相剋のドゥエット

うてな

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04 大家族

041 ガデランデガ。

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悪魔の姿へと変化したモルビス。
モルビスは自分の姿を見ると言う。

「これが…悪魔の姿…」

すると、ワレリーが言った。

「あなたの力を引き出しました。
その力で守りたいものを守ってみせなさい、モルビス。そうすれば、今回の事は全て水に流しましょう。」

それを聞くと、モルビスはやる気を出した。

「本当ですか!?牧師様!」

「ええ。…皆殺しにしなさい。」

モルビスは一瞬冷や汗をみせたが、すぐに切り替える。
モルビスは張り切ると、ナークは鼻で笑う。

「例え図体が大きくなっても、弱い者は弱いままなのだ。」

モルビスはナークの言葉を気にも留めず、ナークに襲いかかった。
振りかぶる拳を、ナークは片腕で止める。
止めた衝撃で、一陣の風が吹いた。
モルビスは眉を潜めると、ナークは言う。

「弱すぎる。」

その時だ、モルビスはニヤリと笑った。
ナークはその様子を見ていると、ナークの周囲に細かい砂、石、岩が浮遊して回る。
ナークは警戒をしていると、モルビスは手を開いて唱える。

「【ガグドビリン】!!」

その掛け声と共に、ナークは岩や石に集中し包まれる。
岩や石がひしめき合い、まるで一つの岩の様になった。

その瞬間、モルビスは開いた手を握り締める。
それと同時に、岩は押し潰れるようにして壊れた。
ナークはダメージを多少受けている様で、モルビスを睨んだ。

「小癪な…」

すると、モルビスは言う。

「フン、殴って効かなきゃ圧力かけるまでだ!」

「だが次は同じ様にはいかないぞ。」

ナークは余裕なのかそう言うと、モルビスも余裕なのか笑顔だった。
ナークは余裕なモルビスを見ると不機嫌なのか、眉を潜める。
モルビスは言った。

「魔力階級の低い俺じゃ、いつもの姿じゃ魔術もあんまり使えないけど。今なら、とっておきの使えるぞ?」

モルビスが強気に出ると、ナークは鼻で笑った。

「とっておき?今さっきの魔術でもまだまだなのに、とっておきか。面白い冗談だ。」

「俺の力、見てろ…」

モルビスはそう呟くと、両手の拳を握って思い切り踏ん張る。
それから地面に両手をつけ、唱えた。

「【グデランデガ】ッ…!」

すると地響きが聞こえる。
ナークは地面に異変を感じていると、モルビスは踏ん張ったまま大声を上げた。

「はあああっ!!」

その瞬間、地面が二つに割れる。
揺れながら地割れが発生した為か、ナークはいとも簡単に足を踏み外した。

「うわああああっ!!」

ついでに近くにあるギルドも地割れの影響を受け、地割れに吸い込まれていた。
仲間が地割れに吸い込まれる中、ワレリーはフューレンを救出。
キーラとアンゲリーナは既に外に出ていた。
ちなみにフロルとボリス、フロル父は…勿論逃げきれている。
むしろ、この三人が逃げ遅れる方が不思議だろう。

ギルドの者は助かろうと階段を上り続け、窓から飛び出してそのまま地割れに落ちたり助かったり。
モルビスは切なそうにギルドが沈むのを見つめていたが、やがて俯いてしまう。

フューレンはその地割れを眺めながらも感嘆。

「おお…こりゃ凄いな。あのモルビスができる魔術とは思えない。」

「私のヘグリスなので当然ですよ。」

ワレリーの言葉は無視で、フューレンはさっきワレリーが切った腕を見る。
ワレリーの腕は不思議な事に、傷が塞がっていた。

「傷…塞がってるな。」

「ええ。」

ワレリーは変に茶化す事もなく、笑う事もなく、ただ返事をした。
フューレンも特に違和感を覚える事なく、モルビスの活躍を見る。
そして言った。

「これ、モルビスの仲間も落ちてるよな。」

「皆殺しにしろ、と私が命令しましたからね。」

「皆殺しにしなくたっていいだろ。」

フューレンが冷静に言うと、ワレリーは鼻で笑う。

「悪魔は罪を重ねなければ生きていけません。モルビスも、そういう悪魔の一人なのです。
モルビスが生きる為には、力を得るには、多くの犠牲が必要なのですよ。
…これが、悪魔の宿命なのです。」

