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58 ハス:救済
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数日後の朝、ニコライは朝食を終えるとレギーナの元にやってくる。
そしてレギーナのお腹を見て言った。
「あかちゃん!」
「またコイツ…」
レギーナは不機嫌な顔でそう呟くと、ニコライは言う。
「あかちゃん!…なく?」
ニコライは首を傾げてそう言うので、レギーナは言った。
「当たり前でしょ!」
するとニコライはレギーナのお腹に近寄り、お腹を撫でる。
「よしよし!」
ニコライは赤ちゃんを宥めているつもりなのか、そう言った。
レギーナは眉を潜めると、通りかかったパーヴェルは口をへの字に曲げる。
「コイツ、最近人の真似事ばっかやるな。
特に、最近子供を産んだ奥さんの真似。」
するとニコライは自分のお腹を撫でた。
「あかちゃん」
それを聞いてパーヴェルは目を細めて声を低くする。
「お前にはいねーよ。」
ニコライはそれを聞いて黙ると、レギーナを見た。
「あかちゃん!よしよし、して!」
「ハァ!?しないわよッ!」
レギーナはそう言うと、ニコライは怒った顔を見せる。
そして「じゃあ自分が撫でる」と言わんばかりにレギーナのお腹に集った。
「くっそぉ…」
レギーナは腹が立ったのか、ニコライの手を振り払って立ち去る。
ニコライは手を振り払われると、パーヴェルの様に口をへの字に曲げて黙り込んだ。
そしてずっと黙るので、パーヴェルは聞く。
「大丈夫か?お前。」
するとニコライは急に歌いだした。
「おーはな おーはな さーいた さーいた
くーるる ひーらら」
踊りながら歌うので、パーヴェルは思い出したかのような顔をして言う。
「そう言えば今日だったな、保育園の発表会。
ったく…旅立ちの日が近いってのに行事とは…」
================
教会の裏では、ガリーナとワレリーが保育園の発表会を見に行く準備をしていた。
先日ニコライが摘んで来たヒマワリは花瓶に入れており、ガリーナはその水の入替えをしている。
ワレリーは変装を終えると、ガリーナに聞いた。
「そう言えば、旅立ちの日が近いですね。
ガリーナ、心は決まりましたか?」
それを聞くと、ガリーナは顔を引き攣った。
「実は…あんまり…。
自分の事とか、考えるの苦手で…」
ワレリーはそれに微笑むと、不自然なほど距離を詰めてくる。
ガリーナは顔を赤くすると、ワレリーは言った。
「私を好きになってしまえばいいのに。」
ガリーナは頬を膨らませる。
「またそれですか。」
「そうです。」
ワレリーはそう言うと、一歩下がってから眉を困らせた。
「旅立ちが近いのにあなただけ、決心がついていない様子ですね。」
ガリーナはそれに困ってしまうと、ワレリーは言う。
「『自分の事を考えろ』と言われて、自己中心的に考えてみようとするのはやめなさい。
あなたは元々、自分を中心として考えるのが苦手な人間なのでしょう。
…己が考える、望む道を考えればいいのです。」
「己の…望む道…」
ガリーナが呟くと、ワレリーは頷いた。
「私はそうしてます。
自分の事と言われると頭がこんがらがるので、好きか嫌いで考えるのは苦手なのです。
…だから私がしたい、そう思う事をしているのです。」
ガリーナは目を丸くしてワレリーを見つめると、ワレリーは部屋を出て言う。
「さあ、行きましょう。発表会が始まってしまいますよ。」
それを聞くと、ぼーっとしていたガリーナは慌てて準備を始めた。
「あ、はい!」
===
二人は保育園までやってくると、保育園の子供の親が数人集まっていた。
元々狭い上に子供の人数が少ないこの村。
その為来ている親の数は少なく、その親族や楽しみに来てくれた村人達が多く集まった。
「意外と混んでますね…」
