植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

139 救ってやってくれ

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迷い続ける数男に、久坂の植物は振り下ろされた。

「受身取れごっちゃんー!」

シュンは言ったが、数男は何もできていなかった。
数男は植物を見上げる。

すると、

「数男さんー!」

と遠くからサチの声が聞こえた。
数男はふと正気に戻ると、窓の外から杖にまたがり飛んでくるサチの姿が。

サチは真剣な眼差しでこちらに手を伸ばしていたので、数男は呆然と手を伸ばした。
サチはその腕をしっかりと掴み、数男を連れて飛び立つ。

植物から逃げ切れたものの、数男の植物ついでにアンジェルも引っ張られてくる。
首の方は緩んでいたので、アンジェルは剣で切り裂いて着地した。

「遅い、よく気づいたね。」

アンジェルが言うと、サチは言う。

「会議室の窓がこんな豪快に破壊されてたら、向かわない人もいないでしょう。」

「サチ!ナイス!」

シュンがグッドサインを送ると、サチは頷いてから数男の方を見た。

「数男さん、大丈夫ですか?」

数男はまだ余韻でボーっとしていたが、サチの方を見て言う。

「…助かった、お前が来てくれなかったら今頃ペチャンコだったな。」

サチはそれから久坂の方を振り返ると驚く。

「これ…!まさか久坂さん…!?」

「そうだ。」

数男はそう言って、久坂を見た。
正気を失った久坂。
数男は虚しい表情をすると、サチの耳元で言う。

「サチ、秀也を救ってやってくれないか?」

急に囁くので驚いて赤面症を発揮。
サチは振り返って数男を睨みそうになったが、数男の切なく辛そうな表情が目に飛び込むと怒りを緩めた。
今まで見たことのない、数男のどうしようもない悲しみの表情。
サチは数男の表情に、全てを理解して頷いた。

「わかりました。」

するとサチは杖を構える。
今度は杖の先に槍のような刃を作り出す。
そしてその槍で、久坂にある植物を切り落とし始めた。

それを、目を剥いて見守る数男。
シュンは「おもしろそー!」と言ってハサミを見つけて切ろうとするが切れない。

「かってぇな!」

シュンが言うので、アンジェルも氷の剣で切ろうとしてみると切れなかった。

「ほんとだ。氷でも鉄でも切れないのにプラズマでは切れるんだ。」

サチは襲ってくる植物を避け、久坂に生えている植物を一つ一つ丁寧に切り落としていく。
しかし相手も抵抗してきていて、サチはやりにくそうにしていた。
するとサチは思い出す。

「そうだ…!結構前に奈江島さんから貰った鎮静剤、使えるかしら。
…守君に使うはずだったけど…」

サチは以前綺瑠から貰った鎮静剤を出す。
サチは杖を再び箒にすると、久坂に向かって飛びだった。
途中、サチに襲いかかる久坂の植物。
それを見た数男は、自分の植物を伸ばして相手の植物を止めた。

「数男さん…!」

しかし久坂の植物はかなり力があるようで、数男が押さえるのも数秒が限界だろう。
それでも数男は真摯な表情でサチを、久坂を見ていた。
サチはそれに一つ頷くと、植物を押さえられて抵抗ができない久坂に鎮静剤を打った。

久坂は鎮静剤を打たれると、動きがどんどん鈍くなる。
数男は久坂の変化に気づくと呟く。

「…眠るのか、久坂。」

久坂は目を閉じそうになっており、立膝を着いた。
そしてサチは、植物だけを綺麗に全て切り落とす。

全てを切り落とした時、久坂は淡い光に包まれた。
巨大な植物の塊だった久坂は、やがて小さな小石となる。
数男はそれを呆然と見つめた。

サチはそれを手に取ると、歩いて数男の方へ向かった。
数男が呆然としていると、サチは種を数男に渡す。

「救いましたよ。」

数男は目を見開いたままサチを見つめていた。
サチの姿が強く輝いて見え、数男の目に焼き付く。

「なんですか?」

サチが聞くと、数男は微笑んで首を横に振った。

「いいや…後片付けするか。」

思わず見せた数男の笑みに、サチは目を丸くした。
数男は大事そうに石を持ち、握り締めた。
何も言わず。

片付けと言ったのはいいものの、あまりにも悲惨に散らかる部屋を見て、溜息をついて片付ける気が半減する者が数名。
但し、シュンはやる気である。
そして数男も、穏やかな笑みで言った。

「おい、そっち手伝えシュン。」

「あいあいさー!」

数男の手伝いを、シュンがする。
潰れたテントの解体を始めたので、サチも手伝いに入った。

「あ!あたしも!」

サチも近くで片付けの手伝いをすると、再び数男の顔を見てしまう。
数男の穏やかな表情。
数男はサチの視線に気づいた。

「何か顔についてるか?」

サチはそう言われると、視線を逸らした。

「い、いいえ。」

数男は変に思いながらも、テントの片付けを続ける。
数男はいつもの無表情に戻ると、再び手のひらの小石を見て言った。

「お前言ったよな、『ミンスは人類の命運を握る恐ろしい神様』だって。」

その語りに、一同は顔を上げて数男を見た。

「私はもう一度答えよう。」

そう言うと、数男はニヤリと笑うと言う。

「私達が、奴が神じゃない事を証明してやる。
だから…、次に目覚めたら驚け。…馬鹿野郎…」

数男の誓いに、サチは思わず微笑む。
シュンはいつも通りニコニコ。
アンジェルはというと、溜息をつきながらも呟いた。

「ソシオパスでも、熱くなれるんだね。変なの。」
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