嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶

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2章 嫌われ者は家を出る

第15話 sideシアン

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 私の腕の中でこちらの様子を伺うように顔を上げたリアム様を見て思わず眉を顰める。
 ほぼ着ていないような衣服の間から青紫色の痣だらけの白い肌が見える。あまりの痛々しさに思わず目を逸らした。とりあえず自分が着ていたジャケットを掛けたが、前の開いたシャツに殆ど引っかかっているだけのズボンを見てあと一歩遅かったら…と思うと時間がかかってしまった自分を殴りたくなった。
 何も言わない私を不思議に思ったのか僅かながらに不安そうな、しかし、安堵したような表情にリアム様を抱き抱えている腕に力を入れて抱きしめる。少し驚いた様子のリアム様の体は微かに震えていた。





 —  —  —  —  —  —  —  —  —  —  —  —  —  —  — 





 リアム様を抱えたまま動かない私にリアム様が本格的に困惑し始めた頃、男を吹き飛ばした方から呻き声が聞こえてきた。その声にハッとすると同時にリアム様に気をとられて忘れていた怒りが湧いてくる。
 私に声をかけても中々反応が無いものだからうとうとし始めてしまったリアム様を壊れ物を扱うかのようにそっと地面に下ろした。そのまま衣服を元いた所で着てくるように促す。「分かった。」と軽く返事をして去る背中が心細げに感じて胸が痛む。
 だが、いたしかたない。暴力的な場面をリアム様に見せるわけにはいかない。

 さて。どうしてくれようか。

 にこにことしながらあまりの痛みに顔を歪めている男に近づいていく。ぐったりとしていた男は笑顔で近づいて来る私を見て助けてくれると思ったのか這いずって足を掴んできた。

 「なっ、なぁシアン。この際、サボってるのがバレてもいいから誰か呼んできてくれよっ。ふ、不審者が。魔法を使う不審者がいるって!!」

 男が血走った目で言う。本当に馬鹿な奴だ。どうやら此奴はリアム様が魔法を使ったと思い込んでいるらしい。自分たちが散々魔法の使えないリアム様を馬鹿にし、虐げてきたというのに。
 思わずはぁ、とため息をついて足にくっついた男を蹴り飛ばす。再び木に叩きつけられた男は何がなんだかわからないというような顔でこちらを見ている。つくづく残念な奴だ。
 暫くは痛みで動けないだろう男を一瞥してリアム様を追いかけようと背を向ける。

 「おっ、おい!どういうことだよ!?」

 男は頭でも打ったからか未だに状況が飲み込めないらしい。ああ。頭が弱いのは元々か。
 それにしても大した信頼関係もない私のことをよくここまで盲信出来たものだ。未だに私が助けてくれると思っている男に現実を突きつけてやる。

 「どういうこと、とは?よく私に助けを求めますね。私が貴方みたいなゴミ屑を助けるとでも?寧ろ殺さないだけ感謝して欲しいくらいですよ。」

 そう。こんな使用人如き殺ろうと思えばいつでもやれる。しかし、殺らないのはリアム様の為だ。もし私がこの男の血をつけて行ったら心優しいリアム様は心配するだろう。
 だから殺らないだけ。
 今度こそ震える男を置いて駆け足でリアム様の元へ向かう。今、リアム様は怖い思いをしていないだろうか。いくらリアム様に見せたくなかったとはいえ離れるべきではなかったのでは?そんな考えが次々と頭をよぎる。
 こんなことになってしまって一体どう謝罪すればいいのか。そもそも私が屋敷の中で足留めをくらってしまったのがいけなかった。
 もしかして私を引き留めたあの男は全て分かっていたのでは無いだろうか。そう思案しだしたが、すぐに視界に入ったリアム様に意識が逸れた。

 (今は兎に角リアム様をお護りしなくては。)

 決意を新たにして1人佇む主人に駆け寄っていった。




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