植物人間の子

うてな

文字の大きさ
186 / 222
第4章 侵食―エローション―

168 あの優しさは誠治並み

しおりを挟む
一通り健康診断が終わり、皮膚や粘膜や体液などを採取された後にサウザは言われる。

「普通の植物人間の身体構造は人間とあまり変わりません。しかし、サウザ王の身体構造は人間と全く異なるものでした。
試しに採取したサウザ王の皮膚を酸に付けたところ、反応が全く見られませんでした。勿論アルカリの方も試しましたが同じく反応は見られませんでした。」

サウザは怖くない怒り顔を見せる。

「も~!人が痛い思いをしているのに酸につけるってどうなってるんですか~。
俺で遊んでますよね!」

それに対し、研究員は反省の色無しに舌をペロッと出していた。
サウザは「も~!」と言ったが、急に研究員は真面目モードに。

「続いて腸内細菌を調べるために検便調査を行います。」

それを聞いて、サウザは目を丸くした。

「ケンベンチョウサ?」


上の階では綺瑠と誠治が一緒にいる。
綺瑠は生物研究に使う特殊な機械を前にして、頭を抱えていた。

「植物人間の生命エネルギーを奪うのは…それじゃ石になっちゃうでしょ?細胞を人間のものに戻すなら…?
ダメだ、植物人間の身体構造がまだ未知数なせいか考えようがない。…早く王様の研究結果出ないかな?」

「まあまあ、急いでは正確な結果は出ませんよ。」

誠治が言うので、綺瑠は苦笑。

「そ、そうだね。」

すると誠治は咳払いをして言った。

「この研究が成功しなかった時の為に…。ミンスを倒す方法も考えないといけないと思うのですが。」

それを聞くと、綺瑠は反応した。
綺瑠は眉を潜める。

「そうだね。きっとこの研究が成功するより先に、相手が動き出すだろうからね。」

「奈江島さんが作った、石の巫女を殺す機械は使えないんですか?」

「力を得た彼女に、その程度の機械が通用するかねぇ。僕は通用しないと思うよ。
もっと多くのプラズマが……力が必要だよ。」

「どのくらいですか…?」

そう言われると、綺瑠は考える。
そして棚から一冊のファイルを取り出して開いた。
そのファイルは秋田が石の巫女の力を奪った機械の設計図。
設計図に記載されている目盛を見て、綺瑠は言った。

「これは石っ子ちゃんの力を奪った機械の設計図だよ。この機械の目盛じゃ、石っ子ちゃんの力を奪った時はほぼほぼ最大値で…。
石っ子ちゃんを倒すならこの目盛が半分位?例えばクロマのプラズマ、瞬間最大値…予想だけどもこれよりちょっと上行くくらいだね。
かなり必要だ。」

誠治は言った。

「じゃあ、私の力でクロマの力を奪って…」

と言うが、綺瑠は首を横に振った。

「その前に誠治の体が耐えられないよ。
今のクロマの力は、人間の体が持てる力の量じゃない。例え不死身だろうがね。」

それを聞くと、誠治は悔しそうな顔を見せる。
するとそこにサウザがやってきた。
サウザは潤んだ瞳を二人に向ける。

「ど、どうしたの?」

綺瑠が聞くと、サウザは検便の容器を見せる。

「ニホンはこんな事するの…?俺驚きだよ…」

綺瑠は思わず苦笑。

「あー検便ね!やる人はやるよ、僕は経験ないけど。」

そして更にサウザは尿検査の容器も見せる。

「一度に出ないよ。もうショックが大きすぎて…」

「しかしこれらを全て耐え抜けば、人間は植物人間になってしまう恐怖をもう味わう事はないんですよ?」

すると二人の会話に、綺瑠がツッコミを入れた。

「いや、でも検便と尿検査ってちょっと違うよね?半分遊ばれてるよねぇ王様?」

しかしサウザには綺瑠の言葉が聞こえなかった様子。
誠治の言葉に、サウザは急に真剣な顔になって言った。

「そうだよね!俺頑張るよ!」

そう言うとサウザはトイレに駆け込むのであった。
綺瑠は驚きと笑いが混じった顔をしつつ言った。

「あー、この優しさは誠治レベルかな?」

誠治は鼻で笑う。

「そんな、彼の方が上ですよ。」

「まあ、純粋すぎるよね。」

冷静にも息をつく誠治。
そんな誠治を、綺瑠は目を丸くして見ていた。
そこで誠治の携帯が鳴るので、誠治は出た。

「もしもし、九重です。」

そして話を聞くと、誠治は顔色を変える。

「!?
…至急植物人間の確保を!私も今から向かいますので!」

誠治はそう言うと、急いで外へ向かってしまう。
急に誠治が動き出すもので、綺瑠は気になって言った。

「待って!誠治、何があったんだ!」

綺瑠が聞くと、誠治は言うか言わないか躊躇う。

「先日行った避難所の人々が相次いで植物人間になっているんです…!」

「え…!?あんなに設備は万全だったじゃないか!」

綺瑠は言うが、誠治は頭を抱える。

「機械の力が通じなくなっているのか…?それとも…。
…奈江島さんも行きましょう!」

誠治は綺瑠を呼んだので、綺瑠は頷いた。

「勿論だよ。」

綺瑠はそう言って、誠治と共に行くのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】勘違いしないでください!

青空一夏
恋愛
自分の兄の妻に憧れすぎて妻を怒らせる夫のお話です。 私はマドリン・バーンズ。一代限りの男爵家の次女ですが、サマーズ伯爵家の次男ケントンと恋仲になりました。あちらは名門貴族なので身分が釣り合わないと思いましたが、ケントンは気にしないと言ってくれました。私たちは相思相愛で、とても幸せな結婚生活を始めたのです。 ところが、ケントンのお兄様が結婚しサマーズ伯爵家を継いだ頃から、ケントンは兄嫁のローラさんを頻繁に褒めるようになりました。毎日のように夫はローラさんを褒め続けます。 いいかげんうんざりしていた頃、ケントンはあり得ないことを言ってくるのでした。ローラさんは確かに美人なのですが、彼女の化粧品を私に使わせて・・・・・・ これは兄嫁に懸想した夫が妻に捨てられるお話です。あまり深く考えずにお読みください💦 ※二話でおしまい。 ※作者独自の世界です。 ※サクッと読めるように、情景描写や建物描写などは、ほとんどありません。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

処理中です...