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ライラック王国~ダウスト村編~

勘繰り合う青年たち

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 取り押さえられた盗賊たちを見て、村人たちは飛び上がり喜んでいた。

 ただ、まだ警戒は怠れないことから、数人の村人が武器を持って村の周辺に向かった。



 マルコムとイトは取り押さえられた盗賊を確認し、ついでに馬も捕まえ武器も没収し村に寄付するように渡した。



「イト殿は知っていますが、あなたは…いったい。」

 村人はマルコムを見て訊いた。



 イトも腕が立つような動きであったが、マルコムのほうが印象が強いのだろう。

 魔力も使わず、槍を一本で馬に乗った複数の男とやり合ったのだ。

 しかも打ち負かせている。



「ガイオさんの、村長の客ですよ…」

 マルコムは深く言わずに突き放すような口調で言った。



 その様子に村人は深く聞かずに礼だけ言った。

 訳ありの客が多い村にとって、マルコムの様子は追及しないのに十分だった。



「…お前、本当に何者だ?」

 イトは村人たちとは違って、マルコムを追求するように見ていた。



「お互い下手な勘繰りは無し…じゃないの?」

 マルコムはイトを睨むように見て言った。



 イトはマルコムの言葉に困ったように頭を掻いて溜息をついた。



「とにかく、俺達は家に戻ろう。ガイオさんに聞く話も沢山あるしね。」



「…だな。」

 イトは未だにマルコムを探る様に見ている。



 マルコムはイトの視線に溜息をついた。





「…その刃物…」



「あ?」



「不思議な戦い方だ。俺は初めて見たよ。それに魔力の扱いもなかなか上手い。」

 マルコムはイトを見て言った。



 その言葉を聞いてイトは少し満足げに笑った。

 マルコムは眉を顰めて舌打ちをした。



「おお。そうかそうか。俺の戦い方が気になるのか。」



「俺は最低限しか答えないし、お前が下手なことをするやつだってわかったらそれ相応の措置を取る。」

 マルコムは冷たい声色で言った。



「外見は本当に優男なのに、その顔の傷と目つきや口調のせいで損しているな。モニエル君は」



「下手なことを言うなら何も言わないよ。」



「悪い悪い。えっと、これは…」



「話は、ガイオさんやイシュ、お嬢さんがいる前で頼むよ。」

 マルコムはイトを睨むと、ガイオの家の方に向かった。



 イトは困ったように笑うとすぐにマルコムの後を追いかけた。



 ガイオの家の前には、待ち構えていたようにガイオが立っていた。

 警戒するような目をマルコムに向けている。



「君のことは知っているんだね。」

 マルコムは後ろを歩くイトを横目で見て言った。



「まあな。…とにかく中に入ってからだろ。」

 イトは早くマルコムに聞きたいことがあるようで、急かした。



 それはガイオも同じようだ。



「アロウから連絡を受けて腕が立つとは聞いていた…だが…」

 ガイオは言い淀み、言葉を止めた。



 マルコムとイト、ガイオはまた、客間にまで上がった。



 客間には、未だ警戒をしたままのシューラが刀に手をかけてミナミを守るように立っていた。

 その様子を見てマルコムは思わず笑った。



 マルコムとシューラはとりあえず付き合いは長いが、心を開くというべきか、感情的な心が絡むような関係ではない。

 というよりもそんな話をすることはなく、ダラダラと気が合うから共にいたのだ。

 そして感情的になることなど少なく、お互いいい年なのだから自己完結できる。



 そんなマルコムから見ても、シューラは短時間でミナミにかなり懐いているようだ。

 彼が自己完結できないことだったのだろうが、ミナミが思った以上に面倒見がいいのだ。

 あと絶対に認めないだろうが、二人の精神年齢が同じくらいなのも大きい。



 何よりも決定的なのは、喪失感の共有というべきだろう



 マルコムは自分で結論づけて納得していた。



 そんなことを思われているとは思っていないシューラはマルコムの表情を見て眉を顰めた。



「なんだよ…」



「別に…もう大丈夫だから警戒を解きな。」



 シューラはマルコムに不審そうな目を向けながらも刀から手を放し、ミナミの横に腰を掛けた。



「俺達の勇姿見てた?」

 イトがミナミを流し目で見ながら訊いた。



「私…座っていたからあまり向こうまで見えなかった…」

 ミナミが残念そうに申し訳なさそうに言った。

 何故かイトではなくマルコムを見てだが。



 イトは少しがっかりしたように項垂れた。



「僕は見ていた。…独特な戦い方をするね…」

 シューラはミナミとは違いイトを見て言った。

 イトがやっていたように右手で何かを投げる素振りをした。



「見えていたのか。俺からすると、モニエル君の戦い方の方が独特だ。というよりも無謀だ。」

 イトは肩を抱いて怯えるような素振りをして言った。



「俺は自信があるし、見ただけであいつらには有効な戦術だと思って戦った。」

 マルコムは呆れたようにイトを見て言った。



 4人が話していると、廊下からガイオがお盆に乗ったお茶を持ってやってきた。

 ガイオは足で扉を閉め、ミナミとシューラが座るソファの前にあるテーブルの上にお盆を置いた。



「二人も座ってくれ。」

 ガイオはミナミたちと向かい合う位置にあるソファをマルコムとイトに勧めた。



 特に断る理由も無いためマルコムはソファに腰かけようとした。



 が、イトが座ったのを見て座るのを止めた。



 何となく隣に座りたくない気がしたからだ。

 イトが少し悲しそうにマルコムを見ていた。



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