植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

169 代表の怒り

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誠治と綺瑠は避難所に着く。
すると避難所は既に閉鎖されており、中には大勢の植物人間がいた。
近くにいた避難所の研究員は綺瑠の元に来て言う。

「一応植物人間ではない人達は『Aレベル』の施設に向かうバスに乗り込ませました!」

すると誠治は形相を変えて言った。

「何だって!?植物人間のいる部屋で過ごした人間はかなりの確率で植物人間になる!他に回したらそこからも植物人間が増えるだろう!『Cレベル』の避難所に送ってください。」

それを聞いた研究員は焦って言う。

「今すぐ運転手さんに連絡をします!」

誠治が溜息をつくと、綺瑠は眉を潜めた。

「AとかCとか何?」

綺瑠の質問に対し、誠治は黙ってから続ける。

「花粉をどのくらい吸っているか確認しているんです。安全レベルがA、注意レベルがB、危険レベルがCです。」

それを聞くと、綺瑠は良く思わないのか溜息を吐きながらも目を細めた。

「へぇ…、ただの避難所かと思ってたけど違うんだ。
やっぱり無断でこういう場を設けたのは反対すべきだったねぇ。勝手に輸送まで行えば避難所どころの話じゃなくて人権侵害になり兼ねない。
こんなの『避難所』じゃなくて、ただの『監獄』だよ。」

誠治は深く目を閉じると言った。

「申し訳ありません。」

「そーれーで、この中の植物人間はどうするの?」

綺瑠は誠治を見つめながら聞く。
こちらを怪しんでいる目だった。
誠治は少し黙ってから言った。

「殺処分です。燃やして灰にします。」

すると綺瑠は驚いた。

「なんだって!?
誠治、人間に戻れるかもしれない植物人間を…!」

と綺瑠は言うが、誠治は言った。

「植物人間はやがて石になり、ミンス達の栄養になります。
植物人間を野放しにするのは、相手の栄養採りに協力したのと同じです。植物人間になった人間は、手遅れと見なします。」

綺瑠はそれを聞いて、血の気が引いてしまう。
恐ろしいのではなく、誠治が変わってしまった事に驚いていた。
同時に自分の父の秋田の姿を思い出してしまう。
植物人間と関わってから、秋田も随分と変わったからだ。

「ねえ誠治?
植物人間と関わってから、自分がおかしくなったと思わないか?」

すると誠治は落ち着いた様子で言った。

「奈江島さんならわかってくれますよね?
このまま植物人間を生かしていてもミンス達に力を与えるだけなんですよ。
生かせば生かすほど、地球の破滅までの時間を縮めるようなものなんですよ?
…私はそれを止めたかったんです。」

誠治の言葉を聞くと、綺瑠は一瞬目を丸くした。
それから綺瑠は冷めた目をして、誠治を見る。
綺瑠は珍しく、静かな怒りを交えた声で言った。

「誠治、勝手な事はしないで欲しいな。僕達はチームなんだから、一人で暴走されても困るんだよ。
はあ…あの久坂でも僕に無断でこんな勝手をした事ないのに。若いって困るねぇ。」

その言葉に誠治は眉を潜めると、綺瑠は誠治の前へと歩みを進める。
綺瑠の冷たい視線に、誠治は強い圧を感じた。

「君の勝手で、僕達が振り回されるってわかってるよね?君は全ての責任を負えるのかい?できないだろう?
…誠治、君さ…自分の立場わかってこんな事やってるの?僕の口から教えてあげないとわかんない?」

「い、いえ…」

誠治は綺瑠の気迫に押されている。
綺瑠の冷たい視線が誠治の胸を刺す。
誠治は耐え切れず、綺瑠に頭を下げた。

「今すぐ…避難所を廃止します。」

それを聞いた綺瑠は、すぐに微笑んで首を横に振る。

「そんなに極端な話にしなくていいよ。
みんなと話し合って、これからどんな形にしていくか決めよう。」

誠治は綺瑠の顔色を伺いながら、静かに頷いた。

すると綺瑠は何が面白いのか、クスクスと笑った。
誠治は驚くと、綺瑠は言う。

「今のは代表としての説教。
でも本音を言うとさ、誠治ってやっぱり面白いよね。」

誠治はポカンとすると、綺瑠は続けた。

「人類を助けたくて奮闘しているのに、人類を手にかけてしまうんだよ?
誠治の優しさってどこから出ているんだろう、人間を殺すのも優しさなのかな?」

綺瑠が笑顔で話すのを見て、誠治は思わず溜息。
それから誠治は首を横に振って言う。

「私の勝手ですよ、全て。」

誠治は上機嫌な綺瑠を見つめつつも、続けて言った。

「奈江島さん、一緒に来て欲しい場所があるのですが。」

綺瑠は誠治の方を見た。
誠治の真剣な顔。
綺瑠は思わず首を傾げた。

「いいけど。」





第二故郷病院会議室。
そこでは全員が作戦会議をしていた。
三笠は言う。

「王様をもしこちらに引き入れても、どうやってミンスたちに対抗する?あっちにはクロマもテオドールもいるよ?」

「そんなの、あのゴミ拾いに任せて全員で攻める。サウザは力を消す能力があるし、むしろこっちの方が有利だ。」

数男はそう言って、ミンス達のいる住所を書いたメモを出した。

「これは?」

「奴等が今いる場所だ。マンションの一室みたいだが、一気に攻めれば問題ないだろ。」

「これをどこで…!?」

サチが聞くと、数男は黙り込んでから言った。

「久坂のPCに届いていた、テオドールからのメールでだ。」

一同が驚く中、シュンと赤子だけは元気に部屋で遊んでいる。
サチは難しい顔をした。

「テオドールは味方なんでしょうか?それとも敵…?」

「知らん。だが今はここだけが頼りだ。
何があったとしても、もしかしたら手がかりがあるかもしれない。」

そこに守が顔を出してニコリ。

「スパイミッションだね!」

「遊びじゃないんだぞ。」

数男は呆れて言うので、守はクスクスと笑った。
サチは携帯を出す。

「じゃあ早速九重先輩に連絡しておきますね。」

「そうしてくれ、アイツもミンスを殺すのには大賛成だろうし。」

数男はそう言ったが、とある事に気づく。

「そう言えば、陽の下院に人気が全くないみたいなんだが。
あの姉妹死んでないよな?」

それを聞いた三笠は反応。
サチは思わず三笠の方を見ると、三笠は微笑んだ。

「両親の元に避難したんじゃない?二人の親、一応いいトコの人だからさ。」

「そうですか。」

「にしても連絡無しとはな…」

数男が言うと、三笠は黙り込む。
三笠は手に持っている携帯を開いた。
そこには秋菜からのメールが。

『私とハジメは、秋田宇宙生物研究所に暫く身を置きます。
皆様にはそれがバレぬよう…口裏を合わせて欲しいですわ。
それと、もし時間があったなら…一度でもいいから帝汰さんに逢いたいです。』

三笠はそのメールを、じっと眺めていた。
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