植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

138 研究員とモルモット

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植物人間になった久坂を、凍らせて殺そうと考えるアンジェル。
対し、それを救おうとアンジェルを止める数男。
数男は言った。

「すまないな。言い訳をすれば心を知ったせいだが…、」

そう言って数男は久坂を見る。

「どうやらコイツが死ぬと、私は『損』してしまうようだ。」

それを睨みつけてアンジェルは言う。

「それを愚かだって言ってんの!そのために死にたいわけ!?アホじゃん!」

「確かに。」

シュンが笑顔で言うと、数男は久坂に向かって歩く。
久坂は植物を別に生やして数男を狙う。
数男は変わり果てた久坂に、しかし面影のある久坂を見て眉を潜める。

「いや違う……意味がわからん。
コイツを生かしたところで何の得が…」

悩み過ぎたせいか、たまに目が霞んだ。
それと同時に、数男は久坂との出会いを、過去を思い出す。





――数男の幼い頃。
数男は親に殴られ、アザと傷だらけになっていた。
髪を乱暴に引っ張られ、顔を上げさせられる。
数男は痛がる様子もなく、父の顔を見た。

「この化物」

そう言って殴られる。

飽きたら部屋の隅に捨てられ、数男は黙って部屋に帰る。
廊下の途中で母に会うも、母は数男を菌か何かのように避けて歩いた。

こんなのは日常茶飯事。
数男はこの容姿に生まれた為に、両親から化物扱いされていた。

数男が部屋の扉の前に立つと、家に誰かが訪ねてきた。

男の研究員。
この男は、定期的に家にやってくる。
この男はいつも、父と長話をして帰る。

しかし今日は、数男と同い年くらいの男の子も一緒にいた。
男の子は数男を見ると目を丸くした。

「うわすげー。ホントに真っ白で真っ赤じゃん。」

数男は男の子には興味がなくて部屋に戻ろうとするが、男の研究員に腕を引っ張られてリビングへと連れられた。
男の研究員は言った。

「よし、ちゃんと飯は食わせてるみたいだな。
はい、これは今回の謝礼金。」

封筒を父は受け取って、早速中身を確認。
男の研究員は数男の新しい体の傷を見ると言う。

「てかまた傷つけたのか?いいのかそんな事して、一応お前らの子供だぞ?」

しかし父は鼻で笑う。

「コイツは容姿だけじゃない、傷の治癒も高く、痛みも感じない…ホンモノの化物。
人間にもなれなかった出来損ないは、こうして研究所に売って金にするしか用途がない。」

「でもちゃんと勉強もできるし…将来有望だよなぁ数男。」

男の研究員は数男に言ったが、数男は何も答えなかった。
ただ無愛想に、誰にも視線を合わせない。
すると父は、机を思い切り叩いて数男を怒った。

「おい化物!返事くらいできないのか!」

しかし、そこで連れの男の子は言った。

「おっさんうるせぇ。」

「は…?」

父は男の子を睨むと、男の研究員は言った。

「あーごめん、これ俺の息子。数男に興味持ち始めちゃってさー。」

すると男の子は数男の目の前に来た。
数男は男の子が視界に入ったので冷めた目で見つめていると、男の子は言う。

「オレ、久坂秀也。てめぇ、名前は?」

数男は答えないつもりだった。

しかし、秀也はジッと数男を見つめてくる。
どんなに無口を貫いてもだ。
答えるまで、視線を逸らさないつもりだろう。

数男は最終的には名乗ってしまう。

「五島…数男。」

「よろしく。」

秀也はそう言って数男に手を出した。
数男はその意味を知らない。
秀也は勝手に数男の手を取って、手を握った。

数男の視線は秀也を見つめたまま。
秀也も数男を見つめたまま。

(変な奴。研究所の奴等もそうだ。
なぜそんなに、俺に興味を持つんだろう。)

数男は初めてだった。
自分の目をこんなにも真摯に見つめた人間は。
だから、余計に興味が沸いた。

勿論秀也も、数男に興味があった。
お互い、興味からのスタートだった…。――





数男はそれを思い出すと、頭を抱えた。

(あの日からずっと…秀也は私を調べてばかりだったな…。
研究員とモルモット、それだけの関係だ…別に、私に何か与える訳でもない…。ただ、家でも学校でも孤立していた私に…飽きずに付きまとってきた…!)

迷い続ける数男に、久坂の植物は振り下ろされた。
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