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30話「修学旅行」 後編その1
しおりを挟む「お待たせ、ほらアイス」
「ありがとう淳一。 いくらだった?」
「いや金はいいって。 俺のおごりだ」
「そ、そう。 ありがとう」
そう言って唯は嬉しそうにアイスに口にする。 そういえば唯は昔から甘いものに目がなかった。 さっきから駅を降りてすぐにある土産屋に貼ってあるソフトクリームのポスターをチラチラと見つめていた。
いかんせん、唯は素直じゃないし最近はダイエットなんてしてるらしいから言い出せなかったみたいだ。
そんなところもくっそ可愛いぞ唯。
「ふふ、淳一、鼻にアイスついてる」
「あ、ほんとだ」
「拭いたげる」
唯はそう言ってリュックからウェットティッシュを取り出し俺の鼻を拭いてくれた。
「ん、ありがとな」
「まったく淳一は子供なんだから」
「うっせ。 子供は唯だろ。 苦いの食べれないからって京都限定の抹茶ソフトを食べれないなんてよ」
「そ、それは好き嫌いだし! 仕方ないじゃない淳一のバカ!」
「はいはい仕方ないでちゅね~」
うぐっ。 腹に鈍い痛みが走る。
ひ、久しぶりだ唯の腹パン……
「淳一なんか言った?」
「いえ、何も……」
︎天龍寺を参拝した後、俺たちは竹林の道を歩くことにした。 その名の通り大きな竹林に囲まれている。夏に来たらきっと涼しいに違いない。 それにしても観光客で賑わっている。 修学旅行生も見受けられるが外国人観光客も多い。 至るところで写真を撮っている。 唯もまた携帯で写真を撮っていた。
「なあ唯。 こっち来いよ」
来いよと命令形なのが気に食わなかったのか、唯はムッとした顔をしながらも俺の元へと戻ってきた。
「何よ」
「写真、撮ってもらおうぜ」
俺はそう言って唯の返事を聞く前に近くにいたカップルにインスタントカメラを渡した。
「はーい、じゃあ二人とも、もっと寄って寄って」
お兄さんに言われるがままに俺と唯はお互いの身を寄せ合う。 一体今唯はどんな顔をしているのだろう。 気になったのだが恥ずかしくて唯の顔が見れない。 写真を撮ることを提案しといてなんだが。
「はい、チーズ」
お兄さんはそう言うとインスタントカメラのシャッターを押した。
「はい、カメラ」
「どうもありがとうございます」
お兄さんからカメラを受け取り俺はお礼を述べる。
「君たち修学旅行とか?」
「あ、はいそうです」
「へー、いいな。 俺も高校生に戻りたいな」
「へー、たっちゃん、高校の時の忘れられない女でもいるのかなー?」
「ち、違うよ! そんなわけないじゃないか」
「ふーん、本当かなあ。 たっちゃんのことだからなあ」
「だから違うってば! さ、さあもう行こう」
お姉さんはは俺たちにニコッと笑ってその場を去っていった。 お兄さんは大分焦っていた。 年齢は大学生ぐらいだろうか、二人は手を繋いで歩いていた。 お互いの指を絡める所謂恋人繋ぎをしていた。
しばらくお兄さんたちの姿を見つめていると唯が話しかけてきた。
「良い人たちだったね」
「ああ、そうだな。 ちょっとお兄さんには悪いことしたような気がするけど」
「淳一も忘れられない人っているの?」
いきなりの質問でドキッとした。
忘れられない人、それはな……お前だよ唯。
……なんてことは言えるはずがなかった。
「……さあな」
「ふーん、そういえば淳一が写真撮りたがるなんて珍しい。 何かあったの?」
「んー、ただの気まぐれだよ」
「ふーん」
嘘だ。 ただ唯との思い出を形として残したかっただけだ。 インスタントカメラだから撮った写真を確認できないのが悔しい。 帰ったらすぐ現像しに行こう。 俺の唯コレクション(今作った)に一枚追加だ。
竹林の道を抜け駅に戻り俺たちは昼食を済ました。
そしてこの後は唯が行きたい場所に行くつもりだ。
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