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1話「出発」
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俺が北村の誘いに乗ったのは少しの気の迷いもあったのかもしれないが、俺自身とにかく現実逃避がしたかったからだ。
昨日、高校の卒業式が終わった後、俺は鮎原に高校三年間の間積み重ねてきた思いを言葉にして伝えた。
結果としては失敗。 鮎原は一年前から想い続けている人がいるのだという。
そのことはなんとなく知ってはいた。
鮎原はSNSでそんなことを匂わせていたから。 正直にいうとそんなことはまったく気にならなかった。
たとえ鮎原に相手がいようといまいと関係なかった。
ただ俺の気持ちを伝えたかったのだ。
だから後悔なんてない。
ないのだが何となく気を紛らわせたかったのだ。
北村のドライブ旅行に付き合ったのはそんな単純な理由からだ。
まあとにかく俺にとっては切実な、特別な旅行だったのだ。
高3の三月、推薦で大学進学が決まっていた北村はとにかく暇だった。
あまりにも暇だったので自動車学校へ通いつめ、クラスの皆が受験が終わる頃に免許を取り終えたのだった。
そんな北村は親戚からもらったという中古車を乗り回していた。
高校の卒業式の時にそんな話を聞いた俺はとにかく北村が羨ましくて仕方なかった。
田舎の人間なら共感できるかもしれないが車がないととにかく不便である。
都会に比べ、電車も数多く通っておらず、とにかく交通手段がなくて不便だ。
だから俺は同い年で自分の車さえも持つ北村が羨ましくて仕方なかった。
そんな俺の煽て(少し誇張もあるが羨ましかったのは事実だ)もあり、気を良くした北村の好意で、高校の卒業旅行も兼ねてドライブ旅行に行くことになったのだ。
︎*
「お、ちゃんと起きれたみたいだな」
「まあ、あんだけ携帯鳴らされたら起きるわな」
「はっは、俺に感謝していいぞ洸
こう
」
「アホか」
「それにしてもえらく荷物が軽いな。 二泊三日の修学旅行じゃねえんだぞ」
そんな言葉をこぼす北村はキャリーバッグ2つとえらく大きなリュックサックを車の後部座席に載せていた。
そんな北村とは対照的に、俺はリュックサックのみだ。
リュックの中は週間分の着替えしか入っていない。
「俺はスマートな男だからな」
「それが本当なら今頃彼女の一人や二人はいるだろうな」
「……うるせえな」
そう、好きな子の前ではスマートに、かっこよくいたいのだけれど不器用な俺はいつも空回りしてしまう。
「ちゃんとシートベルトつけろよ」
北村に言われ俺はシートベルトを装着した。
北村はそれを確認しエンジンをかけ、車を発進させ、道路へ出た。
今回の卒業旅行は特に前もって行先を決めているわけではない。
強いていうならひたすら西へと向かうことだけだ。
北村と行先を何度か話しあったのだが、意見が食い違ったりすることなく、お互いがそもそもこれといって特に行きたいところがなかった。
だからとりあえず西へと向かおうと決めたのだった。
まだ出発して間もないが、この旅行が行き当たりばったりになることは目に見えている。
しかし「それもまた一興」ということで俺はこの旅行を存分に楽しもうと思う。
︎*
地元を出発してから30分ほどが経った。
今回の旅行では決して高速道路は使わず国道をひたすら真っ直ぐ走ろうということになっている。
腐ってもまだ俺たちは4月まで高校生だ。 高速道路を使えるほど財布に余裕があるわけじゃない。
平坦な道に飽き飽きしているであろう北村はさっきから欠伸を繰り返している。
「ふあー、退屈だな。 洸、なんか面白い話しろよ」
「これまた無茶振りだな。 そうだな、これは俺の親戚の叔母さんから聞いた話なんだがな」
「あー、やっぱいいやその話つまんなそう」
「……お前なあ」
北村はハンドルから片手を離し俺の話を遮った。
自分からふってきたくせになんだよそれ。
まあいいや。 気を取り直し俺は北村に尋ねる。
「そういえばさ、この旅行の目的って何なわけ?」
「女だよ」
「は?」
「だから女だって」
予想外の返答に戸惑って聞き返した俺とは対照的に北村は当たり前といった顏でそんなことを言う。
「いや、女ってどういうことだよ」
「ふっふっふ。 よくぞ聞いてくれた洸。 勿論ヒッチハイカーの女の子を拾うのだよ」
「……いや勿論って何言ってんのお前」
「だーかーら、ヒッチハイカーの女の子拾って仲良くなってあわゆくば……ってな。 俺、自分の車持ったら一度やってみたかったんだよな」
「……バカじゃねえのお前。 大体ヒッチハイカーなんて今時そうそういないだろ」
と、俺が言った矢先「九州」と書かれたダンボールを掲げた女の子が路肩に立っていた。
あれ、遠くからだからあまり見えないけど……可愛いぞ?
