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25日
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雪が沢山積もった外、子供達ははしゃいで駆けていく。十二月の半ばになったこの田舎町では、ある子供の団体が退屈そうに町の向こうの山を見つめていた。九歳から十四歳ほどまでの年齢の子供達の集団だ。
「ソリで遊ぼう?」と言ったのは九歳のマイケル。この少年はクリスマスプレゼントでソリを貰ったらしく、今すぐそのソリで遊びたいようなのだ。しかし周囲の者でソリを持っている子供も多く、既に今年は遊び飽きた様子で全く乗ってはくれなかった。
そこで子供達の中で一番の最年長である子が提案をする。
「ねえ!そう言えばさ!魔女の山って知ってる?俺そこに行ってみたいよ!真冬はソリ滑りに絶好なんだってさ!」
マイケルはそれを聞いて笑顔を見せると、すぐに別の子供が言った。
「知ってるよぉ、でもあそこにいる魔女は悪い魔女なんだよ?さらわれちゃうんだって。」
「こわがってんの?楽しくていいじゃん!行こうよマイケル!ソリで遊べるんだぜ!」
と提案した子供に体を揺さぶられるマイケル、別の子供は「道に迷うからやめようよ。」と言うのだった。
どうしようかとマイケルは迷ったが、提案した子供に手を引かれてそのまま行く事になってしまった。歩きにくい雪の上を五、六人で歩く。子供達はそのまま、町の外へと出て行ってしまったのだ。
子供達は魔女の山についたところで疲れて、休憩をとりたくなったようだ。
「さむい…おうちかえりたいよぉ…」と一緒に来た女の子が鼻をすすりながら言った。
「帰るのにも時間かかるよ。お前のせいだよ!」と別の子供は、山に行く提案をした子供に怒る。すると提案をした子供がソリを引いて山を登る。
「ねー!ここソリ滑りするなら最高じゃね!?噂の山だよ!きっと!」
すると周囲の顔色が一気に悪くなる。女の子は遂に泣き出してしまった。マイケルは黙ってみんなの顔色を見ていた。
「もう!どうしてくれるの!道に迷ったかも!」と別の子供が言うと、提案した子供はソリで滑り始めた。他の子供達は、その子供の考えがよくわからないでいたが、その子供の楽しそうな姿に釣られてしまいそうになる。
「はは!楽しいぜ!みんなも一緒にやろー!」
他の子供達は黙って顔を見合わせ、その子供と共にソリで遊ぼうとする。マイケルも行こうとしたが、マイケルのソリは悲しい事に他の子供に横取りされてしまった。
「それぼくの…!」とマイケルは言うが、子供達は次々とソリ滑りに夢中になってしまう。マイケルは聞いてくれないとなると腹が立ったが、それと同時にどうでもよくなってくる。マイケルは周りの木々を見た。見慣れない場所、無駄に広いこの坂道は、逆にマイケルの遊ぶ気を引かせていた。
暫く経っても子供達のキャッキャッと喜ぶ声が聞こえてくる。子供達は雪にまみれながら、雪に突っ込んだり転んだりしながらもソリ滑りを楽しんでいた。
その様子をつまらなそうに見つめながらも、「『ソリなんて飽きた』って言ってたくせに…。もう早く帰りたいよ…」とマイケルが寂しく呟いた。寒さに耐えながらも冷えきった指先を温めるためにポケットに手を入れるマイケル。一人で帰るのもナンなので、子供達が飽きるのを待つことにした。
チリンチリン…
と、突如鈴のような優しい音が鳴る。
「なにこれ…」とマイケルは呟いたが、遊んでいる子供達はソリに夢中で気にならなかったようだ。
そして気のせいか、子供達の体が小さくなっている気がした。皆マイケルと同じくらいの体になっており、マイケル自身も少しだが小さくなっていた。まるで年を遡ったように小さな子供になってしまったのだ。
更に眠気に襲われたマイケルは、そのまま眠りそうになる。
ふとマイケルは、『雪の中で眠ってしまうと、天使が迎えに来る』という親からの教えを思い出した。『だからあまり遠くには行かず、すぐにお家に帰ってくるんだよ』と、毎度のように言われている事を思い出したのだ。
「ママ…パパ…」とマイケルは呟き、眠らないようにと目をこすった。しかし、ソリ滑りに夢中になっていた子供達も大人しく眠ってしまったのを見て、マイケルも釣られて目を閉じてしまうのであった。
