屍人の陰陽師

うてな

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ヨミ編

057 放課後の訪問者

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数日後の事。
韻は放課後に学校の校庭にてサッカーの練習をしていた。韻はサッカー部一年のリーダー的存在なのか、一年の練習ではよく声掛けをする。真面目過ぎる事もなく楽しげな韻は、部員にとっては愉快で頼りになる存在だろう。
そこへやって来たのは、翔太郎とケン。翔太郎は校庭で韻を見つけると、笑顔で言う。

「見てケンくん。弟の韻だよ。」

「ええわかりますよ、この前お会いしましたから…!」

ケンは翔太郎やその身内の話になると、なぜか目を光らせる。しかしすぐに切り替えると、ケンは目を丸くして言った。

「にしても部長。せっかくのサークル活動なのに、星夜さん来ませんでしたね。スマホを見て血相を変えて素早く帰っちゃいましたけど。」

「うーん、大きな荷物が家に届いて…整理するのに忙しいんだとか。」

「大きな荷物…ですか。忙しくなっちゃうほど大きな荷物って、一体なんなんでしょうね?」

「さあ?」





一方、星夜の方では。
星夜は焦った様子で家に続く階段を駆け上っていた。そして家の扉を開くと、走ってリビングに顔を出す。

「おい、ちんちくりん!」

リビングに広がる光景。
それは換気せずに白い煙にまみれた空間、焦げ過ぎて何の食べ物かわからないものが食卓に並んでいた。キッチンには海美がおり、楽しそうに料理をしていた。カレーの様な色をした汁物が入った鍋を、グルグルとかき混ぜて陽気にも笑っている。星夜はそれに頭を痛めた様子を見せると、海美は星夜に気づいた。

「おう帰ってきたか星夜!今日はせっかくだから海美が作ってやったぞ!」

そう言ったが、星夜は不機嫌そうな表情を海美に見せている。海美はその表情に若干の恐怖を感じると、星夜は海美に近づいた。それはアサシンの如く素早く且つ静かで、海美は星夜の行動で更に恐怖を抱く。そして星夜は怒り任せに海美の頭を鷲掴みにするので、辺りに海美の悲鳴が響き渡った。





場面は戻って、翔太郎とケン。
二人は校庭の隅で体育座りをしながら、韻の活躍を眺めていた。ケンは言う。

「にしても、最近ここに霊が沢山集まってきているって話は本当ですか?」

「うん。今も校庭や学校から沢山顔を出しているんだけど…。うーん…でも悪霊になる気配は無いね。」

「この土地で多くの人が亡くなった…という事でしょうか?部長言ってましたよね、幽霊の殆どが地縛霊なんだと。」

「ああ。でもね、例外があるんだよ。」

「霊力を強く持つ霊は、自由に移動出来るんですよね。俺、それも知ってます。」

そう言ってケンは、自分の持つメモを見せてドヤ顔。それに翔太郎は微笑んで頷きながら、話を続けた。

「そうそう。だけどもう一つ、例外があるんだ。」

「ほうほう…それは?」

「これはある程度霊力を持っている霊、且つ自由に動けない霊に限る話なんだけど…。そういった霊は、強い霊力を持つ人間に引き寄せられるんだ。」

「人間…?つまり霊同士には引き寄せられないんですね。つまり、部長の周りにも常に霊が…」

ケンはそう言ったが、翔太郎は目を丸くした。翔太郎の周りにも幽霊が飛び回っている。

(半分幽霊みたいなものだけど、それでも僕の周りはいつも幽霊だらけだな。…ユリアさんもそうだったっけ。逆に、サトリさんやヨスガくんの周りにはいなかったけれど。)

すると翔太郎は、学校を見てある事に気づく。

「あれ?幽霊達が一つの教室に集まっているみたいだ。」

「そうなのですか?どこですか?」

「二階の右から三番目…あれ?誰かがベランダから顔を出してるみたい。幽霊が多すぎて顔は見えないけど…。」

「二階の右から三番…」

ケンはそう言って該当の場所を見たが、見た瞬間に目を剥いた。翔太郎はケンの反応を見て首を傾げた。ケンは恐怖の対象でも見たように愕然として、言葉を失っている様子。
翔太郎は何があったのかとベランダを見ていると、やがて幽霊の隙間から相手の顔を見ることができた。

それはマイの父である美輝で、幽霊は美輝を中心に浮遊していたのだ。美輝は韻がサッカーを頑張っている所を眺めていたが、やがて傍にいる幽霊達に言う。

「どうだい?彼がマイを大事にしてくれてるお友達。彼がマイと同じ世界が見えるようになったらどう思う…?最高に、良き友になってくれると思うんだ。」

その声は聞こえないが、翔太郎は美輝を見て思う事があった。

(なんか、レフさんに似てる様な…。)

「ケンくん、あの人がどうかした?」

翔太郎はケンの様子がおかしい事を気にして言うと、ケンは俯いて身体を震わせた。翔太郎は只事ではないと察すると、ケンが言う。

「あ、あの人は…俺の義理のお義兄さんなんです…。」

「え?そうなんだ。」

「でも、俺は養子だったもので…彼は俺の事をあまりよく思ってなくて…俺自身も彼を避けてるんです。」

それを聞いた翔太郎は、驚いた様子になった。

「ケンくんが養子だなんて…初耳だった。」

「実は俺、本当の両親に捨てられたみたいで…。両親の事も少ししか覚えてなくて。」

「そうだったんだ。」

(それにしても、ケンくんのお義兄さんを見る目はまるで…恐怖の対象。あまり良く思っていない、という言葉だけで済まされる関係ではなさそう…。)

ケンは震えを抑えながら、美輝を見上げる。すると美輝はケンに気づいたようで、こちらを見てきた。しかし美輝がケンに見せる表情は、軽蔑そのもの。その目を見ると、ケンは頭痛を感じて蹲ってしまう。

「ぐっ…!」

「ケンくん!?」

翔太郎はケンを心配すると、ケンは冷や汗を流した。息を荒くしながら、ケンの脳裏に記憶が過ぎった。
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