ワレリーは持っていた手榴弾の引き金を引くと、地割れに向かって投げ入れた。
手榴弾は爆発し、地割れの影響と共に城を破壊していく。
フューレンは悔しそうに拳を握ると、ワレリーは言った。

「逃げたい者は全員外へ逃げました。そんなに多くは残っていません。
ここで殺さずとも、いずれ傭兵一家に殺されていた事でしょう。」

すると地は一瞬にして閉じ、地割れに落ちた者は全員押しつぶされた。
閉じる瞬間微かに、大勢の叫び声が地割れに響く。

事が終わると、モルビスは自ら姿を元に戻し、倒れたキリエルの元に向かった。
フューレンは地から目を逸らし、キリエルの元に行って声をかける。

「大丈夫かキリエル!」

しかし、キリエルの返事はない。

「嘘だろ…」

モルビスが言うが、フューレンは溜息をついて言った。

「息はちゃんとしてる。セイレーンで傷を癒せばすぐ起きるだろ。」

そう言ってセイレーンを召喚するフューレン。
少し遠くでフロル一家は集いながらも、ジェミヤンが発言。

「お礼しないと。」

ジェミヤンはモルビスの元へ向かおうとするが、それをフロル父が止めた。

「戦勝を得たのは彼等だ。我々は逸早く、ここを立ち去る。我等の掟だろう。」

ジェミヤンはそれを聞くと、もう一度フューレン達の方を見るが、やがて返事をする。

「わかりました。」

フロルもそれに頷くと、フロル一家は早々と退散するのであった。

ワレリーはモルビスに微笑む。

「よく頑張りましたねモルビス。
過去を、全てを切り捨てた勇気ある者よ。改めてヘグリスメオン教会の信徒として迎え入れましょう。」

ワレリーの言葉に、モルビスは少し思う事があるのか躊躇う。
それから、モルビスはワレリーに言った。

「別に過去を捨てたわけじゃありません。力を欲し、暴れた結果です。」

モルビスは少し悲しそうな顔をしていた。
ワレリーはそれを見かねて言う。

「自分の為ではなく仲間の為に力を欲したのは、素晴らしい事ですよ。悲しい顔をしてはいけません。
堂々と、していなさい。私のヘグリスならば。」

モルビスは顔を上げてワレリーを見た。
ワレリーはモルビスの目を見ず、空を遠く遠く見つめている。
モルビスは頭を下げたが、少しして顔を上げて返事をした。

「はい!」



フューレンやワレリー達がよく買い物に行く商店街。
その外れに、大きな大きなお屋敷がある。
その屋敷の表札には【タイミ】と書いてあった。

屋敷の中。
そこの一室には、先日ワレリー達を襲った堕天使ヴァレリカと、その主人である悪魔使いがいた。

「南のギルドが地割れに飲み込まれ全滅…か。」

「マスター、これは悪魔の仕業です。」

「だろうなぁ。」

悪魔使いはそう言うと、扉をノックする音が聞こえる。

「タイミ様、アイナです。」

そう言って入ってきたのは、なんとフューレンにベッタリくっついていたアイナ。
ヴァレリカを持つ悪魔使いの名は、どうやらタイミというようだ。
タイミはアイナに言う。

「どうだ?ヘグリスメオン教会の悪魔の様子は。」

「いつもと変わりません。って言いたい所ですが…あのキュースって悪魔は予想以上に力を持っている事がわかりましたわ。」

「ほう、ヴァレリカに秒殺された悪魔がねぇ…」

「魔術や魔法を覚えられたら、少し厄介な相手になるでしょう。」

アイナは淡々と話している。
続いてアイナは、少し間を空けてから言った。

「あともう一つ。彼に友達ができた様です。名はフューレン。どうやらあの教会に一緒に住んでいる様です。」

それを聞いて、タイミは身を起こして言った。

「おお、そいつの情報全然ないから頼んだぞアイナ。」

「はっ。」

そう言ってアイナは立ち去るので、タイミは深呼吸。
それからヴァレリカに言う。

「とは言っても、お前の敵じゃないだろうな。」

「はい、マスター。」

ヴァレリカも淡々と答えるだけで、タイミは笑った。

「フフフ、待ってなよミレサ。」





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