マイケルが目を覚ますと家の中にいたようで、暖炉の火で冷えた体が十分に温まっていた。暖炉の火の上には大きな鍋がグツグツと何かを煮込んでいるようで、トウモロコシの良い香りが鍋の中身をコーンスープである事を知覚させる。部屋の飾りはクリスマス、派手に飾られたツリーにいくつものリース、サンタの人形までも飾ってあった。
そこで、マイケルは暖炉の近くで料理の下ごしらえをしている女性を発見。綺麗な黄色い髪、可愛らしいピンク色のカチューシャをかけた少女と思わせる服装をした女性であった。
マイケルは女性に話しかけようとすると、部屋の窓に大人の手のひらサイズくらいのベルが飾ってあるのを見つける。ただ飾っているだけのそのベルからは、眠気に襲われた時と同じ音が不思議な事にずっと鳴っていた。マイケルはそのベルを不思議そうに見つめていると、その女性がマイケルに気づいた。
「あら、起きたのね。」
優しい声にマイケルは女性に振り向き、思わず「あの、僕の友達は…」と聞く。すると女性は微笑んだ。なんだかその微笑みがおぞましく感じたマイケルは周囲を見渡してみる。すると、玄関と思わしきたった一つの扉の前には無数の上着が転がっていた。それは確かにマイケルの友達のもので、マイケルはみんなもここで温まっているのだと思うと少し安心したのだ。
しかし、マイケルは異変を感じた。
上着の中には下着なども混ざっており、これではみんな裸という事になる。更にはこの家には扉が一つしかない。つまり出入口しかないこの家のどこに他の子供達がいるのだろうと、不思議に思ったのであった。女性はクスクス笑うとマイケルに言った。
「安心してマイケル、お友達は光の輪になったのよ。」
「ひかりの…わ…?」とマイケルは呆然とする。女性は頷くと軽くマイケルを抱きしめた。彼女の右手には大きな包丁、その包丁からは鮮血が垂れていた。マイケルは怖くて震えると、女性は優しい声でマイケルに言う。
「お外でうるさくしてたから食べちゃった。」
マイケルは「いっ」と声を裏返して恐怖を感じると、「でもマイケルはずっと静かにしてたもんね。」と女性は囁いてから暖炉へ向かった。マイケルが恐怖で部屋の隅で縮こまっていると、女性は鍋のコーンスープを皿に盛り付けてマイケルの前まで来た。
「食べる?」
しかしマイケルは首を横に振り、目に涙を浮かべながらも食事を拒否した。
「あら、そう。好きな時に食べていいからね。私、ちょっと薪を持ってくるわ。」と女性は言うと、たった一つしかないその扉から出て行ってしまう。外は吹雪のようで、雪が室内にも入ってきた。温かい部屋に入ってきた急な冷気にマイケルは、両親の事をふと思い出してしまう。
(外…もう真っ暗だったな…パパもママも僕の事探してる…)
マイケルは流れる涙をコントロールできないでいると、「泣くなよ!」とどこからか声が聞こえた。聞こえているベルの音が皿に強くなると、マイケルはベルを見つめた。
するとベルの前から、今の自分と同じくらいの歳の少年が淡い光を放ちながら現れたのだ。
「え…お化け…!?」とマイケルが怯えると、少年はマイケルに近づいて言った。
「俺ピック。生き残ったお前に折り入って頼みがある。」
「え?急に何…?」とマイケルが涙を拭きながら言うと、少年ピックは言う。
「お前の言った通り!俺はもう死んでるけど!頼みがあるんだよ!大事な!」
マイケルはピックを見て恐怖のひと欠片も感じないので、黙って話を聞く事に。
「俺もお前達みたいに山に来て、子供の姿になった。それもこれも全部、今出て行った魔女ベリーのせいなんだ。」
「ベリーさんって言うんだ…」とマイケルが呟くと、ピックは溜息をついてから続けた。
「俺、この山のふもと辺りで死んだ少年の霊に会った。」
それを聞いてマイケルはピックを見る。ピックは怒りながら「俺もだけどその時は生きてたんだよ!」と言った。
「そんで、『一緒にベルを探して』って言われたんだ。俺達も複数人行動してたから、最初はみんなで流してた。でもベリーに囚われて、仲間が食われた時にこのベルを見つけた。だからそのベルを持って、再びふもとに向かおうとしたんだけど…」
マイケルは嫌な予感を感じていると、ピックは「ベリーに殺された。アイツ、頭がおかしい。」と言うと、マイケルはピックに質問をした。
「ベルをどうするのかな…」
「知らね。」とピックが言うと、ピックは何かに気づいたようで淡い光を放って姿を消してしまった。
