植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

163 外出禁止令

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秋田の家。
ミンスはクロマを心配そうに見つめる。
クロマは何かに悶えているような耐えているような、とりあえず落ち着かない。

「クロマ…」

ミンスが話しかけると、クロマは睨みを効かせた目をミンスに向けた。

「どうかなさいましたか…?」

ミンスが聞くと、クロマはすぐにミンスの身体を見た。
ミンスは首元を留めてそこから下は開いている服を着ているので、胸の下半分からズボンまでは裸なのだ。
その視線にミンスは一気に冷めて無表情になると、それを見ていたテオドールが笑った。

「クロマ、貴方また女の身体に興味を示しているのですか。」

ミンスが言うと、クロマは悔しそうにする。

「もう少しで覗けたのに…!」

ミンスは首を傾げると、テオドールは言った。

「先日ね、秋菜ちゃんって子と戦ったんだけど、邪魔が入って体見れなかったからムラムラしちゃってんだってさ。」

するとミンスはクロマを冷たい目で見る。

「貴方…秋菜様と…?」

クロマはコタツに伏せる。
ミンスは暫くクロマを見てから、テオドールに微笑んだ。

「テオドールは何もやましい事を考えてませんよね?」

「まあ代わってあげたいとは思ったがな!何もしてないよ?」

テオドールがウインクすると、ミンスは怒ったのか表情を暗くして周囲に植物を生やした。
殺気の満ちた植物を見て、テオドールは少し焦る。

「待って待って、性欲とハートは別だぜ?」

「貴方の言葉は信用なりません…!」

テオドールはクロマを見て言う。

「ほーらミンスがお怒りだぞ?クロマも謝んないと。」

クロマは顔を上げてミンスを見た。
ミンスの周りに殺気に満ちた植物が生えているのを見たクロマは、一瞬だけ焦る。

「な、何を怒っている。」

「自覚が無いのはよろしくありませんね…」

ミンスが微笑むが、ミィシェルはコタツに潜った。

「ミンス怖いです…!」

クロマは一度落ち着き、みかんの皮を剥いて筋を取る。

「ミンス、みかんの筋を取ってやるから機嫌を戻せ。」

クロマが言うので、テオドールは顔を引きつってしまう。
ミンスは微笑んだままで、クロマの持っていたみかんを力で破裂させてしまう。
クロマは愕然と、みかんのあった自分の手を見つめた。
只事ではないと感じたクロマは、テオドールの方に来る。

「こ、これはどうすればいいのだ!」

テオドールは苦笑。

「えーわかんない。俺でさえお前達の母さんをここまで怒らせた事はないんだぞ?」

「この役立たずが!」

「あ、愛を伝えるとか?」

「愛?それはどうすればいいのだ?」

クロマが言うので、テオドールは目を丸くしてクロマを見た。
テオドールは「何も知らないんだなー」と言いたげな顔をするので、クロマはテオドールを睨む。

「なんだ。」

「いいや。そうだな、キスしてあげれば?」

「キス?…ふむ、やってみる価値はある。」

クロマは納得した。
クロマはミンスの手を取り、「ミンス…」と言ったがミンスは表情を変えない。

そのままクロマはミンスの植物に掴まれ、クロマの力がミンスに戻されていく。
クロマが驚くと、クロマは少し弱った姿になったところでミンスは言った。

「一週間外出を禁じます。」

するとクロマは顔を引きつった。

「なんだって…?」

次にミンスは、テオドールを見る。
テオドールは苦笑。

「ゆ…許してってば~…」

「ミンス、二人が可哀想です。」

ミィシェルは言うが、ミンスはミィシェルに対してはいつもの笑みを見せて言う。

「しかしこのくらいしておかなければ、次は本当に手を出します。二人の性格ならば。」

それを聞いたミィシェルは上の空で考え事。

「ソレナラ許します!」

それに対し、クロマは真剣な顔で言った。

「許してはならん!」

「力と言ったら。」

とテオドールが話を逸らす様に言い出すので、ミンスはテオドールを見た。

「隕石はいつ落とすの?」

テオドールが聞くので、ミンスは難しい顔をする。

「そうですね。実は今、栄養となる生物が順調に石にならないという事態が起こっています…。
誰かがこれを止めている…世界的に植物人間化も止んでいます。これでは落すための力が得られません。」

