。

(式神の中じゃトップクラスの力を誇る十二神将を召喚できても、十二神将は時間によって出てこれる奴が変わっちまう。もっと霊力があれば、十二神将だって本当は自由な時間に出せるらしいが…海美じゃ無理だった。私はにーちゃん以上に強くなりてぇのに、こんなんじゃダメだ。)

海美はトホホとした様子で歩いていると、丁度バイクを乗り回して休憩している星夜の前を横切る。海美は気付かなかったのだが、星夜が気づいて言った。

「ん、あれはちんちくりん。」

星夜の一言に、海美は食いつくように怒りの形相を見せて言う。

「誰がちんちくりんじゃボケェ…!!」

そう暴言を吐かれても、一切表情を変えずに星夜は言った。

「後々聞いたが、貴様は翔太郎の妹君だったのだな。実家にでも帰るのか。」

「そーだよ!だってにーちゃんが待ってるからなぁ!」

喧嘩腰の海美に対し、やっと星夜は眉を潜める。

「相変わらずブラコンなのだな。いや待て…マザコンと呼ばれた私が言っていい言葉ではないか。」

星夜はどこか反省モード。そんな事はお構いなしに、海美は笑いをこらえられない様子で言う。

「ププッ、だっせ!マザコンかよ!」

「ブラコンも然程変わらないのではないか?貴様ほどこじらせていない自信はある。」

「うっぜー!!」

海美はそこまで言うと、ある事に気づく。海美は素早く星夜の近くまで来ると言った。

「そう言えばよ、最近また龍を倒したって聞いたが。あれはマジで弱兄貴がやったの?」

「ああ。倒したと言うより、怨念を浄化したと言った方が正しいか。龍は生きておるぞ、今は小さくなって翔太郎の家のペットに成り下がっている。」

それを聞くと、海美は悔しそうな表情を浮かべる。

「くっそ…!あんな弱兄貴でもどうにかできちまうのかよ…!!私は何も出来てないってのに…!」

「なぜ悔しがる。第一翔太郎と貴様では、霊力の差も歴然と聞くが。」

「それが嫌なんだよ!海美にも力が欲しいんだ!!」

それを聞いた星夜は、無表情だが心は呆れているのか呟いた。

「我儘なちんちくりんだな。」

「ちんちくりん言うなッ!この怪力チビゴリラ!」

海美に言われると、星夜は今度は表情に出して呆れて溜息を吐いた。すると海美は怒りを鎮めて真摯な様子を見せる。

「お前はあの龍を一発で倒した…。海美も…あのくらい強いの欲しい!」

「無理だ。」

星夜に即答され、海美は怒り心頭。すると海美は泣きそうな顔(結構だらしない)になり、ポケットから一つの石を取り出す。
忘れられているかと思うので説明しよう。
それは手のひらサイズの欠けた石。石は宝石の様に紫色に光り輝き、もう半片が有りそうな形をしている。海美曰くこの石があると持っているだけで霊力が増幅する代物。ちなみに星夜も同じ欠片を持っており、星夜はそれを見て目を剥いた。海美はブツブツと言う。

「この石に頼って十二神将が召喚出来るようになっても…私は無力なまま…。」

「おい貴様。」

星夜はそう言うと、海美の腕を掴んだ。

「は?」

海美が目を丸くして言うと、星夜は海美をバイクに乗せた。そして星夜自身はバイクに乗る事無く、海美を乗せたバイクを人力で押しながら言う。

「ちょっと私の家へ来い。」

急なお誘いに海美は怒りを通り越して嫌悪を示した。

「ハァ!?不同意性交罪で訴えんぞ!!」

「いいから来い、大事な話だ。」

そう言われ、海美は抵抗をするのをやめて黙り込む。

(何されっかわかんないけど、あの弱兄貴の友達だし変な事はしないだろ。それにコイツはあの龍を一発で倒したヤツだし、序でに強くなれる秘訣とか聞けるかも。)

こうして、海美は星夜に半無理矢理に家へ連れ込まれたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

下っ端宮女のひたむき後宮恋譚 ~前世の夢を追いかけていたらいつのまにか寵愛されていました~

紀本明
キャラ文芸
妃嬪から嫌がらせを受けつつも耐え忍んでいた下っ端宮女の鈴風(りんふぁ)はある日突然前世の記憶を取り戻す。料理人になるのが夢だった彼女は、今世でもその夢を叶えようと決意した矢先、ぼさぼさ頭の宦官・雲嵐(うんらん)と出会い、毎晩夕飯をつくることになる。料理人になるべく奮闘するも、妃嬪からの嫌がらせはひどくなる一方だった。そんなある日、事件が起こり、鈴風は窮地に立たされるが……――?

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

処理中です...