屍人の陰陽師

うてな

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ヨミ編

058 まるで陰と陽

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ケンの脳裏に記憶が過ぎった。



――小さい頃のケンは、美輝と手を繋いでいた。二人は道路で信号待ちをしている。ケンは無邪気に笑いながらも言う。

「美輝さん、俺公園で遊びたい!」

「うん、後でお菓子も買ってあげる。」

「わーい!やったー!」

「でもまずは…」

美輝はそう言って、ケンと繋いでいた手を離した。ケンは思わず美輝を見上げたが、その瞬間に美輝はケンを道路へと突き飛ばした。
目の前に走ってくる軽トラック。
ケンは恐怖を感じ、そして美輝の愉快そうに笑う顔も見えていた。そして次の瞬間、ケンの身体は宙に浮いた。――



ケンは汗だくになりながらも、過呼吸になり息を整えていた。翔太郎はそんなケンの背をひたすら摩っている。

「ケンくん!しっかりして!!」

その声に韻も気づいたのか、部員達と共にケンを囲った。

「お、おい兄貴…!兄貴の友達、大丈夫かよ…!」

動揺する韻に対し、翔太郎は落ち着いた様子で韻に言う。

「静かに韻。こういう時は、あまり騒がない方がいいんだ。」

「お、おう…」

韻はそう言うと、部員達をその場から立ち去らせた。韻も心配そうにそれを見ていたが、やがてその場から立ち去る。ケンの息が整ってくると、翔太郎は優しく言った。

「もう大丈夫。お義兄さんは帰ったよ。」

「うっ…うぅ……」

ケンはそう唸ってから一度息を吐くと、それから浮かんできていた涙を拭いて言う。

「す、すいません部長…。本当に、あの人とはいい思い出が一つもなくて…」

「無理に思い出さなくていいよ。」

「はい…」

鼻声になりながらも、ケンはそう答えた。すると翔太郎は、美輝のいなくなったベランダを見上げる。

(あの人…きっと霊能者だ。どれほどのものかは、遠くてわからなかったけれど…。)

その時だ。
学校の校庭で悲鳴が聞こえた。二人は思わずそちらの方を見ると、そこには歪がいた。歪は妖力で周囲に小さな爆発を起こしており、人的被害も少なからず出ている。翔太郎は急な出来事で驚いた。

「歪!?」

「なぜこんな所で…」

ケンが呟き、翔太郎は思わず歪の方へ走った。翔太郎はケンに言う。

「ケンくんはここで待っていて!危険だから!」

そう言われ、ケンは弱った様子で頷いた。翔太郎の後ろ姿と歪を眺めながら、ケンは躊躇った様子で思う。

(堂々と、妖の姿になって助太刀したいけれど…)

そんなケンの脳裏には、再び美輝がいた。

『化物。』

そう美輝に呼ばれたのを思い出し、ケンは拳を握って耐える。

(俺が本当は化物だって部長が知ったら…!きっと嫌われる…!)

ケンはそんな不安から、一歩前に踏み出せずにいた。

一方翔太郎がグランドの真ん中に来る頃には、韻が歪の相手をしていた。電気技で相手を翻弄し、電気の球のシュートで相手にダメージを与える。相手がボールで怯んだのを見ると、韻は片腕を天にピシッと上げ、もう片手を天に掲げた方の肩に添えた。
すると韻は電気を纏い、空から雷が落ちてきた。雷は韻に一直線に当たると、雷は空と韻の腕を繋ぐ。やがて雷はノコギリの様に鋭い形を帯びると、韻は空から伸びるノコギリを相手に振り下ろした。

「天に集いし暉の一朶よ!大地を引き切れェ!」

韻がそう言って振り下ろすと、歪は真っ二つに割れた。それをショッキングな様子で翔太郎が見ていると、韻は歪を指差して言う。

「例え歪だろうが幽霊混ざってようが関係ねぇ…!人間を傷つける奴なんざ、俺が成敗してくれる!」

韻の活躍で歪の攻撃が消えたと知ると、周囲の部員や生徒達は大歓喜。

「流石は神木間寺の陰陽師!」

「近くでお化け退治が見れるとか最高かよ…!」

どうやら生徒達は百妖災の経験者なのか、百妖災の勇者と言える韻の活躍に興奮していた。しかし次の瞬間、韻は真っ二つに割れた歪を見て吐き気を催している。翔太郎には、韻が眩しく見えた。

(本当に韻は眩しいな、陰でヒッソリとしてる僕とは大違い…。でもまあ…真っ二つになった歪が普通の人に見えないのは幸いと言える…。)

するとポチは呆れた様子で言った。

〔韻、いくら人間が怪我したからってやり過ぎだよ。まあ十回殺しても足りないくらいだけど。〕

(いやポチくんの方が物騒!怪我人は出たけど、誰も亡くなってないし…!)

翔太郎は心の中でツッコミを入れた。韻は頭を痛めた様子を見せると、ポチに言う。

「ポチ、そろそろお前の妖嫌い直せよ。それに妖なら真っ二つになってもいずれ治んだろ。後は兄貴に解いてもらえばそれで…」

そう言って韻は翔太郎を見ると、翔太郎はビクッと肩を跳ね上がらせた。そして周囲からの視線が、翔太郎に集まる。翔太郎は見られるのが苦手なのか、顔を真っ赤にして顔を庇う。

「と…解きにくい…!」

「はぁ!?」

韻はそれに首を傾げたが、ポチは言った。

〔翔太郎さんは目立ちたくないんだよ。だから優しく庇ってあげなって。肩を貸しながら。さあ一緒に行くんだよ韻。〕

すると空かさず韻はポチに言う。

「ポチは逆に、人間に過保護過ぎるのを直せ。」

韻はポチに呆れている様子だった。翔太郎は行きづらそうにしていたが、その後ポチの台本通りに韻が肩を貸してどうにか歪を解いたとさ。
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