ワレリーはそう言うと、ガリーナは笑う。
「楽しみ!ニコライはこんな大勢の前で踊るんだよ!」
ガリーナの笑顔を見ると、ワレリーは微笑んだ。
「そうですね。」
そして、ニコライは近所の赤ちゃんと遊んでおり、赤ちゃんの頭を撫でていた。
「よしよし!」
母親はそんなニコライを微笑ましく見ていると、ニコライは保育園の先生に連行される。
そう、発表が始まるのだ。
ちなみに保育園にはパーヴェルも来ており、子供達が位置に立つのを見ていた。
三歳から六歳までの子供達がぱらぱらと並ぶ。
ニコライは自分の場所に立つと、ふと空を見上げる。
空は厚い雲に覆われており、今でも雨が降りそうだった。
「は~いみんな準備して~」
保育園の先生の声がかかると、子供達は一斉に頭に両手を当てる。
これは、踊りの最初のポーズ。
しかしニコライは何もしないので、ガリーナは困った顔をした。
ワレリーはそれでも黙って見ており、パーヴェルに関しては呆れて溜息をついている。
保育園の先生は、ニコライが何もしていないのを気にしていた。
しかし他の子供達が合図を待っていたので、歌い始める。
「せーの!」
その掛け声と共に、子供達は元気な声をあげて歌いだした。
『おーはな! おーはな! さーいた! さーいた!』
しかし、ニコライは踊らないどころかキョロキョロし始める。
まるで、誰かを探しているように。
ガリーナは悲しそうな顔をすると、思わず近くにいたワレリーの服を掴んでしまう。
(ニコライ…やっぱりダメだったのかな…)
ワレリーはガリーナの表情を見ると、黙って肩に手を回すのであった。
ニコライの様子を見ていたパーヴェルは、ふと天候を気にする。
「もしや…」
『くーるる! ひーらら! はーなーびーらーがーまーうー!』
子供達が歌っていると、ニコライはガリーナを発見。
ガリーナは泣きそうになっていた。
するとニコライは発表の途中なのにも関わらず、ガリーナに向かって走った。
「マーマー!」
「ニコライ…!」
ガリーナがそう言って涙を一滴流すと、空に閃光が走る。
一同は驚くと、ガリーナは閃光に驚いてワレリーに飛びついた。
「いや!」
すると、閃光の後にゴロゴロと音が鳴る。
そう、雷が落ちてきたのだ。
ニコライはガリーナに飛びつくと、ガリーナの腕を引っ張って園内に向かおうとする。
「マーマ!こっち!」
ニコライは真摯な顔をしていて、どうやらいち早く雷に気づいてガリーナを救いに来た様子だった。
ワレリーはそれを見ると呟く。
「ニコライ…あなた、ガリーナに知らせる為に…」
しかし、ガリーナは雷が怖い為に怯んでいた。
ニコライはガリーナの手を引っ張るが、ガリーナは動かない。
ワレリーも真面目な顔を見せると、ガリーナをお姫様抱っこする。
「きゃ…!ワレリーさん…!」
ガリーナが驚くと、ワレリーは言った。
「お礼はニコライに言ってくださいね。」
ワレリーは園内に走ると、ニコライもついてくる。
すると悪天候で大雨が降り始めるので、パーヴェルは空を見上げて眉を潜めた。
「あっちゃ~…やっぱ雷雨か。」
パーヴェルはガリーナを連れて園内に入る二人を見て、次に急な事態に狼狽える住人を見る。
パーヴェルは深く目を閉じた。
(こういう時なら兄様は…)
パーヴェルは保育園の建物を見るが、この建物では小さすぎると感じる。
そして近くに有る学校を見ると、村人に指示を出した。
「皆さん!発表会は一時中断です!風邪を引かれては困ります、学校に避難を!」
その指示に従い、村人達は子供を連れて学校の方へと避難した。
保育園に雨宿りをした三人は、雷の音を聞いていた。
叩きつける様な雨の中、辺り一面が白光り、壊れそうな大きな音を立てて雷は落ちる。
ガリーナは大泣きしてワレリーにしがみつき、ニコライはガリーナを撫でている。
「よしよし!」
ニコライの声は、雨音で半分かき消されていた。
ガリーナは泣き止まない。
