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25話「体育祭」後編その3
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女子のクラス別リレーが終わり、午前の部は終了した。
その後、お昼休憩に入り各々弁当を食べたり、運動部の奴らは体を動かしたりと各々の過ごし方で休憩時間を過ごしていた。
俺はというと結局体育祭を見に来た母さんに連れられ、唯の母さんとうちの母さんと一緒に弁当を食べている。
もちろん唯も一緒だ。
「なんかこうして皆でご飯食べるの久しぶりね! 中学生の時の運動会ぶりかしら」
「そうねー、確かそうよね。 昔はよく一緒にご飯食べに行ってたわよね~」
「最近は少なくなって来たわよね~」
「そうよね~、淳一くん、いつでもうちにご飯食べに来ていいのよ? お父さんも淳一くんに会いたがってるのよ~」
「あ、はい。 是非今度」
「よそよそしいわね~。 いいのよ敬語なんか使わなくて。 赤ん坊の頃から知ってるんだから」
唯の母さんはそう言って俺の肩を叩いた。
懐かしいな。 唯の母さん。 唯に似て美人で優しくて。 うちの母さんとは大違いだ。
「おばさんの料理久しぶりに食べたいっす」
まだ完全に敬語を捨てるのには抵抗があるので語尾に「っす」をつけてしまう。
「嬉しいこと言ってくれるわね~。 でも最近唯も料理作ってるから唯の料理も食べてちょうだい」
うっ……
唯って料理めちゃくちゃ下手くそだからなあ……そりゃあもう食えないぐらいで。
「ちょっとお母さん! 私作らないわよ!」
「なーに言ってるの~。 この前、クッキー頑張って作ってたじゃない。 淳一くんにあげるんだって言って」
「ちょっ! ちょっとお母さん!」
唯は顔を真っ赤にしておばさんの口を手で抑えようとする。
もうおばさん言っちゃったから意味ないぞ。
てか唯、可愛すぎだろ。
あのクッキー、俺のために作ってくれたのかよ……
思わず口元が緩む。
唯は顔の方を見たかと思えばすぐに目をそらし恥ずかしそうに俯いた。
なんか……俺の方が恥ずかしいじゃねえか!
「二人ともー、写真撮るわよ~」
母さんはそう言ってカメラを構えた。
「ほら、唯と淳一くん寄って寄って!」
おばさんもそう言って俺たちをせかす。
これは逃げられそうもないと思い、俺はしぶしぶ撮影に応じることにした。 本当は写真なんて恥ずかしくて撮りたくないのだが。
ゆっくりと唯の方に寄ると、唯はびっくりした顔をしたが、覚悟を決めたようで俺の方に寄ってきた。
唯が近くに来たことで俺たちの距離は縮まる。
こんな距離感は珍しいわけではないのになぜかドキドキしてしまう。
きっとツーショットという俺と唯の二人だけが注目されるということに多少なりとも意識してしまっているからだろう。
「はーい、じゃあ撮るわよ~1たす1は~?」
「「に、にー」」
パシャッ
母さんの合図に俺たちは答えシャッターが切られた。
この時の写真は後から母さんから見せてもらったのだが、お互いに恥ずかしそうに逆方向を見てぎこちなく笑ってピースをしているという、なんともいえない写真であった。
だが写真もいいなと思った。 いつかの俺がこの写真を見て懐かしいなんて思えるかもしれない。 それに唯が写ってるからな。 楽勝で永久保存決定だ。
それでもやっぱり撮られるのは苦手なのだけれども。
「淳一、二人三脚頑張ってね」
昼飯を食べ終わって、そろそろ応援席へ戻ろうとした時、唯にそう言われた。 唯はさっき写真を撮った時と同様に恥ずかしそうに俯いていた。
「ん、まあ頑張るわ」
俺も同様な仕草をしてしまう。
こんな時カッコよく自信満々に言えたらいいのだが、咄嗟に俺はそんなことは言えない。
それに俺が言っても全くカッコつかないだろうしな。