「ピック!」とマイケルが言ったが遅く、すぐにベリーが帰ってきた。マイケルはベリーを見て、また恐怖した顔をしてしまう。
「夢でも見たの?」とベリーが聞いたので、マイケルは黙って首を横に振るのであった。
「ソリで遊ぼう?」と言ったのは九歳のマイケル。この少年はクリスマスプレゼントでソリを貰ったらしく、今すぐそのソリで遊びたいようなのだ。しかし周囲の者でソリを持っている子供も多く、既に今年は遊び飽きた様子で全く乗ってはくれなかった。
そこで子供達の中で一番の最年長である子が提案をする。
「ねえ!そう言えばさ!魔女の山って知ってる?俺そこに行ってみたいよ!真冬はソリ滑りに絶好なんだってさ!」
マイケルはそれを聞いて笑顔を見せると、すぐに別の子供が言った。
「知ってるよぉ、でもあそこにいる魔女は悪い魔女なんだよ?さらわれちゃうんだって。」
「こわがってんの?楽しくていいじゃん!行こうよマイケル!ソリで遊べるんだぜ!」
と提案した子供に体を揺さぶられるマイケル、別の子供は「道に迷うからやめようよ。」と言うのだった。
どうしようかとマイケルは迷ったが、提案した子供に手を引かれてそのまま行く事になってしまった。歩きにくい雪の上を五、六人で歩く。子供達はそのまま、町の外へと出て行ってしまったのだ。
子供達は魔女の山についたところで疲れて、休憩をとりたくなったようだ。
「さむい…おうちかえりたいよぉ…」と一緒に来た女の子が鼻をすすりながら言った。
「帰るのにも時間かかるよ。お前のせいだよ!」と別の子供は、山に行く提案をした子供に怒る。すると提案をした子供がソリを引いて山を登る。
「ねー!ここソリ滑りするなら最高じゃね!?噂の山だよ!きっと!」
すると周囲の顔色が一気に悪くなる。女の子は遂に泣き出してしまった。マイケルは黙ってみんなの顔色を見ていた。
「もう!どうしてくれるの!道に迷ったかも!」と別の子供が言うと、提案した子供はソリで滑り始めた。他の子供達は、その子供の考えがよくわからないでいたが、その子供の楽しそうな姿に釣られてしまいそうになる。
「はは!楽しいぜ!みんなも一緒にやろー!」
他の子供達は黙って顔を見合わせ、その子供と共にソリで遊ぼうとする。マイケルも行こうとしたが、マイケルのソリは悲しい事に他の子供に横取りされてしまった。
「それぼくの…!」とマイケルは言うが、子供達は次々とソリ滑りに夢中になってしまう。マイケルは聞いてくれないとなると腹が立ったが、それと同時にどうでもよくなってくる。マイケルは周りの木々を見た。見慣れない場所、無駄に広いこの坂道は、逆にマイケルの遊ぶ気を引かせていた。
暫く経っても子供達のキャッキャッと喜ぶ声が聞こえてくる。子供達は雪にまみれながら、雪に突っ込んだり転んだりしながらもソリ滑りを楽しんでいた。
その様子をつまらなそうに見つめながらも、「『ソリなんて飽きた』って言ってたくせに…。もう早く帰りたいよ…」とマイケルが寂しく呟いた。寒さに耐えながらも冷えきった指先を温めるためにポケットに手を入れるマイケル。一人で帰るのもナンなので、子供達が飽きるのを待つことにした。
チリンチリン…
と、突如鈴のような優しい音が鳴る。
「なにこれ…」とマイケルは呟いたが、遊んでいる子供達はソリに夢中で気にならなかったようだ。
そして気のせいか、子供達の体が小さくなっている気がした。皆マイケルと同じくらいの体になっており、マイケル自身も少しだが小さくなっていた。まるで年を遡ったように小さな子供になってしまったのだ。
更に眠気に襲われたマイケルは、そのまま眠りそうになる。
ふとマイケルは、『雪の中で眠ってしまうと、天使が迎えに来る』という親からの教えを思い出した。『だからあまり遠くには行かず、すぐにお家に帰ってくるんだよ』と、毎度のように言われている事を思い出したのだ。
「ママ…パパ…」とマイケルは呟き、眠らないようにと目をこすった。しかし、ソリ滑りに夢中になっていた子供達も大人しく眠ってしまったのを見て、マイケルも釣られて目を閉じてしまうのであった。
マイケルが目を覚ますと家の中にいたようで、暖炉の火で冷えた体が十分に温まっていた。暖炉の火の上には大きな鍋がグツグツと何かを煮込んでいるようで、トウモロコシの良い香りが鍋の中身をコーンスープである事を知覚させる。部屋の飾りはクリスマス、派手に飾られたツリーにいくつものリース、サンタの人形までも飾ってあった。
