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4話「鮎原美月」
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切れ長な目。 ふっくらとした唇。 きめ細やかな肌。 そして風に靡くサラサラとした黒髪。 間違いない。 俺が三年間片思いしていた相手、鮎原美月が目の前にいる。 鮎原の黒く澄んだ瞳に今の俺はどんな風に映っているのだろう。 きっと驚きと戸惑いで間抜けな顔をしているに違いないとハッと我に返る。
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
鮎原は俺に微笑む。 ああ、目の前にいるのは確かに鮎原美月だ。 鮎原は笑うと頬に笑窪を作るのだ。
「あ、ああ。 卒業旅行でな……もしかして鮎原もか?」
鮎原は相変わらず綺麗な脚をしている。 三月下旬の今、まだまだ冬の名残を残しているが鮎原はその美脚を露わにしていた。
男は勿論、女ですらその美脚に惹かれ、憧れるだろう。 実際、彼女の周りには男女問わず何人もの人で溢れていた。
そんな俺とは正反対な鮎原に俺は惚れたのだ。
「うーん、まあそんなとこかな」
「へえ、誰かと来てるのか?」
「ううん、一人だよ。 一人旅。 洸くんは?」
「ああ、俺は……」
と、俺が言いかけた途端、背後から北村と愛莉ちゃんが現れた。
「よっ、鮎原」
「あれ、北村くんだ。 あ、もしかして洸くんと一緒に旅行してるの?」
「そうそう、洸と、あとこいつ、愛莉とな」
「どうも~、如月愛莉でーす!」
北村が紹介すると共に愛莉ちゃんは鮎原に握手を求めた。
「どうも、初めまして。 鮎原美月です」
鮎原は愛莉ちゃんの握手に応えた。
「よろしくね美月ちゃん」
「うん、よろしくね愛莉ちゃん」
気付けば二人はそう言って笑い合っていた。
どうやら二人は既に打ち解けたのか、どうやら最初の掴みは完璧のようである。
正直、そのコミュ力が羨ましい。 きっと生まれつき愛莉ちゃんには人から好かれる能力というかオーラがあるに違いない。
「それで、鮎原は一人なのか?」
「うん、ちょっとね。 北村君たちは名古屋旅行?」
「いや、名古屋は途中に過ぎない。 俺たちの向かう場所はもっと遠い場所だ!」
北村はそう言って誇らしげな顔で鮎原に今回の旅行の内容を話した。
「へー、ひたすら東に向かう旅! すっごく楽しそうだね! いいなあ、羨ましい……」
旅行のことを話すと、鮎原は本当に羨ましいといったように俺たちの話に反応してくれた。
「鮎原も来いよ。 あと一人なら余裕で乗れるぜ。 俺らの荷物が載ってるから少し窮屈かもしれないけどな」
「服とかは私の貸すよ。 美月ちゃんと体型同じくらいだし」
「うーん……それならお言葉に甘えちゃおうかな」
「よし、じゃあ決まりだな!」
「わーい、楽しくなってきた!」
どうやら俺が黙っている間に事は進んでいったらしい。
バカ北村。 つい先日、フラれた相手と一緒に旅行だって? ふざけるな。 そもそもこの旅行は俺にとって鮎原を忘れるためみたいなところがあったのによ……
と、その他色々な不満が頭の中で浮かんできたが、車を出してもらっている、運転までしてもらっている北村にはそんなことは言えないのであった。
せめてもの抵抗として俺は北村を睨みつけた。
しかし、その抵抗は全く意味をなさず北村はとびきりの笑顔を俺に向けたのだった。
「いいよな、洸」
「……ああ」
︎
1日目の夜、24時間営業のスーパー銭湯に泊まることにした俺たちはそれぞれ男は男湯に、女は女湯にと別れていた。
そして今、俺は北村と湯船に浸かっている。
「なかなか面白い旅になりそうだな」
「……ああ、そうだな」
「なんだよテンション低いなお前。 どうしたんだよ」
「さあ、どうしたんだろうな」
「あ、お前鮎原のこと気にしてるんだろ。 気まずいとか思ってるんだろ。 バカだなあ洸。 お前さ、これは神がくれた最後のチャンスだと思えよ」
「はあ? チャンス?」
「そうだろ? これから1週間、同じ時間を過ごすわけだからな。 ひょっとしたら何かあるかもしれないだろ? まあ、お前次第だろうけどさ」
「……別に俺はもう鮎原のことは……」
「まあ、愛莉でもいいかもな」
「はあ?」
「いや、あいつは割といい物件だと思うぞ。 胸もでかいしな」
「お前な、そこかよ」
「男ならみんなそうだろ」
「おい、男代表みたいな言い方はやめろ。 俺は貧乳派だ」
「お前な、そこかよ」
