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ライラック王国~プラミタの魔術師と長耳族編~

お茶会をするお姫様

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 イトが気を遣って嗜好品をいくつか用意してくれた。

 その中にお茶があった。



 なので、それに加えてマルコムが作ってくれた乾かした赤い果実をお茶請けにして、ミナミはエラたちとお茶会をすることになったのだ。



 ミナミは久しぶりのお茶会に嬉しくなったが、どうして許可されたのかはわからなかった。



 茶器は揃っていないが、カップとお皿があれば大丈夫だ。



 エラとシルビ、それにミナミが包帯を変えた褐色の肌の子ども。

 3人を見守るように初老の男と青年がいる。



 ミナミたちはエラとシルビ以外の他の3人の名前は知らない。



 ただ、ここで名乗るのを請うのは違う気がするのでミナミは聞かなかった。

 何せ、ミナミたちも訳アリだと察してもらっているので、こちらを触れないでくれているのに聞くのは不公平だからだ。



 マルコムは聞きたいと思っているらしく、さっきからしきりにミナミに視線を送っている。



 しかし、ミナミはお茶会の空気を悪くしたくないので聞かない。



 もし聞くとしても、お茶会が終わってからだ。



 シルビは相変わらず銀色の髪が綺麗だし、エラの黒髪に見える青みのある光沢も神秘的で綺麗だ。



 見たところ、エラはいい生活をしていたのだろう。

 プラミタがどういう国なのかわからないが、魔術師の地位は高いようだ。



 そういえば、エラの親が第一位魔術師とシルビが言っていた気がする。



「あの…この前は」

 褐色の肌の少年が恐る恐ると言った様子でミナミに話しかけてきた。



 シルビも水浴びの時はこんな感じだったが、それ以降は子どもっぽさが少ない気がする。



 まあ、いいや。

 ミナミは声をかけてくれた少年に笑いかけた。



「なに?」



「あの…助けてくれてありがとうございました。」

 少年はまだ高く響く声で初々しく言った。



 可愛い。



 ミナミは末っ子なので、下の子どもを可愛がることは無かった。



 なので、猫かわいがりしたくて仕方ないのだ。



「あのね、お薬とかを用意したのは私の隣にいるイシュなの!