ワレリーはガリーナをそっと抱きしめると、耳元で優しく言った。
「大丈夫。ここには私も、ニコライもいますよ。」
そう言ってワレリーはニコライの視線までしゃがむと、ニコライを片腕で抱く。
再びガリーナを抱きしめると、ガリーナはニコライに気づいた。
ニコライはガリーナを撫でる。
「よしよし!」
今度は聞こえたのか、ガリーナはニコライに微笑むと言った。
「ありがとう…ニコライ…!」
すると近くで雷が光り、音が鳴る。
ガリーナは怖くて、ワレリーにしがみついた。
ワレリーは優しく撫でてやると、ガリーナはまた落ち着きを取り戻す。
ニコライはガリーナを見て、ワレリーに聞いた。
「パーパ。マーマ、あかちゃん?」
「え?」
ワレリーはそう言ってしまうと、ニコライは続ける。
「なく?」
それを聞くと、ワレリーはガリーナを見て言った。
「泣いてますね。」
するとニコライは再びガリーナに手を伸ばして、優しく頭を撫でる。
「よしよし」
それを見たワレリーは、微笑んでニコライに便乗。
「よしよし。」
二人でガリーナを撫でてあげると、そこに颯爽とパーヴェルがやってきてガリーナの頭を撫でた。
「よしよしガリーナ!」
それにワレリーやニコライだけでなく、ガリーナも驚いて顔を上げる。
三人の驚き顔を見ると、パーヴェルは実に愉快そうに笑った。
「驚くなって!
ほら!通り雨だから今は雨だけになったぜ?」
空を見ると、確かに雨は弱まっていた。
雷の音も遠くなっている。
ガリーナは安心すると、パーヴェルは続ける。
「でも発表会は中止だってよ。
続きは来週。…兄様達が旅立った後だ。」
それを聞くと、ガリーナは視線を落とす。
ワレリーはパーヴェルを見ると言った。
「そう言えばさっきの指示、上出来でしたよ。」
「でしょでしょ兄様!俺、もっと精進しますから!」
パーヴェルの笑顔に、ワレリーも微笑みで返す。
パーヴェルの調子に乗った笑い声が保育園内に響くと、ガリーナは急に真面目な顔になって話した。
「ねえ、海外に行く話なんだけど…」
パーヴェルとワレリーはガリーナに注目すると、ガリーナは深呼吸してから答えた。
そしてレギーナのお腹を見て言った。
「あかちゃん!」
「またコイツ…」
レギーナは不機嫌な顔でそう呟くと、ニコライは言う。
「あかちゃん!…なく?」
ニコライは首を傾げてそう言うので、レギーナは言った。
「当たり前でしょ!」
するとニコライはレギーナのお腹に近寄り、お腹を撫でる。
「よしよし!」
ニコライは赤ちゃんを宥めているつもりなのか、そう言った。
レギーナは眉を潜めると、通りかかったパーヴェルは口をへの字に曲げる。
「コイツ、最近人の真似事ばっかやるな。
特に、最近子供を産んだ奥さんの真似。」
するとニコライは自分のお腹を撫でた。
「あかちゃん」
それを聞いてパーヴェルは目を細めて声を低くする。
「お前にはいねーよ。」
ニコライはそれを聞いて黙ると、レギーナを見た。
「あかちゃん!よしよし、して!」
「ハァ!?しないわよッ!」
レギーナはそう言うと、ニコライは怒った顔を見せる。
そして「じゃあ自分が撫でる」と言わんばかりにレギーナのお腹に集った。
「くっそぉ…」
レギーナは腹が立ったのか、ニコライの手を振り払って立ち去る。
ニコライは手を振り払われると、パーヴェルの様に口をへの字に曲げて黙り込んだ。
そしてずっと黙るので、パーヴェルは聞く。
「大丈夫か?お前。」
するとニコライは急に歌いだした。
「おーはな おーはな さーいた さーいた
くーるる ひーらら」
踊りながら歌うので、パーヴェルは思い出したかのような顔をして言う。
「そう言えば今日だったな、保育園の発表会。
ったく…旅立ちの日が近いってのに行事とは…」
================
教会の裏では、ガリーナとワレリーが保育園の発表会を見に行く準備をしていた。
先日ニコライが摘んで来たヒマワリは花瓶に入れており、ガリーナはその水の入替えをしている。
