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31話「伝えたいこと」前編
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修学旅行から一週間が経ち、文化祭に向け俺たちは練習に練習を重ねていた。
指は皮が捲れてボロボロだし、毎日声が枯れるまでがむしゃらに歌っていた。
そして曲を合わせるごとにそれぞれのパートがまとまっていた。
それぞれが確かな感触を得られていた。
しかし、だ。 真柴から貰った曲、歌詞をつけることを委ねられた曲。
あれから一週間が経ったが、全く歌詞が思いつかないのだ。
これまた驚くほどに思いつかない。 決してサボっているわけではなくてやる気はある。 やる気はあるのだが、書いてはボツ。 書いてはボツを繰り返していた。
俺の伝えたい事。 日々感じている想い。 今までの想い。
特にこれといって熱中するものもなく日々を無為に浪費してきた28年間。
そしてタイムスリップによってやり直してきた三か月半。
どれをとっても確かに俺が積み重ねてきたことだ。
だからこそ……それを言葉にするのは難しい。
大した人生を送ってきたわけでもないし、俺は大した人間でもないが、それでも向き合おうと一週間必死に考えていた。
「ふーん、おじいちゃんが歌詞をねえ」
目の前には俺の孫、由夏が寝転びながら漫画を読んでいる。
「ぶっはははは」
「おい由夏。 今何故笑った」
「だっておじいちゃんが作詞って……ぶっはっはは」
由夏は漫画を読むのをやめ腹を抱えて笑った。
「おい、おじいちゃん泣いちゃうよ……?」
「ごめんごめん。 ぷっ……ま、まあいいんじゃない?」
「お前なあ」
「まあおじいちゃんだって色んな経験したわけだしさ。 伊達に28年生きてきたわけじゃないしさ。 普通の人じゃ経験できないことだって経験してるしさ。 もっと自分に自信持っていいんじゃない?」
「……さっきの俺のことをバカにしてた由夏はどこにいったんだ」
「失礼だなおじいちゃんは。 私だっていつだっておじいちゃんのことをバカにしてるわけじゃないんだよ。 ……ぷっ」
「おい、今何故笑った」
「ま、まあ頑張ってよおじいちゃん」
由夏は笑い終えたのかふと真面目な表情になりそしてまた笑顔になった。
「自分のことを幸せにできるのは自分なんだから」
「……由夏はたまにいいことを言うよな」
「たまにー? いつもでしょ」
「どうだかな」
「おじいちゃんのくせに生意気」
「孫のくせに生意気だな」
そう言って俺たちは笑いあった。
「じゃあまたねおじいちゃん」
「ああ、またな」
そう言って由夏は帰って行った。
*
歌詞が思いつかないモヤモヤを晴らすため、俺は近所の河原をひたすら走っていた。
河原を走ることにしたのは頭を動かしても何も浮かばなかったため、体を動かしたらもしかしたら思い浮かぶのではないかという淡い期待もあったからだ。
体を動かしたあとの疲労感は嫌いじゃなかった。
寧ろ好きだった。
疲労感というより縛られたあとの解放感が心地よくて好きだった。
といっても運動部じゃないんだけど。
河原には散歩をしている老夫婦や手を組み歩くカップル、仲良く友達と遊ぶ小学生の姿があった。
「あれ、淳一くんじゃないか」
走っている最中に誰かに話しかけられ声の主の方を見るとそこには相川の姿があった。
指は皮が捲れてボロボロだし、毎日声が枯れるまでがむしゃらに歌っていた。
そして曲を合わせるごとにそれぞれのパートがまとまっていた。
それぞれが確かな感触を得られていた。
しかし、だ。 真柴から貰った曲、歌詞をつけることを委ねられた曲。
あれから一週間が経ったが、全く歌詞が思いつかないのだ。
これまた驚くほどに思いつかない。 決してサボっているわけではなくてやる気はある。 やる気はあるのだが、書いてはボツ。 書いてはボツを繰り返していた。
俺の伝えたい事。 日々感じている想い。 今までの想い。
特にこれといって熱中するものもなく日々を無為に浪費してきた28年間。
そしてタイムスリップによってやり直してきた三か月半。
どれをとっても確かに俺が積み重ねてきたことだ。
だからこそ……それを言葉にするのは難しい。
大した人生を送ってきたわけでもないし、俺は大した人間でもないが、それでも向き合おうと一週間必死に考えていた。
「ふーん、おじいちゃんが歌詞をねえ」
目の前には俺の孫、由夏が寝転びながら漫画を読んでいる。
「ぶっはははは」
「おい由夏。 今何故笑った」
「だっておじいちゃんが作詞って……ぶっはっはは」
由夏は漫画を読むのをやめ腹を抱えて笑った。
「おい、おじいちゃん泣いちゃうよ……?」
「ごめんごめん。 ぷっ……ま、まあいいんじゃない?」
「お前なあ」
「まあおじいちゃんだって色んな経験したわけだしさ。 伊達に28年生きてきたわけじゃないしさ。 普通の人じゃ経験できないことだって経験してるしさ。 もっと自分に自信持っていいんじゃない?」
「……さっきの俺のことをバカにしてた由夏はどこにいったんだ」
「失礼だなおじいちゃんは。 私だっていつだっておじいちゃんのことをバカにしてるわけじゃないんだよ。 ……ぷっ」
「おい、今何故笑った」
「ま、まあ頑張ってよおじいちゃん」
由夏は笑い終えたのかふと真面目な表情になりそしてまた笑顔になった。
「自分のことを幸せにできるのは自分なんだから」
「……由夏はたまにいいことを言うよな」
「たまにー? いつもでしょ」
「どうだかな」
「おじいちゃんのくせに生意気」
「孫のくせに生意気だな」
そう言って俺たちは笑いあった。
「じゃあまたねおじいちゃん」
「ああ、またな」
そう言って由夏は帰って行った。
*
歌詞が思いつかないモヤモヤを晴らすため、俺は近所の河原をひたすら走っていた。
河原を走ることにしたのは頭を動かしても何も浮かばなかったため、体を動かしたらもしかしたら思い浮かぶのではないかという淡い期待もあったからだ。
体を動かしたあとの疲労感は嫌いじゃなかった。
寧ろ好きだった。
疲労感というより縛られたあとの解放感が心地よくて好きだった。
といっても運動部じゃないんだけど。
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