屍人の陰陽師

うてな

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ヨミ編

055 お前の力が欲しい

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海美は家へ連れられると、自室でまずはお茶を出される。星夜の部屋は整理はされているが物が多く、所々に工具も垣間見れた。更にお茶を出されたテーブルには多くの傷があり、普段からここで何らかの作業をしている事がわかる。
海美は怪しく感じるのかお茶の匂いを嗅ぐと、最初に言った。

「睡眠薬入ってねぇだろうな。」

「入れて欲しいのか?」

星夜の冷静なその問いに、海美は思い切り首を横に振る。すると星夜は壁際にある勉強机の棚を探り、海美の前にあの石の半片を出した。海美はそれを見ると目を剥き、思わず立ち上がる。

「それ!海美が持ってるのとおんなじ!」

「貴様が持っているのと合わせたら、多分完成だろう。ほら、出してみろ。」

海美は石を出すと、その二つを合わせてみた。すると石は光り輝き、割れていたのに一つに戻る。光が消えると、海美は歓喜の声を上げた。

「これなら…!十二神将以上の力を扱えるかも…!」

そう言って海美は石を取ろうと手を出すが、それを星夜に阻止される。腕を掴まれ、海美はムッとした。

「なんだよ!私は強くなる為にこれが必要なんだよ!」

「私は大切な人を取り戻す為に、この石が必要なのだ。」

「大切な人?こんな石で、どうやって取り返すんだよ。」

「我々の命は力であり、この石はその力を固めた結晶なのだ。力が無ければ彼女は生命を取り戻せない、だから大事な石なのだ。」

「ふーん、それで。」

海美はその意味を理解しきれていないのか素っ気無く答えると、星夜は特段反応も見せずに目を閉じる。

「しかしなぜだ…。石が完成すれば戻る生命が、全く声が聞こえん…。まるで、力だけの抜け殻の様だ…。」

「だったら海美が使っていいじゃん!その女、死んだんだよ。」

海美は軽く言ったが、その言葉で落ち着いていた星夜の様子が一変した。眉を潜め、声を張り上げて言う。

「死んではおらん!」

その声に、海美は驚いて肩を跳ね上がらせた。しかしすぐに星夜は落ち着きを取り戻し、咳払いをして言う。

「すまん、あまり子供に大声を聞かせてはならんな。」

「おい海美を子供扱いしてんのかよ。」

海美は驚いた表情をすぐに怒りに変えたが、星夜は続いて言った。

「しかし声が聞こえぬのならしょうがない、他に手がかりを捜すとするか。…石もそうだな…失くさぬのなら、貴様が持っていても良い。」

「いいのか!?」

海美は目を光らせていたが、星夜は追い打ちを掛けるように言う。

「だが、いづれその石は貴様の手から離れる。その時は、お前は弱い陰陽師へと逆戻りだ。力を借りるというのは、そういう事だ。」

その言葉に海美は心臓が跳ね上がり、思わず呆然とする。そして少しの間を空けた後、海美は拳を握った。

「じゃあどうすれば私は強くなれんだよ…!」

「基礎霊力を上げるしか方法がない。が、霊力は戦う為の力ではないからな。軽く例を上げれば他者の心に干渉したり、守護なら出来る様になるだろう。」

「じゃあお前みたいな力を使えるようになりたい!」

海美は真剣な様子で言うので、星夜は海美を見て沈黙。それから少し考えた様子を見せてから、口を開いた。

「貴様は妖力を知っているか?」

「なにそれ。」

「この世には霊力や私の力だけではない。妖力も存在するのだ。」

「ほほぅ。」

「強い霊力を持つ人間が妖力を持つと、妖力が上手く身体に定着できず命を落とすと言われている。強い霊力とは、貴様の様に霊能力が使えるほどの人間の事を言う。妖力を持って命を落とすと言うのなら、私の力を得ても同じ事だろう。」

その言葉に海美は悔しそうに歯を食いしばったが、星夜は更に続ける。

「だが、ただの人間が私達の力を得たケースは幾つかある。人間は誰しも、少なからず霊力は持っていると聞いた。…だから霊能者の貴様が力を得て、死ぬか死なぬかはわからん。」

「じゃあ実験してもいいから海美にその力をくれよ!」

海美がそう真剣に答えると、星夜は嫌そうな顔。

「無理だ、他を当たれ。」

「他って誰だよ!紹介しろよ!!」

星夜は海美から視線を逸らしながら考えたが、溜息を吐く。

「…思いつかん。」

「だったらお前でいいよ!!」

「私は無理だ。」

星夜はキッパリ断るので、海美は星夜の胸ぐらを掴んだ。しかし海美の力では星夜はビクともしない。更に海美はだらしなく涙を流した。海美は星夜の服を引っ張るようにして、声を枯らして言う。

「協力しろよォ!!石はお前に返すし、海美もなんだってする!海美は強くなんねぇと…!なりてぇんだよぉ!海美だけ独りぼっちは嫌なんだよぉ!!」

そう言われ、星夜は意外そうな顔を見せた。すぐに迷った表情を見せると、やがて海美の手を無理矢理下ろして言った。

「…何が独りぼっちだ。中学の友達がいるだろう。」

「違う…違う…!海美は友達が欲しいんじゃねんだ…!!」

泣きじゃくる海美を見ると、星夜は呆れた様子に。

「私達の力を手に入れた人間は皆、決まってその力を持つ者と常に行動を共にしていた。そうすると力が人間の身体にも定着するそうだ。だが貴様は私と共にいたくはないだろう。」

「やる。」

即答する海美に、星夜は面倒なのか嫌悪の表情を浮かべる。海美は真剣な眼差しで、星夜に言った。

「私、今日からここに住む。」

「実家へ帰れ。」

「どうせお前しか住んでないだろココ!だだっ広い割に!」

「それは以前までは、居候が二人いたからであってだな。」

「だったら海美もここで暮らす!!いいだろそれで!文句あっか!」

海美にそう言われると、星夜は黙り込む。それから星夜は海美を真っ直ぐ見るので、海美は睨んで返した。星夜は言う。

「仮に私の力を手に入れたとなれば、貴様はもう人間ではなくなる。身体は衰えを知らなくなり、永遠の生命を弄ぶ事になる。家族が寿命で死んでも、友が死んでも、貴様は生き続けるぞ。」

そう言われると海美は笑った。海美は何もわかっていないのか、胸を強く叩いて言う。

「最高じゃねぇかよ!」

「後悔しないか?」

「なんですんだよ!」

そう言われると、星夜は黙り込んでしまった。やがて溜息を吐くと、海美が一口も手をつけていないお茶を自分で飲んでしまう。海美が「あっ!」と言うと、星夜は言った。

「よかろう。但し家事は分担だ。」

「は?海美できねぇよ!」

「住むと言うからには、してもらうぞ。出来ないのなら実家へ帰れ。」

そう言われて海美は言い返せず、脱力した。

「わかったよ。」

「なら決まりだ。」

「でもちょっと待て!!」

海美に止められ、星夜は海美の方を見た。すると海美は恥ずかしいのか顔を赤らめ、そして言う。

「み、みんなにはナイショだ!男の家に住んでるってなったら…海美ヤバイ…!弱兄貴やかーちゃん、そういう事になると怖ぇんだよ…!」

「私にとっても良くない、これはただの誘拐だからな。」

「だったらナイショで決定だな!!」
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