ワレリーは変装を終えると、ガリーナに聞いた。
「そう言えば、旅立ちの日が近いですね。
ガリーナ、心は決まりましたか?」
それを聞くと、ガリーナは顔を引き攣った。
「実は…あんまり…。
自分の事とか、考えるの苦手で…」
ワレリーはそれに微笑むと、不自然なほど距離を詰めてくる。
ガリーナは顔を赤くすると、ワレリーは言った。
「私を好きになってしまえばいいのに。」
ガリーナは頬を膨らませる。
「またそれですか。」
「そうです。」
ワレリーはそう言うと、一歩下がってから眉を困らせた。
「旅立ちが近いのにあなただけ、決心がついていない様子ですね。」
ガリーナはそれに困ってしまうと、ワレリーは言う。
「『自分の事を考えろ』と言われて、自己中心的に考えてみようとするのはやめなさい。
あなたは元々、自分を中心として考えるのが苦手な人間なのでしょう。
…己が考える、望む道を考えればいいのです。」
「己の…望む道…」
ガリーナが呟くと、ワレリーは頷いた。
「私はそうしてます。
自分の事と言われると頭がこんがらがるので、好きか嫌いで考えるのは苦手なのです。
…だから私がしたい、そう思う事をしているのです。」
ガリーナは目を丸くしてワレリーを見つめると、ワレリーは部屋を出て言う。
「さあ、行きましょう。発表会が始まってしまいますよ。」
それを聞くと、ぼーっとしていたガリーナは慌てて準備を始めた。
「あ、はい!」
===
二人は保育園までやってくると、保育園の子供の親が数人集まっていた。
元々狭い上に子供の人数が少ないこの村。
その為来ている親の数は少なく、その親族や楽しみに来てくれた村人達が多く集まった。
「意外と混んでますね…」
ワレリーはそう言うと、ガリーナは笑う。
「楽しみ!ニコライはこんな大勢の前で踊るんだよ!」
ガリーナの笑顔を見ると、ワレリーは微笑んだ。
「そうですね。」
そして、ニコライは近所の赤ちゃんと遊んでおり、赤ちゃんの頭を撫でていた。
「よしよし!」
母親はそんなニコライを微笑ましく見ていると、ニコライは保育園の先生に連行される。
そう、発表が始まるのだ。
ちなみに保育園にはパーヴェルも来ており、子供達が位置に立つのを見ていた。
三歳から六歳までの子供達がぱらぱらと並ぶ。
ニコライは自分の場所に立つと、ふと空を見上げる。
空は厚い雲に覆われており、今でも雨が降りそうだった。
「は~いみんな準備して~」
保育園の先生の声がかかると、子供達は一斉に頭に両手を当てる。
これは、踊りの最初のポーズ。
しかしニコライは何もしないので、ガリーナは困った顔をした。
ワレリーはそれでも黙って見ており、パーヴェルに関しては呆れて溜息をついている。
保育園の先生は、ニコライが何もしていないのを気にしていた。
しかし他の子供達が合図を待っていたので、歌い始める。
「せーの!」
その掛け声と共に、子供達は元気な声をあげて歌いだした。
『おーはな! おーはな! さーいた! さーいた!』
しかし、ニコライは踊らないどころかキョロキョロし始める。
まるで、誰かを探しているように。
ガリーナは悲しそうな顔をすると、思わず近くにいたワレリーの服を掴んでしまう。
(ニコライ…やっぱりダメだったのかな…)
ワレリーはガリーナの表情を見ると、黙って肩に手を回すのであった。
ニコライの様子を見ていたパーヴェルは、ふと天候を気にする。
「もしや…」
『くーるる! ひーらら! はーなーびーらーがーまーうー!』
子供達が歌っていると、ニコライはガリーナを発見。
ガリーナは泣きそうになっていた。
するとニコライは発表の途中なのにも関わらず、ガリーナに向かって走った。
「マーマー!」
「ニコライ…!」
ガリーナがそう言って涙を一滴流すと、空に閃光が走る。
一同は驚くと、ガリーナは閃光に驚いてワレリーに飛びついた。
「いや!」
