相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

060 それでも人間。

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その日。
タイミの屋敷にて、アイナはタイミに報告をしていた。

「あの子はこちらに来ないわ。そういう性格してるもの。」

「残念だな。」

タイミは呟くように言うと、アイナは溜息。

「じゃ、キュースの事は諦めるんですね。」

それに対し、タイミは鼻で笑う。

「諦めるとは言ってない。むしろそういうお人好しである事自体、こちらにとって好都合だ。」

「え?」

アイナは眉を潜めると、タイミは続けた。

「そういう人間は簡単に言いくるめられる。幸い、その子は利口ではないからね。
ちょっと揺さぶればどうにかなる。」

「揺さぶるって何を?」

アイナが聞くと、タイミは少し大きな声で呼ぶ。

「フロル、入ってこい。」

「はい。」

フロルが入ってくると、アイナは何をするのかさっぱりで目を丸くしていた。
するとタイミは言う。

「アイナを捕えろ。」

「え!?」

アイナは驚くが、フロルは驚きもせずアイナを拘束。
アイナは思わず魔力を放とうとするが、フロルにナイフを心臓に向けて突き立てられる。
驚きのあまりアイナは血の気が引いたのか、落ち着いた様子に。
フロルは言った。

「悪魔の弱点は心臓らしいな。
君が俺を攻撃するのと、俺が君を刺すの、どっちが先だろうな。」

アイナは歯を食い縛ると、タイミを睨んだ。
タイミはアイナの顔を見ると笑った。

「ごめんごめん。キュースくんの友達がアイナなら、アイナが人質になれば考えると思ってさ!」

「離しなさいよ!
キュースは馬鹿でも、いつも一緒にいるフューレンは馬鹿じゃないわ!すぐにおかしいって気づくわよ!」

すると次に反応を見せたのはタイミではなくフロルだった。

「フューレン…!?彼を知っているのか?」

フロルが言うと、アイナはフロルの発言にポカンとする。
タイミは言った。

「知り合いなのかい?」

「ええ。以前世話になりまして。」

「そっか…」

タイミはその場で考え込む。
フロルの表情はピクリともせず、それをアイナは見た。
アイナは考える。

(突然捕まって厄介な事になったけど、この人間がフューレンと知り合いならこっちに引き込めるかも。
そうしたらこの屋敷を飛び出して、逃げてやろう。)

するとフロルは言った。

「俺は世話になった人を手にかける事はできません。どんなに金を積まれても。」

それに対しアイナは笑んだ。
続けてタイミは質問をする。

「半殺しでもダメか?」

「半殺しくらいならできます。」

それを聞いてアイナは思わず顔引き攣った。

(世話になった人を殺す事はできないけど半殺しにはできるって…!それもう殺してるようなもんじゃない!)

「あっそう!それならいいんだよ!」

と笑うのはタイミ。
アイナは呆れてしまうと、タイミはアイナを見て言う。

「じゃ、君の部屋は今日から地下牢だから。」

「え!?嫌よあんな汚いところ!」

アイナは言うが、タイミはニコニコしたまま見送る。
アイナはフロルに連れられて部屋を出された。

(想像以上の悪魔ね!あの男!)

「キュースには何て言うつもりよ!」

アイナはフロルに問うが、フロルは首を傾げた。

「さあ、俺は指示された事を実行しているだけなので。」

「あっそ。なんでよりにもよってこんな悪魔使いの仕事を受けたのかしら?
今すぐ金でも欲しいの?」

「賃金がいいのもそうだが、一番は…悪魔の力を少し借りてみたいと思ったからかな。」

「…は?」

アイナは眉を潜めた。
フロルは続ける。

「探している人がいるんだ。もう六年も探しているが、なかなか見つからなくてな。
もしかしたら亡くなっているかもしれないが、それでも見つけたいんだ。」

「相当大事な人ね。」

アイナが言うと、フロルは頷いた。

「大事な家族だ。」

アイナはそれを黙って聞いており、それから視線を落として呟く。

「あなたみたいな人を大勢を殺してそうな人間でも、家族は大事にできるのね。」

「俺は人間だからな、大事な物の一つや二つある。」

「そうね、人間らしい。」

アイナは遠い目をしながらも、そう呟くのであった。



ヘグリスメオン教会では、フェオドラが優勝カップを自慢していた。
フェオドラはカップを掲げ、それを見ているケリスとモルビスが目を光らせていた。

「すげぇじゃんフェオドラ!」

「フェオドラ凄いです…!」

「えっへん!」

フェオドラは胸を張ってそう言うと、それを近場から見ていたキリエルは闘技場の惨状を思い出す。
そして吐き気を覚えるので、フューレンは黙ってキリエルの背を摩ってあげた。
その様子を見ていたスピムは顔を引き攣りながらも聞いてきた。

「そんなに凄かったの?人が死んだとか?」

「死んではないんだが、かなり悲惨な戦いだったからな。」

フューレンが言うと、キリエルは首を横に振る。

「あんなの見ちゃいけないよ…!」

それに対しスピムは呆れた様子。

「本当にキリエルは度胸がないわね。」

「そんな事言われたって~!」

そこにワレリーがやってくる。
フェオドラはワレリーに気づくと、笑顔で近づいた。

「パーパ見て!フェオドラの優勝!」

ワレリーは微笑みながら言う。

「おや、何か大会にでも出たのでしょうか。」

「魔術科学園の闘技場だ。魔法で戦って、相手が降参するまで戦闘を続ける闘技らしくて。」

フューレンが説明をし、それを聞いてワレリーはフェオドラの頭を撫でた。
フェオドラは幸せそうに喜ぶと、ワレリーは言う。

「おめでとうございますフェオドラ。楽しかったですか?」

「うん!今度はパーパも見に行くんだよ!」

「ふふ、わかりました。」

そんな親子のやり取りを見て、キリエルの表情は少し和らぐ。
フューレンは言った。

「調子が戻ったか?」

「え、うん。」

キリエルは返事をすると、次に笑顔を見せた。

「闘技場は懲り懲りだけど、フェオドラが入学してくれたのは僕も嬉しいからさ!」

「そうか。」

キリエルの調子はすぐに良くなった。
一同はキリエルの切り替えっぷりに目を丸くしていた。
スピムがこう呟くほど。

「キリエルは教会イチの楽観主義者ね。」





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