 すごい用心棒なのよ!」

 ミナミは隣に座るシューラを差して胸を張った。



 というよりもほとんどシューラが手当てをした。



「はい。イシュさんも…その癒しありがとうございます。

 とても緻密な魔力の扱いで…驚きました。」

 少年はシューラを見て、今度はかしこまった様子で言った。



 彼は癒しを使って助けてもらったことがわかっているようだ。



 シューラが一瞬少しだけ口角を下げた。



 おそらくシューラが癒しの魔力を使ったと公言したことに対してだろう。



 この少年はシルビとは違って、うっかりと何かを漏らしてしまうことがありそうだ。



 それと、シューラが静かに癒しを使ったことの理由を考えていないのだろう。



 事実、少年の言葉を聞いてシルビ以外のプラミタの者たちのシューラを見る目が変わった。



 惑わしと同様に癒しは貴重であり、惑わしよりも便利だと思われているから当然だろう。



 あと、あの少年がシューラの魔力の扱いが緻密だと言ったのもあるだろう。



「僕は職業柄治療する機会が多いから慣れているだけだよ。あと、君が体力を持たせてくれたのがあるから自分の身体を誇りなよ」

 シューラは彼なりに気を遣って答えた。



 ミナミはぶっきらぼうだが、優しさの見えるシューラの言葉にほっこりした。



 実際はこれ以上探ったり関わってもなにも言わないという意を込めているのだが、ミナミの頭の中ではシューラは優しい子に変換されている。



「それにしても、ミナミちゃんは綺麗ね」

 エラはにこやかに笑いながらミナミに言った。



 ミナミは褒められて嬉しいのでニコニコとありがとうございます。と言った。



 最近褒められるのが多くて嬉しい。



 照れて体をよじってしまうのを隣に座るシューラにつつかれて指摘された。



「エラさんはとても賢そうで、できる女性っていう感じで知的美人って感じで…そのかっこいいですよね」

 ミナミは率直な感想を言った。



 エラは自信に溢れ、とても賢そうなのだ。プライドが高そうでいけ好かないとマルコムは言っているが、ミナミはかっこいいと思う。

 理知的に光る水色の瞳もかっこいい。



 心の底から言われていると分かったのかエラは照れくさそうに微笑んだ。



「そうだ。きちんと紹介しないと…」

 エラは褐色の肌の少年に目を向けて言った。



 少年は初めて自己紹介をしていないことに気付いたようで、飛び上がるように驚いてから姿勢を正した。

 その様子が初々しくて微笑ましい。



 ミナミはニコニコと笑顔で見ていた。

 エラは困ったように笑っている。



 褐色の肌の少年は、都会的な顔で年齢にしては大人びた顔立ちだろう。

 全体的に線の細さを感じる骨格で、怪我をしていた時は肌艶も悪かったのでよくわからなかったが、将来はそれなりの美青年になりそうだ。

 精悍で凛々しい顔つきのシルビとは結構対称的だと思う。



「僕はビエナと言います。

 えっとプラミタの第8位魔術師で今年で10歳になります。

 えっとエラさんのご両親に後見人になって貰っていて…えっと…」



「ビエナ君。そこまでの自己紹介は戸惑わせるから、名前だけで大丈夫だよ。」



 大きい声だが、たくさん話そうとしている褐色の少年はビエナという名前らしい。



 色々な情報を話してくれたが、途中でシルビが優しく止めた。

 エラもシルビの行動に頷いていたので、どうやらビエナは話しすぎたらしい。



 ビエナは日に焼けたように見えたが、先天的に褐色の肌のようだ。

 確かに日焼けというにしては肌理が細かく瑞々しい。

 この前小屋で見たときは茶色に見えた髪だが、赤みがかかった金色という感じだ。



 派手なミナミの金髪とは違って落ち着いた感じの金髪だ。



 瞳は紫色で、宝石を思わせるような美しさがある。



「ミナミさんはその…イシュさんと親しいのですか?」

 ビエナはミナミとぴったりとくっついているシューラを見てもじもじとしながら尋ねてきた。



 ミナミは何故それを聞くのかわからなかったが、別に隠す事でもない。



 シューラとは逃亡の道連れで用心棒という間柄だけではないとミナミは思っている。



 色々共有したし、短時間で仲良くなった。



「うん。親しいよ。イシュは私に色々新しい知識を教えてくれるし私も色々教えているの」

 ミナミは明確な言葉は避けたが、嘘は言わずに答えた。



 言葉通りシューラはミナミに魔力を教えてくれるし、旅の知識も教えてくれる。

 ミナミも色々シューラに教えているつもりだし、事実だ。



 ただ、何を思ったのかビエナはミナミの答えを聞いてシュンとなった。

 理由がわからずミナミは首を傾げた。



「どうしたの?」

「…いえ…ミナミさんは綺麗ですから…当然ですよね」

 ビエナはものすごく残念そうだ。



 何が残念なのかわからないが、ミナミはとりあえず褒められたのでお礼を言った。



 視界の端でマルコムの肩が震えているが、よくわからないので首を傾げた。



 エラはミナミに好意的で久しぶりのお茶が楽しいと話したし、干した果物も美味しいと好評だった。

 シルビは会話に入るというよりもビエナが余計なことを言わないようにやんわり誘導して、ビエナはミナミに村の話とかを色々聞いてくれた。

 あとは船に乗った話とかだ。



 帝国やプラミタ、魔術の話には一切触れないというのが不自然かもしれないが

 それがこのお茶会のルールなのだろうと思ったのでミナミは何も触れなかった。



 初老の男と後ろについている青年については紹介が無かったので聞いていない。

 その代わりにこちらもマルコムについては何も話していない。



 もしかしたらマルコムが接触しているかもしれないが、話題に出なかったのならば出さない。

 完全に用心棒や護衛としての役割だが、プラミタの面々からするとミナミと治癒に働きかけたシューラが重要だろう。





 お茶会がは楽しく終わって、ミナミはエラとビエナが好きになった。

 話していて楽しいし、二人とも頭がいい。



 シルビも賢いが、二人よりも世間ずれしているので少し異色だとミナミは思っている。

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