50 / 54
30話「修学旅行」後編その3
しおりを挟む
唯と自由行動を共にした2日目の夜、ホテルにある大浴場で入浴を済ませた俺は一人、今日の出来事を思い返していた。
近いようで遠い幼馴染。 生まれた時から何もするにも一緒で、でも今まで交わることがなかった関係。 それでも。 一歩、前に進んだんじゃないか? 右手の薬指を見るとそこには唯から貰ったおもちゃの指輪がはめられている。 自分の右手を見るたびに思わずニヤけてしまう。
これからだってきっとそんな思い出ができるはずだ。 あれ……でも俺結局唯への気持ち、言葉にして伝えてないぞ……
そんなことを考えていると携帯の着信音が鳴り出した。
「もしもし、どうした真柴」
「……淳一くん助けて……」
「は? どうしたんだよ真柴」
「……お願い……今すぐ部屋に来て」
真柴はそう一方的に告げ通話を切った。
これはただごとじゃないと思い、俺は真柴が泊まっている部屋へと向かった。
︎*
真柴が泊まっている部屋のドアをノックすると、すぐに真柴の「どうぞ」という声が返ってきた。 俺はそれを確認し、ドアを開けた。
すると、ドアを開けた途端、パアッンとクラッカーの破裂音が耳に響いた。
その音に驚き一瞬目を瞑り、再び目を開けるとそこには真柴と石田が立っていた。
「淳一くんお誕生日おめでとう!」
「淳一おめでとう今年で何歳になったんだ? って何泣いてんだよ?」
石田にそう言われ目元に触れてみると確かに俺は涙を流していた。 ああ、そうか俺は今心の底から嬉しいんだろうな。 この11年家族以外の人に誕生日を祝われることなんてなかった気がする。
「淳一ちゃん泣いちゃってるんでちゅか~?」
「うるせえ、泣いてねえよ」
「本当かなぁ~」
「本当だ。 ……ありがとなお前ら」
「おうよ」
「いえいえ」
真柴と石田はそう言って満面の笑みを見せた。 こいつらの笑顔を見ていると俺も自然と笑顔になってしまう。 こいつら二人に共通しているのはこういったところだ。 一緒にいる人を笑顔にしてしまう。 俺には到底できない。 俺は彼らのために何かできてるのだろうか。 誕生日を祝ってもらった嬉しさと共にそんなことを考えた。
ただ今は、「ありがとう」とそんな当たり前のことを言いたい。
「ほんと、ありがとな」
気がつくと再び俺の頬に涙が伝った。
「あ~、淳一くんまた泣いてる~」
「ほうほう、淳一って意外と泣き虫なんだな」
「うるせえ、泣いてねえって!」
そう言って俺は涙を拭う。 ああ、泣いてるさ。 心の中では認めてやる。
「あ、そうだ! 誕生日プレゼントっていうのもなんだけどさ、淳一くん、目瞑って」
真柴に言われた通り、俺は目を瞑る。 すると、耳にイヤホンをつけられた。
しばらくすると音楽が聞こえてきた。 音質は良いとは言えないが、綺麗なメロディが聞こえてきた。
懐かしいような、新しいようないつの間にか俺は耳元から流れる音楽に夢中になり圧倒的な幸福感に包まれていた。
「どうかな? ちょっと作曲してみたんだけど、石田くんにはさっき聞かせたんだけど」
「この曲、真柴が作ったのか?」
「うん、まだ未完成だけどね」
「これ、完成してないのか? すっげえいい曲なのに」
「まだ歌詞をつけれてないんだよね、っと、そこで淳一くんにお願いがあります。 この曲に歌詞をつけてください」
「へ? 俺が?」
「勿論です。 ボーカルなんだからさ。 淳一くん、伝えたいことあるでしょ? この曲、淳一くんにプレゼントするよ」
真柴は笑顔で俺にそう言って右手を差し出した。
勿論、答えは決まっている。
「承りました。 なんてな。 任せとけ」
そう言って俺たちは顔を見合わせ笑いあった。
*
真柴の泊まっている部屋から自分たちの部屋に戻った俺たちはベッドに横になりながら駄弁っていた。
「そういえばお前、唯ちゃんとどうだったんだ? 今日一緒にいただろ?」
「ああ、まあな」
俺は石田に向かってガッツポーズをする。
「お、よかったじゃねえか! やっとお前ら付き合うんだな」
「……いや、付き合ってはない」
「は? そうなの? 俺はてっきり告白したのかと思ったんだが」
「告白は……してない」
「はあ……お前ら相変わらずだな……お互い肝心なことは言わないっつうか……まあ少しは成長してるが」
昔から俺と唯のことを知っている石田だからこそ言えることだった。 それにこいつはちゃんと自分の手で自分の幸せを掴んだ。 そしてその幸せを11年後も掴んだまま離していない。 ちゃんと言葉にして告白したこいつに俺は頭が上がらない。
「まあ、後悔しないように頑張れよな」
「おう、ありがとな」
「それより聞いてくれよ、真由美がさ~」
それから二時間ほど俺は石田の惚気話を聞かされたのだった。
近いようで遠い幼馴染。 生まれた時から何もするにも一緒で、でも今まで交わることがなかった関係。 それでも。 一歩、前に進んだんじゃないか? 右手の薬指を見るとそこには唯から貰ったおもちゃの指輪がはめられている。 自分の右手を見るたびに思わずニヤけてしまう。