すると、閃光の後にゴロゴロと音が鳴る。
そう、雷が落ちてきたのだ。
ニコライはガリーナに飛びつくと、ガリーナの腕を引っ張って園内に向かおうとする。
「マーマ!こっち!」
ニコライは真摯な顔をしていて、どうやらいち早く雷に気づいてガリーナを救いに来た様子だった。
ワレリーはそれを見ると呟く。
「ニコライ…あなた、ガリーナに知らせる為に…」
しかし、ガリーナは雷が怖い為に怯んでいた。
ニコライはガリーナの手を引っ張るが、ガリーナは動かない。
ワレリーも真面目な顔を見せると、ガリーナをお姫様抱っこする。
「きゃ…!ワレリーさん…!」
ガリーナが驚くと、ワレリーは言った。
「お礼はニコライに言ってくださいね。」
ワレリーは園内に走ると、ニコライもついてくる。
すると悪天候で大雨が降り始めるので、パーヴェルは空を見上げて眉を潜めた。
「あっちゃ~…やっぱ雷雨か。」
パーヴェルはガリーナを連れて園内に入る二人を見て、次に急な事態に狼狽える住人を見る。
パーヴェルは深く目を閉じた。
(こういう時なら兄様は…)
パーヴェルは保育園の建物を見るが、この建物では小さすぎると感じる。
そして近くに有る学校を見ると、村人に指示を出した。
「皆さん!発表会は一時中断です!風邪を引かれては困ります、学校に避難を!」
その指示に従い、村人達は子供を連れて学校の方へと避難した。
保育園に雨宿りをした三人は、雷の音を聞いていた。
叩きつける様な雨の中、辺り一面が白光り、壊れそうな大きな音を立てて雷は落ちる。
ガリーナは大泣きしてワレリーにしがみつき、ニコライはガリーナを撫でている。
「よしよし!」
ニコライの声は、雨音で半分かき消されていた。
ガリーナは泣き止まない。
ワレリーはガリーナをそっと抱きしめると、耳元で優しく言った。
「大丈夫。ここには私も、ニコライもいますよ。」
そう言ってワレリーはニコライの視線までしゃがむと、ニコライを片腕で抱く。
再びガリーナを抱きしめると、ガリーナはニコライに気づいた。
ニコライはガリーナを撫でる。
「よしよし!」
今度は聞こえたのか、ガリーナはニコライに微笑むと言った。
「ありがとう…ニコライ…!」
すると近くで雷が光り、音が鳴る。
ガリーナは怖くて、ワレリーにしがみついた。
ワレリーは優しく撫でてやると、ガリーナはまた落ち着きを取り戻す。
ニコライはガリーナを見て、ワレリーに聞いた。
「パーパ。マーマ、あかちゃん?」
「え?」
ワレリーはそう言ってしまうと、ニコライは続ける。
「なく?」
それを聞くと、ワレリーはガリーナを見て言った。
「泣いてますね。」
するとニコライは再びガリーナに手を伸ばして、優しく頭を撫でる。
「よしよし」
それを見たワレリーは、微笑んでニコライに便乗。
「よしよし。」
二人でガリーナを撫でてあげると、そこに颯爽とパーヴェルがやってきてガリーナの頭を撫でた。
「よしよしガリーナ!」
それにワレリーやニコライだけでなく、ガリーナも驚いて顔を上げる。
三人の驚き顔を見ると、パーヴェルは実に愉快そうに笑った。
「驚くなって!
ほら!通り雨だから今は雨だけになったぜ?」
空を見ると、確かに雨は弱まっていた。
雷の音も遠くなっている。
ガリーナは安心すると、パーヴェルは続ける。
「でも発表会は中止だってよ。
続きは来週。…兄様達が旅立った後だ。」
それを聞くと、ガリーナは視線を落とす。
ワレリーはパーヴェルを見ると言った。
「そう言えばさっきの指示、上出来でしたよ。」
「でしょでしょ兄様!俺、もっと精進しますから!」
パーヴェルの笑顔に、ワレリーも微笑みで返す。
パーヴェルの調子に乗った笑い声が保育園内に響くと、ガリーナは急に真面目な顔になって話した。
「ねえ、海外に行く話なんだけど…」
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