そんな軽口を叩き合い俺たちは顔を見合わせ笑いあった。
1日目にして色々なことが起きている。 今までずっと続いていた日常から抜け出して今はまさしく非日常を味わっている。
だからこうやって流れに身をまかせるのも悪くないのかもな。
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
鮎原は俺に微笑む。 ああ、目の前にいるのは確かに鮎原美月だ。 鮎原は笑うと頬に笑窪を作るのだ。
「あ、ああ。 卒業旅行でな……もしかして鮎原もか?」
鮎原は相変わらず綺麗な脚をしている。 三月下旬の今、まだまだ冬の名残を残しているが鮎原はその美脚を露わにしていた。
男は勿論、女ですらその美脚に惹かれ、憧れるだろう。 実際、彼女の周りには男女問わず何人もの人で溢れていた。
そんな俺とは正反対な鮎原に俺は惚れたのだ。
「うーん、まあそんなとこかな」
「へえ、誰かと来てるのか?」
「ううん、一人だよ。 一人旅。 洸くんは?」
「ああ、俺は……」
と、俺が言いかけた途端、背後から北村と愛莉ちゃんが現れた。
「よっ、鮎原」
「あれ、北村くんだ。 あ、もしかして洸くんと一緒に旅行してるの?」
「そうそう、洸と、あとこいつ、愛莉とな」
「どうも~、如月愛莉でーす!」
北村が紹介すると共に愛莉ちゃんは鮎原に握手を求めた。
「どうも、初めまして。 鮎原美月です」
鮎原は愛莉ちゃんの握手に応えた。
「よろしくね美月ちゃん」
「うん、よろしくね愛莉ちゃん」
気付けば二人はそう言って笑い合っていた。
どうやら二人は既に打ち解けたのか、どうやら最初の掴みは完璧のようである。
正直、そのコミュ力が羨ましい。 きっと生まれつき愛莉ちゃんには人から好かれる能力というかオーラがあるに違いない。
「それで、鮎原は一人なのか?」
「うん、ちょっとね。 北村君たちは名古屋旅行?」
「いや、名古屋は途中に過ぎない。 俺たちの向かう場所はもっと遠い場所だ!」
北村はそう言って誇らしげな顔で鮎原に今回の旅行の内容を話した。
「へー、ひたすら東に向かう旅! すっごく楽しそうだね! いいなあ、羨ましい……」
旅行のことを話すと、鮎原は本当に羨ましいといったように俺たちの話に反応してくれた。
「鮎原も来いよ。 あと一人なら余裕で乗れるぜ。 俺らの荷物が載ってるから少し窮屈かもしれないけどな」
「服とかは私の貸すよ。 美月ちゃんと体型同じくらいだし」
「うーん……それならお言葉に甘えちゃおうかな」
「よし、じゃあ決まりだな!」
「わーい、楽しくなってきた!」
どうやら俺が黙っている間に事は進んでいったらしい。
バカ北村。 つい先日、フラれた相手と一緒に旅行だって? ふざけるな。 そもそもこの旅行は俺にとって鮎原を忘れるためみたいなところがあったのによ……
と、その他色々な不満が頭の中で浮かんできたが、車を出してもらっている、運転までしてもらっている北村にはそんなことは言えないのであった。
せめてもの抵抗として俺は北村を睨みつけた。
しかし、その抵抗は全く意味をなさず北村はとびきりの笑顔を俺に向けたのだった。
「いいよな、洸」
「……ああ」
︎
1日目の夜、24時間営業のスーパー銭湯に泊まることにした俺たちはそれぞれ男は男湯に、女は女湯にと別れていた。
そして今、俺は北村と湯船に浸かっている。
「なかなか面白い旅になりそうだな」
「……ああ、そうだな」
「なんだよテンション低いなお前。 どうしたんだよ」
「さあ、どうしたんだろうな」
「あ、お前鮎原のこと気にしてるんだろ。 気まずいとか思ってるんだろ。 バカだなあ洸。 お前さ、これは神がくれた最後のチャンスだと思えよ」
「はあ? チャンス?」
「そうだろ? これから1週間、同じ時間を過ごすわけだからな。 ひょっとしたら何かあるかもしれないだろ? まあ、お前次第だろうけどさ」
「……別に俺はもう鮎原のことは……」
「まあ、愛莉でもいいかもな」
「はあ?」
「いや、あいつは割といい物件だと思うぞ。 胸もでかいしな」
「お前な、そこかよ」
「男ならみんなそうだろ」
「おい、男代表みたいな言い方はやめろ。 俺は貧乳派だ」
「お前な、そこかよ」
そんな軽口を叩き合い俺たちは顔を見合わせ笑いあった。
1日目にして色々なことが起きている。 今までずっと続いていた日常から抜け出して今はまさしく非日常を味わっている。
だからこうやって流れに身をまかせるのも悪くないのかもな。
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