「な、いるもんだろ?」
北村はニタニタと笑いながらドヤ顔で俺を見た。
「……本気かよ」
そうは言いながらも不思議とワクワクしている自分がいた。
まだ始まったばかりの旅だがさっそく何かが起きる予感がした。
北村は再度俺にニタニタ微笑みかけ路肩へと車を停車させた。
昨日、高校の卒業式が終わった後、俺は鮎原に高校三年間の間積み重ねてきた思いを言葉にして伝えた。
結果としては失敗。 鮎原は一年前から想い続けている人がいるのだという。
そのことはなんとなく知ってはいた。
鮎原はSNSでそんなことを匂わせていたから。 正直にいうとそんなことはまったく気にならなかった。
たとえ鮎原に相手がいようといまいと関係なかった。
ただ俺の気持ちを伝えたかったのだ。
だから後悔なんてない。
ないのだが何となく気を紛らわせたかったのだ。
北村のドライブ旅行に付き合ったのはそんな単純な理由からだ。
まあとにかく俺にとっては切実な、特別な旅行だったのだ。
高3の三月、推薦で大学進学が決まっていた北村はとにかく暇だった。
あまりにも暇だったので自動車学校へ通いつめ、クラスの皆が受験が終わる頃に免許を取り終えたのだった。
そんな北村は親戚からもらったという中古車を乗り回していた。
高校の卒業式の時にそんな話を聞いた俺はとにかく北村が羨ましくて仕方なかった。
田舎の人間なら共感できるかもしれないが車がないととにかく不便である。
都会に比べ、電車も数多く通っておらず、とにかく交通手段がなくて不便だ。
だから俺は同い年で自分の車さえも持つ北村が羨ましくて仕方なかった。
そんな俺の煽て(少し誇張もあるが羨ましかったのは事実だ)もあり、気を良くした北村の好意で、高校の卒業旅行も兼ねてドライブ旅行に行くことになったのだ。
︎*
「お、ちゃんと起きれたみたいだな」
「まあ、あんだけ携帯鳴らされたら起きるわな」
「はっは、俺に感謝していいぞ洸
こう
」
「アホか」
「それにしてもえらく荷物が軽いな。 二泊三日の修学旅行じゃねえんだぞ」
そんな言葉をこぼす北村はキャリーバッグ2つとえらく大きなリュックサックを車の後部座席に載せていた。
そんな北村とは対照的に、俺はリュックサックのみだ。
リュックの中は週間分の着替えしか入っていない。
「俺はスマートな男だからな」
「それが本当なら今頃彼女の一人や二人はいるだろうな」
「……うるせえな」
そう、好きな子の前ではスマートに、かっこよくいたいのだけれど不器用な俺はいつも空回りしてしまう。
「ちゃんとシートベルトつけろよ」
北村に言われ俺はシートベルトを装着した。
北村はそれを確認しエンジンをかけ、車を発進させ、道路へ出た。
今回の卒業旅行は特に前もって行先を決めているわけではない。
強いていうならひたすら西へと向かうことだけだ。
北村と行先を何度か話しあったのだが、意見が食い違ったりすることなく、お互いがそもそもこれといって特に行きたいところがなかった。
だからとりあえず西へと向かおうと決めたのだった。
まだ出発して間もないが、この旅行が行き当たりばったりになることは目に見えている。
しかし「それもまた一興」ということで俺はこの旅行を存分に楽しもうと思う。
︎*
地元を出発してから30分ほどが経った。
今回の旅行では決して高速道路は使わず国道をひたすら真っ直ぐ走ろうということになっている。
腐ってもまだ俺たちは4月まで高校生だ。 高速道路を使えるほど財布に余裕があるわけじゃない。
平坦な道に飽き飽きしているであろう北村はさっきから欠伸を繰り返している。
「ふあー、退屈だな。 洸、なんか面白い話しろよ」
「これまた無茶振りだな。 そうだな、これは俺の親戚の叔母さんから聞いた話なんだがな」
「あー、やっぱいいやその話つまんなそう」
「……お前なあ」
北村はハンドルから片手を離し俺の話を遮った。
自分からふってきたくせになんだよそれ。
まあいいや。 気を取り直し俺は北村に尋ねる。
「そういえばさ、この旅行の目的って何なわけ?」
「女だよ」
「は?」
「だから女だって」
予想外の返答に戸惑って聞き返した俺とは対照的に北村は当たり前といった顏でそんなことを言う。
「いや、女ってどういうことだよ」
「ふっふっふ。 よくぞ聞いてくれた洸。 勿論ヒッチハイカーの女の子を拾うのだよ」
「……いや勿論って何言ってんのお前」
「だーかーら、ヒッチハイカーの女の子拾って仲良くなってあわゆくば……ってな。 俺、自分の車持ったら一度やってみたかったんだよな」
「……バカじゃねえのお前。 大体ヒッチハイカーなんて今時そうそういないだろ」
と、俺が言った矢先「九州」と書かれたダンボールを掲げた女の子が路肩に立っていた。
あれ、遠くからだからあまり見えないけど……可愛いぞ?
「な、いるもんだろ?」
北村はニタニタと笑いながらドヤ顔で俺を見た。
「……本気かよ」
そうは言いながらも不思議とワクワクしている自分がいた。
まだ始まったばかりの旅だがさっそく何かが起きる予感がした。
北村は再度俺にニタニタ微笑みかけ路肩へと車を停車させた。
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