それを聞いたテオドールも難しい顔をして「世界的に…?一体誰が…」と考え込む。
しかしミンスは微笑んだ。

「大体予想はついています。こんな事が出来るのは…あの財閥しかいませんからね。」



とある避難所。
誠治は綺瑠と共に避難所に来ていた。

「これが研究所の名目を使って作った避難所か。
設備バッチリ。まあこのくらいなら、無断で作ったとしても許しますか。」

綺瑠が言うと、誠治は頭を下げた。

「勝手な真似を、申し訳ありませんでした。」

「いいよいいよ!誠治は人の為を思ってしたんでしょ、その優しさは大事だよ。
但し!次からは無断でこんな事しないでね、約束。」

「…はい。」

頭を下げた誠治に綺瑠は頷くと、避難所を眺めた。
避難所にいる人はただ呆然としていたり、テレビを観ている者などが多い。
それを見た綺瑠は言った。

「なんか監獄みたいだね、たまには外に出してあげたいものだけど。」

すると誠治は顔を上げ、眉を潜める。

「そんな事をすれば、ここにいるみんなが植物人間に…!駄目です絶対に…!」

「誠治は心配性だなぁ。」

綺瑠はニコニコしつつも窓の外を見る。

「だって僕が散歩するって言ったら、車出すよって言うんだもんね。そんなに植物人間になって欲しくないの?」

綺瑠にそう言われると、誠治は真摯な表情で言った。

「当たり前です!
…本当は…誰も危険な外になんて出したくはありませんよ…!」

綺瑠は廃人地味た避難所の人間を見て、眉を困らせる。

「う~ん…可哀想に…」

「…せめてミンスが、地球に隕石を落すほどの力を手にしなければ…」

それを聴いて、綺瑠はふと言う。

「そう言えばここらの植物随分減ったね。力を温存するために減らしてるのかな?」

誠治は目を見開いた。

「まさか…!もう力が貯まっているとか…!」

綺瑠は笑った。

「ちょっと心配しすぎ。大丈夫、まだ時間あるよ。」

しかし誠治は焦りを隠しきれない表情でいる。

「早く彼等をどうにかしないと…!」

「落ち着いて誠治!」

綺瑠はそう言って落ち着かせた。
誠治は落ち着きのない様子だったので、綺瑠は言った。

「誠治ばっか背負ってないで、たまには僕にも頼ってよ。一緒に頑張ろうよ。」

「でも久坂さんのように、いずれは奈江島さんも植物人間に…」

それを聞いて、綺瑠は反応する。
綺瑠は誠治から視線を逸らして言った。

「…駄目か、人間の僕じゃ。」

「いえ、そういう意味ではなくて…!」

誠治が焦ると、綺瑠は軽く俯いた。
そして綺瑠は、自分の手を見つめて思い出す。



――「君は小さい頃、妻から石を受け取ったはずだ。プラズマの力を込めた、小さな石を。
その石には、妻の力が宿っている。その力は今、君の中にあるんだよ。」――



綺瑠は拳を握ると言った。

「人間じゃ、植物人間と戦えないのかな。」

「え?」

誠治が目を丸くすると、綺瑠は首を横に振った。
そして綺瑠は笑顔を見せると言う。

「研究を急ごう。人類を、世界を救う為に。」

そう言って綺瑠は歩き出すので、誠治は強く頷いた。

「はい!」

綺瑠は落ち着いた顔をすると、自分の拳を見つめて思う。

(母さん…。
僕は本当に、母さんの心を殺さなくてはならないのかい…?)
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