植物人間の子

うてな

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第5章 大絶滅―グレートダイイング―

184 その手を繋ぐため

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城下町の者が植物人間になり混乱が起こっている最中、クロマはだいぶ落ち着いたのか城下町まで遊びに出た。
久々に少年達と遊ぼうと考えていたのだが、いつもの集合場所には知らない女性の姿しかなかった。
女性はクロマを見ると顔を引きつる。

「あなたが殺したのね…!」

クロマは何の事かさっぱりだった。
女性は憎悪の表情を浮かべ、距離を詰めてくる。

「あなたがいつも欺いてきた男の子!全員あなたが殺したんでしょ!残酷な遊びまで覚えさせて!!」

「私は知らん!何かの間違いだ!」

「私の息子をよくも…!この王子に似てるだけの化け物…!偽物ッ!」

女性はそう言って、首を絞めてきた。
クロマは苦しんでいると、なぜか逆に女性が苦しみ出す。
女性はやがて、体から植物を生やす。
クロマは驚いて女性を見つめていると、女性はそのまま植物に飲まれて動く事がなくなった。

クロマは只事ではないと思って王宮に帰ろうと走り出すと、次々に町の者が武器を持って襲いかかってきた。
仲が良かったあの人も逃げ隠れ、見て見ぬふりをされる。

「王の命令だー!クロマを殺せ!!」

「妻と子を返せ!」

「お前がいなければ国もこうならなかった!」

「消えろ、裏切り者っ!」

町の人々は怒りに狂ったり、恐怖に怯えて窓もバッタリと閉めてしまう。
クロマは心当たりがないため半分腹を立てながらも王宮に帰ると、玄関先にはミンスがいた。

「ママ!」

クロマがミンスに飛びつくと、ミンスはクロマを心配して言う。

「外に出たのですか?いけません危険なのに。」

「町の人が…私を襲ってきた…」

クロマが言うと、ミンスは怒りの表情をあらわにする。
そこにやってきたテオドールに、ミンスは言った。

「テオドール!…貴方の仕業ですね?町の者に事実を話したのは。」

「そうだけど。こっちは国民の命がかかってる。」

「父上がやったのか?」

クロマが聞くと、ミンスはクロマを撫でて言った。

「クロマを襲うように指示したのです。
…実はですね、クロマは魔法の力で生きているのですよ?」

「魔法…?」

クロマが言うと、ミンスは頷いた。

「それをかけるには人間の命が必要なのです。
わたくしが人間の命を犠牲にクロマを生かしている、だから人間は私達を恨むのです。」

「人間…?私は人間じゃない…?」

「そうです、別物なのです。」

クロマは不思議に思ったのか目を丸くする。

「なぜ今まで仲良くしてきた者も私を恨むのだ?」

「人間ではないからです、害のある生物だと知れば平気で裏切るものなのですよ人間は。
嫌われているのです、わたくし達。」

クロマは呆然とすると、路地で虫を殺してきた仲間を思い出す。

「私達は人間にとって害虫?」

「ええ…」

「私達にとって人間は…?」

それを聞くと、ミンスはクロマの目を見てから目を逸らす。

「クロマのご自由に。」

するとクロマは確信したのか、真面目な表情になった。
ミンスはクロマを抱きしめて言う。

「わたくし、クロマの為に全霊をかけます。クロマを傷つけた者全員…許すわけにはなりません…!」

するとクロマもミンスを強く抱きしめる。

「私も、ママの為に全てをかける。」

それを見てテオドールは深く溜息をついた。
ミンスはクロマに微笑む。

「ありがとうございます…クロマ。」

ミンスの笑みに、クロマは真摯に頷く。
これが、クロマが人間さえも平気で葬る理由であった。――





クロマは言った。

「害のある者は殺す。ミンスこそ善で、逆らう者が悪だ。
間違っているか?」

ミンスはクロマを少々恐れたのか、呆然と見つめながらも呟く。

「あら…そうでしたか…」

それからミンスは優しく微笑んだ。

「クロマが私に全てをかけてくれる理由がわかりました。そして、その残虐性の理由も…。」

ミンスが言うと、クロマは「そうか。」と答えた。
それからクロマはミンスの顔色を伺う。

「…嫌いか?」

ミンスは首を横に振った。

「いいえ。わたくし、やはり大事にされているのだと感じて嬉しいのです。
大好きですよ、クロマ。」

「だからあの男の事は忘れろ。」

クロマが言うと、ミンスは眉を困らせながらも言った。

「ええ、頑張りますよ。クロマの愛が伝わりましたから。」

クロマは『愛』と聞くと実感が沸かないのか首を傾げる。
しかしすぐに言う。

「わかったのなら、早く行くぞ。」

そう言って先に進み始める。

「イーナァ…」

ミィシェルは夢を見るように空を見上げた。
ミンスはクスクスと笑う。

「うふふ、羨ましいでしょう?」

そう言って、ミンスはクロマを追いかける。
そしてミィシェルも嬉しそうにして二人を追いかけるのであった。
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