これからだってきっとそんな思い出ができるはずだ。 あれ……でも俺結局唯への気持ち、言葉にして伝えてないぞ……
そんなことを考えていると携帯の着信音が鳴り出した。
「もしもし、どうした真柴」
「……淳一くん助けて……」
「は? どうしたんだよ真柴」
「……お願い……今すぐ部屋に来て」
真柴はそう一方的に告げ通話を切った。
これはただごとじゃないと思い、俺は真柴が泊まっている部屋へと向かった。
︎*
真柴が泊まっている部屋のドアをノックすると、すぐに真柴の「どうぞ」という声が返ってきた。 俺はそれを確認し、ドアを開けた。
すると、ドアを開けた途端、パアッンとクラッカーの破裂音が耳に響いた。
その音に驚き一瞬目を瞑り、再び目を開けるとそこには真柴と石田が立っていた。
「淳一くんお誕生日おめでとう!」
「淳一おめでとう今年で何歳になったんだ? って何泣いてんだよ?」
石田にそう言われ目元に触れてみると確かに俺は涙を流していた。 ああ、そうか俺は今心の底から嬉しいんだろうな。 この11年家族以外の人に誕生日を祝われることなんてなかった気がする。
「淳一ちゃん泣いちゃってるんでちゅか~?」
「うるせえ、泣いてねえよ」
「本当かなぁ~」
「本当だ。 ……ありがとなお前ら」
「おうよ」
「いえいえ」
真柴と石田はそう言って満面の笑みを見せた。 こいつらの笑顔を見ていると俺も自然と笑顔になってしまう。 こいつら二人に共通しているのはこういったところだ。 一緒にいる人を笑顔にしてしまう。 俺には到底できない。 俺は彼らのために何かできてるのだろうか。 誕生日を祝ってもらった嬉しさと共にそんなことを考えた。
ただ今は、「ありがとう」とそんな当たり前のことを言いたい。
「ほんと、ありがとな」
気がつくと再び俺の頬に涙が伝った。
「あ~、淳一くんまた泣いてる~」
「ほうほう、淳一って意外と泣き虫なんだな」
「うるせえ、泣いてねえって!」
そう言って俺は涙を拭う。 ああ、泣いてるさ。 心の中では認めてやる。
「あ、そうだ! 誕生日プレゼントっていうのもなんだけどさ、淳一くん、目瞑って」
真柴に言われた通り、俺は目を瞑る。 すると、耳にイヤホンをつけられた。
しばらくすると音楽が聞こえてきた。 音質は良いとは言えないが、綺麗なメロディが聞こえてきた。
懐かしいような、新しいようないつの間にか俺は耳元から流れる音楽に夢中になり圧倒的な幸福感に包まれていた。
「どうかな? ちょっと作曲してみたんだけど、石田くんにはさっき聞かせたんだけど」
「この曲、真柴が作ったのか?」
「うん、まだ未完成だけどね」
「これ、完成してないのか? すっげえいい曲なのに」
「まだ歌詞をつけれてないんだよね、っと、そこで淳一くんにお願いがあります。 この曲に歌詞をつけてください」
「へ? 俺が?」
「勿論です。 ボーカルなんだからさ。 淳一くん、伝えたいことあるでしょ? この曲、淳一くんにプレゼントするよ」
真柴は笑顔で俺にそう言って右手を差し出した。
勿論、答えは決まっている。
「承りました。 なんてな。 任せとけ」
そう言って俺たちは顔を見合わせ笑いあった。
*
真柴の泊まっている部屋から自分たちの部屋に戻った俺たちはベッドに横になりながら駄弁っていた。
「そういえばお前、唯ちゃんとどうだったんだ? 今日一緒にいただろ?」
「ああ、まあな」
俺は石田に向かってガッツポーズをする。
「お、よかったじゃねえか! やっとお前ら付き合うんだな」
「……いや、付き合ってはない」
「は? そうなの? 俺はてっきり告白したのかと思ったんだが」
「告白は……してない」
「はあ……お前ら相変わらずだな……お互い肝心なことは言わないっつうか……まあ少しは成長してるが」
昔から俺と唯のことを知っている石田だからこそ言えることだった。 それにこいつはちゃんと自分の手で自分の幸せを掴んだ。 そしてその幸せを11年後も掴んだまま離していない。 ちゃんと言葉にして告白したこいつに俺は頭が上がらない。
「まあ、後悔しないように頑張れよな」
「おう、ありがとな」
「それより聞いてくれよ、真由美がさ~」
それから二時間ほど俺は石田の惚気話を聞かされたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ニュクスの眠りに野花を添えて
獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。
「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」
初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。
「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」
誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。
そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる