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帝国の赤い死神~ライラック王国編~
企む王子様2
しおりを挟むオリオンの指示に従い、兵士たちは表立って町を捜索していた。もちろん裏でも捜索している。
大事なことだが、駆け落ち扱いではなく、あくまでもミナミの捜索だけだ。
王都の景観を守るため、大げさな魔力を使っての捜索は禁止されている。
それを幸いだとオリオンは思っていた。
この規則は自分が王になっても継続させようと決めた。
両方の兵士たちの報告を、下手な情報流出を避けるためオリオンは、自ら聞いていた。
情報量が多く、なかなか、骨の折れる作業だ。
それだけでなく、葬儀の来賓の準備もある。
1週間ほどかけて弔う予定であるが、弔問客の連絡や弔電の取り扱いなど気を遣うものが多く、気長に構えていられない。
頼りたい大臣は罪人であるうえに、ホクトも罪人だ。
嫁いだ妹のアズミは他国の人間になっている。
兵士以外は、帝国に構っている暇すらない状況だ。
兵士ももちろん暇はないのだが、王国側全体に余裕が無い。
悲しんでなどいられない。
正直、オリオンは牢からホクトを引きずり出して手伝わせたい。
「見つかりそうか?」
疲れて一休みをして居るオリオンのことなど知らないような気楽な声がかけられた。
リランだ。
彼等は葬儀の際の警備の手伝いを申し出てくれているが、弔問客に対して威圧にしかならないため何もしないように伝えている。
まして、他国とのやりとりなど任せたら最後、乗っ取られかねない。
だからと言って、ミナミの捜索を任せるわけにはいかない。
「葬儀の期間中には見つけたいと思っている。」
「手伝うと言っているのに…聞いたぞ。お前が指揮をむしり取ったとな…」
「貴族共か?」
オリオンはホクトからミナミの捜索の指揮権を取ったところにいた貴族たちを何人か思浮かべた。
頭も軽いが、口も軽いようだ。
「力関係がはっきりすると彼らは協力的でいい奴らだ。」
リランは嘲るように笑った。
そりゃあ、圧倒的な戦力差を見せられたら保身に走りやすい奴らは波風を立てないようにするはずだ。
帝国の悪口を散散言いながらも、力には勝てない。
かというオリオンもそうだ。
帝国を卑しいと散散言った。
「俺に何て言ったか覚えていないのか?手伝わせるわけないだろう。」
オリオンはリランがミナミとホクトを人質発言したことをよく覚えている。
公式なものではないし、そのような会話があったことは知られてはいけない。
リランは両手を上げて何を言っているのか分からないようなとぼけた顔をしている。
ふと、自分の周りにいる兵士以外の兵士が目についた。
オリオンは歩き出し、リランも共に歩くように促した。
もちろん護身用の剣は装備している。
対して、リランは丸腰だ。
「ホクトには会わせてもらえないのか?」
オリオンは視線を泳がせたことを気付かれないように、触れにくい話題を出した。
「弟想いだな。父親を殺したのに…いや、殺害に協力したか…」
リランは周りを見渡しながら言った。
オリオンの思った通り、リランは彼に続いて歩いていた。
彼は他の者に比べてオリオンに警戒をしていない。
いや、完全に優位に立っていると思っているのかもしれない。
また、比較的心を開いてくれているのもあるだろう。
上から目線で威圧的に物を言うのが得意なオリオンは、人をだますことをしたことが無い。
それは小細工だと思っていたし、汚いことだと思っていたからだ。
だが、背に腹は代えられない。
不自然に増えた兵士たちの存在を感じながら、オリオンはわざとらしくリランを見た。
思った通り、リランはオリオンの変化に気付いた。
彼の空気が変わった。
張りつめた、ピリピリとした警戒したもの。
リランはオリオンに対して最大の警戒を向けた。
それを分かった上で、オリオンは自分の護身用の剣に手をかけた。
リランの警戒が、集中力が全てオリオンに向いた。
それでよかったのだ。
ザッと、リランの後ろに3人の兵士が剣を振り上げ立っていた。
それに気づいた帝国騎士たちが、慌てて走り寄ろうとしていた。
「死ね!!死神!!」
兵士たちは血走った目をリランに向け、剣を振り下ろした。
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