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3話「水族館」
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俺たちを乗せた車はいつの間にか名古屋の街を走っていた。 時刻は昼の十二時半。 そろそろ空腹を感じ始める頃だ。
最初に空腹を感じたのは北村だった。 ちょうど岡崎を超えた頃いきなり「腹減った」と叫んだのだった。そんなことがあり俺たちは名古屋で国道から外れ昼食がてら観光をすることにした。
国道から外れた後、すぐに見つけたコインパーキングに車を停め、俺たちは車から降りた。
昼食にありつくまでさほど時間は必要なかった。 三人とも一斉にスマホで名古屋飯を調べ、揃いに揃って味噌カツを選択したからだ。 近くの店に入り味噌カツを堪能した俺たちはその周辺をブラブラと歩いた。
「美味かったな味噌カツ」
「うん、カツ丼には断然ソースだったけど、それが覆されたよ」
「おい洸。 さっきからスマホ弄りすぎだぞ」
「ああ、悪い。 ちょっと名古屋について調べててな」
「なんかいい所あった?」
愛莉ちゃんが俺のスマホを覗き込む。 すると必然的に顔が近づき少しドキッとする。
「あ、ああ。 水族館がこの近くにあるらしい」
「じゃあそこ行こう。 近くってどのくらい?」
「んー、歩いて10分だな」
「じゃあ走って5分だね! 位置についてー、ヨーイドン!」
「よっしゃ、あの水族館に向かって走るぞ!」
北村と愛莉ちゃんはそう言って俺を置いて走り出した。 まったく、元気ありすぎだろお前ら。 まあ俺も二人の後に続くんだけどな。
案の定というべきか、ただのバカというべきか食後間も無いくせして全速力で水族館まで競争した俺たちはこの後めちゃくちゃ腹痛に苦しんだ。
水族館に着くなり、愛莉ちゃんと北村は子供のような瞳で水槽の中で泳ぐ魚たちを眺めていた。 それはもう水槽に張り付くような勢いでだ。 その光景が妙に可笑しくて思わず俺は写真に収めた。 シャッター音が聞こえたらしく背後の俺に気付いた二人は咄嗟に俺が向けたカメラに向けてポーズを決めた。
「何だよそのポーズ」
「シャチホコ! 名古屋の名物らしいよ」
両手を頭上に広げシャチホコのポーズをする愛莉ちゃん。 とても同い年には見えないくらいの無邪気さだ。
「お前は何のポーズなんだ?」
「手羽先」
「意味わかんねえよ」
そう言って三人で顔を見合わせ笑った。 くだらないことで笑うのは久しぶりな気がする。 思えばこの前までずっと受験一色だったからな。教室中がピリピリとしていて俺もまたピリピリしていた。 まあ、当たり前だ。 自分の将来がかかっているからな。 でも、あの教室内のピリピリとした空気は二度と味わいたくないが。
それから俺たちはシャチのショーを観た。 どうやらシャチを飼育している水族館というのは少ないらしく俺も北村も愛莉ちゃんも初めての体験に胸を躍らせた。 どうでもいい話だがシャチの目がどこにあるかご存知だろうか。 俺は今日までずっと両サイドにある白い模様が目だと思っていた。 しかしシャチのショーのお姉さんによると両サイドの縁の部分に目が付いているらしい。
まあ、そんなことはどうでもよくて、だ。 今、何故か目の前におれがずっと片思いしていた相手、鮎原美月がいるのだ。
最初に空腹を感じたのは北村だった。 ちょうど岡崎を超えた頃いきなり「腹減った」と叫んだのだった。そんなことがあり俺たちは名古屋で国道から外れ昼食がてら観光をすることにした。
国道から外れた後、すぐに見つけたコインパーキングに車を停め、俺たちは車から降りた。
昼食にありつくまでさほど時間は必要なかった。 三人とも一斉にスマホで名古屋飯を調べ、揃いに揃って味噌カツを選択したからだ。 近くの店に入り味噌カツを堪能した俺たちはその周辺をブラブラと歩いた。
「美味かったな味噌カツ」
「うん、カツ丼には断然ソースだったけど、それが覆されたよ」
「おい洸。 さっきからスマホ弄りすぎだぞ」
「ああ、悪い。 ちょっと名古屋について調べててな」
「なんかいい所あった?」
愛莉ちゃんが俺のスマホを覗き込む。 すると必然的に顔が近づき少しドキッとする。
「あ、ああ。 水族館がこの近くにあるらしい」
「じゃあそこ行こう。 近くってどのくらい?」
「んー、歩いて10分だな」
「じゃあ走って5分だね! 位置についてー、ヨーイドン!」
「よっしゃ、あの水族館に向かって走るぞ!」
北村と愛莉ちゃんはそう言って俺を置いて走り出した。 まったく、元気ありすぎだろお前ら。 まあ俺も二人の後に続くんだけどな。
案の定というべきか、ただのバカというべきか食後間も無いくせして全速力で水族館まで競争した俺たちはこの後めちゃくちゃ腹痛に苦しんだ。
水族館に着くなり、愛莉ちゃんと北村は子供のような瞳で水槽の中で泳ぐ魚たちを眺めていた。 それはもう水槽に張り付くような勢いでだ。 その光景が妙に可笑しくて思わず俺は写真に収めた。 シャッター音が聞こえたらしく背後の俺に気付いた二人は咄嗟に俺が向けたカメラに向けてポーズを決めた。
「何だよそのポーズ」
「シャチホコ! 名古屋の名物らしいよ」
両手を頭上に広げシャチホコのポーズをする愛莉ちゃん。 とても同い年には見えないくらいの無邪気さだ。
「お前は何のポーズなんだ?」
「手羽先」
「意味わかんねえよ」
そう言って三人で顔を見合わせ笑った。 くだらないことで笑うのは久しぶりな気がする。 思えばこの前までずっと受験一色だったからな。教室中がピリピリとしていて俺もまたピリピリしていた。 まあ、当たり前だ。 自分の将来がかかっているからな。 でも、あの教室内のピリピリとした空気は二度と味わいたくないが。
それから俺たちはシャチのショーを観た。 どうやらシャチを飼育している水族館というのは少ないらしく俺も北村も愛莉ちゃんも初めての体験に胸を躍らせた。 どうでもいい話だがシャチの目がどこにあるかご存知だろうか。 俺は今日までずっと両サイドにある白い模様が目だと思っていた。 しかしシャチのショーのお姉さんによると両サイドの縁の部分に目が付いているらしい。
まあ、そんなことはどうでもよくて、だ。 今、何故か目の前におれがずっと片思いしていた相手、鮎原美月がいるのだ。
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