そこで、マイケルは暖炉の近くで料理の下ごしらえをしている女性を発見。綺麗な黄色い髪、可愛らしいピンク色のカチューシャをかけた少女と思わせる服装をした女性であった。
マイケルは女性に話しかけようとすると、部屋の窓に大人の手のひらサイズくらいのベルが飾ってあるのを見つける。ただ飾っているだけのそのベルからは、眠気に襲われた時と同じ音が不思議な事にずっと鳴っていた。マイケルはそのベルを不思議そうに見つめていると、その女性がマイケルに気づいた。
「あら、起きたのね。」
優しい声にマイケルは女性に振り向き、思わず「あの、僕の友達は…」と聞く。すると女性は微笑んだ。なんだかその微笑みがおぞましく感じたマイケルは周囲を見渡してみる。すると、玄関と思わしきたった一つの扉の前には無数の上着が転がっていた。それは確かにマイケルの友達のもので、マイケルはみんなもここで温まっているのだと思うと少し安心したのだ。
しかし、マイケルは異変を感じた。
上着の中には下着なども混ざっており、これではみんな裸という事になる。更にはこの家には扉が一つしかない。つまり出入口しかないこの家のどこに他の子供達がいるのだろうと、不思議に思ったのであった。女性はクスクス笑うとマイケルに言った。
「安心してマイケル、お友達は光の輪になったのよ。」
「ひかりの…わ…?」とマイケルは呆然とする。女性は頷くと軽くマイケルを抱きしめた。彼女の右手には大きな包丁、その包丁からは鮮血が垂れていた。マイケルは怖くて震えると、女性は優しい声でマイケルに言う。
「お外でうるさくしてたから食べちゃった。」
マイケルは「いっ」と声を裏返して恐怖を感じると、「でもマイケルはずっと静かにしてたもんね。」と女性は囁いてから暖炉へ向かった。マイケルが恐怖で部屋の隅で縮こまっていると、女性は鍋のコーンスープを皿に盛り付けてマイケルの前まで来た。
「食べる?」
しかしマイケルは首を横に振り、目に涙を浮かべながらも食事を拒否した。
「あら、そう。好きな時に食べていいからね。私、ちょっと薪を持ってくるわ。」と女性は言うと、たった一つしかないその扉から出て行ってしまう。外は吹雪のようで、雪が室内にも入ってきた。温かい部屋に入ってきた急な冷気にマイケルは、両親の事をふと思い出してしまう。
(外…もう真っ暗だったな…パパもママも僕の事探してる…)
マイケルは流れる涙をコントロールできないでいると、「泣くなよ!」とどこからか声が聞こえた。聞こえているベルの音が皿に強くなると、マイケルはベルを見つめた。
するとベルの前から、今の自分と同じくらいの歳の少年が淡い光を放ちながら現れたのだ。
「え…お化け…!?」とマイケルが怯えると、少年はマイケルに近づいて言った。
「俺ピック。生き残ったお前に折り入って頼みがある。」
「え?急に何…?」とマイケルが涙を拭きながら言うと、少年ピックは言う。
「お前の言った通り!俺はもう死んでるけど!頼みがあるんだよ!大事な!」
マイケルはピックを見て恐怖のひと欠片も感じないので、黙って話を聞く事に。
「俺もお前達みたいに山に来て、子供の姿になった。それもこれも全部、今出て行った魔女ベリーのせいなんだ。」
「ベリーさんって言うんだ…」とマイケルが呟くと、ピックは溜息をついてから続けた。
「俺、この山のふもと辺りで死んだ少年の霊に会った。」
それを聞いてマイケルはピックを見る。ピックは怒りながら「俺もだけどその時は生きてたんだよ!」と言った。
「そんで、『一緒にベルを探して』って言われたんだ。俺達も複数人行動してたから、最初はみんなで流してた。でもベリーに囚われて、仲間が食われた時にこのベルを見つけた。だからそのベルを持って、再びふもとに向かおうとしたんだけど…」
マイケルは嫌な予感を感じていると、ピックは「ベリーに殺された。アイツ、頭がおかしい。」と言うと、マイケルはピックに質問をした。
「ベルをどうするのかな…」
「知らね。」とピックが言うと、ピックは何かに気づいたようで淡い光を放って姿を消してしまった。
「ピック!」とマイケルが言ったが遅く、すぐにベリーが帰ってきた。マイケルはベリーを見て、また恐怖した顔をしてしまう。
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