月灯りとヒッチハイク

淳平

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2話「愛莉ちゃん」

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 女の子の名前は如月愛梨ちゃんでなんと俺たちと同い年だった。
 愛莉ちゃんは俺がヒッチハイカー女子に抱いていた印象そのもので、明るくて気さくな子だった。
 ……まあでも少しばかり図々しいというか女らしさにかけるというか……
 とりあえずまだ会ったばかりとは思えないくらいには俺たちと打ち解けていた。

「えー! 洸君今まで彼女いたことないの!? 18年も生きてきて?」
「そうなんだよ愛莉。 こいつまだ童貞なんだよ。 な、洸」
「うるせえなお前ら! 俺は高校三年間片思いしてたんだから仕方ねえだろ!」
「と、申しておりますが北村君」
「放っておけ愛莉、童貞の戯言だ」
「なるほど。 スルーするであります北村隊長!」
「……お前らなあ!」

 すっかり北村と愛莉ちゃんの間には俺をイジるノリができていた。 まったくもって納得いかないのだが。愛梨ちゃんは髪を金髪に染めていてピアスなんかも空いていて普段なら近づきたくない見た目なのだが、喋ってみるとただの人懐っこい良い奴なのが分かった。
 愛莉ちゃんがトイレに行きたいということで俺たちは国道沿いのコンビニに行くことにした。
 ただ車に乗っているだけだが、出発してからいつの間にか2時間が経っていたらしく腰が疲れていた俺は大きく伸びをした。
 空を見上げると見えてくるのは雲ひとつない青空で鳥が二羽ほど飛んでいた。そうだ。 俺たちは旅に来たんだっけ。 いつもの日常から離れ、俺たちは非日常へと向かっている。別に行き先なんてどこでもいい。 ただあそこじゃない何処かへ行きたいのだ。
 何気なくポケットからスマホを取り出しSNSをチェックすると俺たちと同様に卒業旅行をしているクラスのやつらの投稿がちらつく。 道頓堀をバックにグ◯コのポーズをとりながらむき出しの笑顔で撮られた一枚。 いつもの俺なら羨ましくて妬ましくて堪らないのだが、今は違う。 俺たちだってこれから楽しいことが山ほど待っているはずなのだから。

「お前はトイレとかいいのか?」

 北村はトイレを済ませたようでコンビニのベンチに座っている俺の元へと帰ってきた。

「いや大丈夫。 ってお前タバコ吸い始めたのかよ」
「ああ、まあな。 ほら、なんかかっこいいじゃんタバコって。 吸ってる様とかさ。 画になるっつーか」

 北村はそう言ってプハーッとわざとらしくタバコをふかす。 

「愛莉のことどう思う?」
「どうって別に。 普通にいいやつだな。 でも童貞いじりはマジでやめてほしいってとこはあるかな」
「はっはっは。 あれは愛のあるいじりだぞ。 まあ、お前はそういう機会に恵まれてねえっていうか、鮎原のことずっと好きだったしな」
「まあな。 まあ、今更どうでもいいけどな」

 しばらくすると愛梨ちゃんがコンビニから出てきた。

「みんなお待たせ~。 って北村くんタバコ吸ってるし! ずるい私も吸おっと」

 愛莉ちゃんはそう言うと上着のポケットにからタバコを取り出し火をつけた。

「へー、愛莉も吸うんだな。 ラッキーストライクか」
「うん、前の彼氏の影響でねー。 あれ、もしかして洸くんタバコも童貞なの?」
「お前な……童貞童貞うるせえ!」
「あっはっはは、ごめんごめん。 洸くんも吸う?」
「いや遠慮しとく」

 愛梨ちゃんは「そっか」と言って俺に渡そうとしたタバコを口に咥え火をつけた。
 本当のことを言うと昔、一度だけタバコを吸ったことがある。 その話は恥ずかしくて話題にもしたくない。 まあ、いわゆる若気の至りってやつだ。

「そういえば愛梨は何しに九州に行くんだ?」
「うーん、まあちょっとねー」

 愛梨ちゃんは吸殻を灰皿に入れそう答える。

「ねえ、そんなことより写真撮ろうよ! 私たちの旅の始まりの記念に」
「え、こんなとこで撮るのかよ」
「そういう細かいこと言うから洸くんは童貞なんだよ」
「おいお前また言いやがったな!」
「ふはっ。 愛梨やっぱおもしれー」
「はーい、じゃあ撮るよー」

 愛梨ちゃんはそう言うと自撮り棒をリュックサックから取り出しカウントダウンを始めた。

「いちたすいちはー?」

「「にー!」」

 2018年3月15日午前11時28分。
 俺たちの旅はまだ始まったばかりだ。
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