……まあ、俺は俺がやれるだけのことをやろう。
唯に応援されて確かな頑張ろうという気持ちが心に宿った。
その後、お昼休憩に入り各々弁当を食べたり、運動部の奴らは体を動かしたりと各々の過ごし方で休憩時間を過ごしていた。
俺はというと結局体育祭を見に来た母さんに連れられ、唯の母さんとうちの母さんと一緒に弁当を食べている。
もちろん唯も一緒だ。
「なんかこうして皆でご飯食べるの久しぶりね! 中学生の時の運動会ぶりかしら」
「そうねー、確かそうよね。 昔はよく一緒にご飯食べに行ってたわよね~」
「最近は少なくなって来たわよね~」
「そうよね~、淳一くん、いつでもうちにご飯食べに来ていいのよ? お父さんも淳一くんに会いたがってるのよ~」
「あ、はい。 是非今度」
「よそよそしいわね~。 いいのよ敬語なんか使わなくて。 赤ん坊の頃から知ってるんだから」
唯の母さんはそう言って俺の肩を叩いた。
懐かしいな。 唯の母さん。 唯に似て美人で優しくて。 うちの母さんとは大違いだ。
「おばさんの料理久しぶりに食べたいっす」
まだ完全に敬語を捨てるのには抵抗があるので語尾に「っす」をつけてしまう。
「嬉しいこと言ってくれるわね~。 でも最近唯も料理作ってるから唯の料理も食べてちょうだい」
うっ……
唯って料理めちゃくちゃ下手くそだからなあ……そりゃあもう食えないぐらいで。
「ちょっとお母さん! 私作らないわよ!」
「なーに言ってるの~。 この前、クッキー頑張って作ってたじゃない。 淳一くんにあげるんだって言って」
「ちょっ! ちょっとお母さん!」
唯は顔を真っ赤にしておばさんの口を手で抑えようとする。
もうおばさん言っちゃったから意味ないぞ。
てか唯、可愛すぎだろ。
あのクッキー、俺のために作ってくれたのかよ……
思わず口元が緩む。
唯は顔の方を見たかと思えばすぐに目をそらし恥ずかしそうに俯いた。
なんか……俺の方が恥ずかしいじゃねえか!
「二人ともー、写真撮るわよ~」
母さんはそう言ってカメラを構えた。
「ほら、唯と淳一くん寄って寄って!」
おばさんもそう言って俺たちをせかす。
これは逃げられそうもないと思い、俺はしぶしぶ撮影に応じることにした。 本当は写真なんて恥ずかしくて撮りたくないのだが。
ゆっくりと唯の方に寄ると、唯はびっくりした顔をしたが、覚悟を決めたようで俺の方に寄ってきた。
唯が近くに来たことで俺たちの距離は縮まる。
こんな距離感は珍しいわけではないのになぜかドキドキしてしまう。
きっとツーショットという俺と唯の二人だけが注目されるということに多少なりとも意識してしまっているからだろう。
「はーい、じゃあ撮るわよ~1たす1は~?」
「「に、にー」」
パシャッ
母さんの合図に俺たちは答えシャッターが切られた。
この時の写真は後から母さんから見せてもらったのだが、お互いに恥ずかしそうに逆方向を見てぎこちなく笑ってピースをしているという、なんともいえない写真であった。
だが写真もいいなと思った。 いつかの俺がこの写真を見て懐かしいなんて思えるかもしれない。 それに唯が写ってるからな。 楽勝で永久保存決定だ。
それでもやっぱり撮られるのは苦手なのだけれども。
「淳一、二人三脚頑張ってね」
昼飯を食べ終わって、そろそろ応援席へ戻ろうとした時、唯にそう言われた。 唯はさっき写真を撮った時と同様に恥ずかしそうに俯いていた。
「ん、まあ頑張るわ」
俺も同様な仕草をしてしまう。
こんな時カッコよく自信満々に言えたらいいのだが、咄嗟に俺はそんなことは言えない。
それに俺が言っても全くカッコつかないだろうしな。
……まあ、俺は俺がやれるだけのことをやろう。
唯に応援されて確かな頑張ろうという気持ちが心に宿った。
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