相剋のドゥエット

うてな

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08 天使がやってくる

089 反旗を見せたキリエル。

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その日の事。
フューレンは部屋で革命派の新聞を読んでいた。

(裁判は進んでいるようだな…。ヴァレリカに邪魔されるような様子もなし…本当にヴァレリカは行動を起こさないのか…?)

その時だ、教会の方が騒がしくなる。
フューレンは変に思って部屋を出た。
すると、丁度地下からもキリエルが出てくる。
キリエルとフューレンの目が合うと、キリエルは言った。

「なんか教会の方が騒がしいね。」

「ああ、行ってみるか。」

その言葉にキリエルは頷き、フューレンと共に教会へ向かった。
教会内には数人の男性の姿が。
服装的には、賞金首を狩ってるような野蛮な人間には見えない。
キリエルは目を丸くして言う。

「魔術科学園の先生だ。」

「え?」

フューレンの言葉に、キリエルは更に頷いた。

「間違いないよ。何をしに来たんだろう。」

二人は話に耳を傾けた。

どうやら先生方はワレリーと話をしている。
先生は言った。

「明日、ここの教会の者達とあなたの裁判を執り行います。
朝一番に出迎えますので、逃げぬよう。
…とは言え、今夜から朝までここには見張りがつきますが。」

その言葉にキリエルは驚く。
フューレンも驚いてはいたが、いずれ来るものなので落ち着いた様子だった。
キリエルは慌てふためく。

「どうしようどうしよう…!!」

「落ち着けキリエル。
今までの裁判、確かに極刑の者もいたが極刑を免れている奴もいる。」

「でもでも!教会の人の殆どが極刑レベルの事してるもん!もう無理…!!」

キリエルは意気消沈して座り込んでしまう。
フューレンは呆れて溜息をつくと、話に再び集中。
するとワレリーは微笑んで言った。

「おや、最初の方とは嬉しいものですね。」

ワレリーの反応にフューレンは驚く。
この期に及んで笑顔でいられるワレリーの気が知れないからだ。
キリエルは頭を抱えて言った。

「牧師様も遂におかしくなったしぃ~!」

「お前はまずは落ち着け…」

フューレンはそう言ったが、キリエルの耳には入っていない様子。
先生の方も、ワレリーを奇妙に思いながらも教会を去っていった。
去っていったのを見て、ワレリーはふっと息をつく。
それからフューレン達の方を見て言った。

「盗み聞きとは感心なりませんね。」

「盗み聞きじゃないもん!見に来たんだもん!」

とキリエルは、まるで不貞腐れたフェオドラの様に精一杯反論。
ワレリーは思わず笑ってしまった。
笑ってしまうワレリーを見ると、キリエルは無愛想な顔。
ワレリーはそれを見て首を傾げると、キリエルは言った。

「牧師様って本当に意味がわからないよ…。
なんで自分が死ぬかもしれないのに、教会のみんなが死ぬかもしれないのに、そんなに笑顔でいられるの?
信じられない!」

それを聞いてワレリーは眉を困らせたが、やがて穏やかな笑みをキリエルに向けた。

「私に怖いものはありませんから。」

それを聞いて、更にキリエルの気に障るのか眉を潜める。
ワレリーはそのまま立ち去ってしまった。
キリエルはブツブツと言う。

「もう、本当に意味わかんないや。」

そしてキリエルは決心した顔で言った。

「決めた!」

「何を?」

フューレンの問いに、キリエルは真剣な表情で答えた。

「教会のみんなを逃がす!」

「監視がいるのに?」

「そこはなんとかするの!」

突拍子もなく、計画性もないキリエルの提案に呆れてしまうフューレン。

「なんとかって…どうするんだよ…」

「なるようになる!」

そう言ってキリエルは地下へ向かった。
大方、みんなを呼ぶ為だろう。
フューレンは呆れつつも思った。

(まあ、あれでもキリエルは真剣なんだろうな…)

そう思うしかないのである。



暫くして、キリエルが呼び出せたのは二人だけ。
モルビスとスピムだけだった。

それを遠目で見守るフューレン。
あまりの少なさにフューレンは目を丸くしていた。
スピムは言った。

「もう大人しくしてなさいよ。抵抗したってバレたら牧師様達だって罪が重くなるかもしれないのに。」

スピムに関してはキリエルを止める為である。
キリエルは言った。

「でもどうせみんな殺されちゃうでしょ!」

「そりゃそうだと思うけど…。牧師様はどうやら秘策がある顔してるし…」

キリエルは頬を膨らませる。
それから割に合わないほどの声を上げた。

「教会のみんなはいっつもそう!!「牧師様が言ったから」って、いっつも牧師様の指示に従って!
自分の身は自分で守ろうとか思わないわけ!?今回は牧師様でもムリ!みんな死んじゃう!」

「だからって抵抗するわけにもいかないでしょ…!相手は天使よ?」

スピムの言葉に、キリエルは無愛想な顔のまま言う。

「天使ってそんなに怖いの?怖いのは魔力を消せちゃうヴァレリカであってさ、天使自体は怖く無いじゃん。
ほら、フューレンとか見てみなよ!」

(それは若干気に障る言い方だな。)

フューレンは拳を用意して思いつつも、大人しく見守る。
モルビスも深く納得し、スピムも目を丸くした。

「確かに。」

「でしょ~!」

キリエルはそう言ったが、フューレンは思わず言ってしまう。

「キリエルが逃げたりしたら、ノルスはどうなるんだろうな?」

それを聞いたキリエルは気づいた顔。
キリエルはすぐに頭を抱えて座り込んだ。

「仮にお父さんを助けに行くって言っても…魔術科学園には恐ろしい程強い教師が山ほど…!
しかも裁判が執り行われている場所に突撃するなんて無謀にも程が…!」

キリエルはそう言って考えてはいたが、そこに更にスピムが追い打ちをかける。

「キリエルだけ逃げたら、父親は息子だけ逃がしたって非難浴びるかもね。」

更にダメージを受けるキリエル。
それに対し、モルビスはキリエルに言った。

「まあ牧師様も何かお考えだし、従っておこうぜ。
俺達牧師様に付き従う悪魔なんだ、最初から牧師様に逆らう事なんかできやしないさ。」

「それもそうだけど…」

キリエルはそう言って、更には黙り込む。
「最初から何もできない」、そう言われた感じがしたからだ。
キリエルは悲しくなっているのか、顔を引き攣ってしまう。
それから自分の部屋へ一直線に帰ってしまった。

一同はそれを目を丸くして見ていると、フューレンは言った。

「キリエルは多感な時期だから、一番辛いだろうな。」

するとモルビスは言う。

「俺も十五と多感な時期だけどな…」

その言葉にフューレンは納得。

「モルビスはキリエルよりも若いんだな。モルビスはよくもまあ大人しくしてられるな。」

モルビスは鼻で笑う。

「俺はいつだって死ぬ覚悟で賞金稼ぎしてたし、そうでもしないとギルドで生きてけなかったからな。」

「大変な思いをしてきたんだな。」

「まあな!」

しかしモルビスの顔はなんだか誇らしげ。
スピムとフューレンはそれを見て目を丸くしていた。

(なーにその反応。やっぱり若いのね…)

スピムはそう思っていた。





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