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六本の糸~地球編~
14.不安定
しおりを挟む平和で安全と名高いドームが破壊され、中の建物に死神のように剣を立てる大きな人型が浮かんだ。
その人型は、血と人の憎悪を連想させる赤黒い赤銅色に辺りを覆う煙が混ざり、もっと深く重い黒が見えた。その手には大きな人型にピッタリの大きさの剣が握られていた。
赤銅色のドールは剣を立てた建物を念入りに何度も破壊した。何度も刺し、何度も叩いて徹底的に潰していた。
赤銅色のドールが破壊し続ける建物を始めとして、かつて、平和なドームと名高かった面影はなく、空気漏れをおこし、どんどん第6ドームは汚染されていた。
「・・・・・壊れちゃえ・・・・こんなモノ・・・」
ドールの中にいたレイラは目の前に壊れ続ける建物を見て無邪気に言った。
ドームを破壊し、更にその中の建物を徹底的に壊すことを、いくら憎かろうと、彼女にはできないはずであった。
何があってもドームの破壊に手を染めるはずがないのであった。
「・・・・地連の軍なんか消えろ。」
彼女は剣を立てるのは軍の建物であった。抵抗する間もなく無残に破壊され、更地にするように何度も剣を振った。
不幸中の幸いは、その建物が他の建物と離れた場所にあったことだ。
破壊されているうちに、ドームの破壊を受けた住民たちは避難することができた。だが、壊されている建物はその逆であり、避難することなどできない。
彼女は、冷たい視線で下にある崩れた建物を見下ろし、何度目になるか分からないほど刺した剣を抜いた。
「・・・・ふふふ」
満足感に静かに笑っていると背後に何か動く気配がした。
赤銅色のドールに乗ったレイラは気配の元に振り向いた。
「・・・・・くそ。」
レイラは剣を構えて気配の先を睨んだ。そして、忌々しそうに舌打ちをした。
彼女が見た先には、避難を手伝っていたのであろう戦艦があった。ドームの外にある戦艦が見えるほどレイラはドームの壁を破壊し尽くしていた。そして、その戦艦は地連軍ではなく、協定上攻撃をできない中立国の船であった。
「・・・・ネイトラル」
彼女は気まずそうに言った。
戦艦の様子を観察するようにしていると、戦艦の中から1体のドールが出てきた。
真っ白な、純白のドールであった。
彼女はドールの方に手を向けて両手を上げた。人間で言うと攻撃の意図はないという恰好だ。だが、いつでも攻撃できる体制であることを知っている者は知っている。この手からはレーザーが出るのだから。
すると純白のドールは通信を繋げてきた。登録機体以外のドールに通信を繋げるのはなかなかコツがいる。
『・・・・ゼウス軍兵士か?・・・こちらネイトラルのドールだ。』
「・・・・・攻撃の意図はない。」
『見ればわかる。ただ、君が壊したのは地連の軍の設備だけではない。一般市民の救助の手伝いをしろ。』
女の声であった。どこか引っかかる。だが、そんなことは気にしていられない。
「そこのドームは地連のもの。救助を手伝うつもりはない。」
『そうか・・・・では、君を危険分子と認識し排除する。』
そう言うと目の前の白いドールが片手に持った銃を向けてきた。
銃など撃てるはずない。レイラは鼻で笑った。
「できるか?・・・・ネイトラル程度のドールで」
ゼウス共和国のドールでさえ、武器の装備が手一杯なのだ。こんな時に冷静に自国のドール技術を考えて誇らしくなっていた。
『できないと思っているのか?』
通信の向こうの女は動じた様子を全く見せなかった。それどころか自信があるような声色であった。レイラはそれが気に食わなかった。
「・・・・中立国のドールだからって安全ってわけじゃないのよ。」
彼女は片手に再び剣を持ち、勢いよく剣を振りながら突進した。
白いドールはひらりとかわした。
レイラは何度も白いドールに剣を振った。だが、全てかわされた。
破壊を尽くして興奮して冷静でないのもあるが、華麗に舞うように白いドールは彼女の攻撃をかわした。
「な、私の・・・このドールの攻撃を」
彼女は信じられないものを見るように白いドールを見た。
『・・・・もう一度言う。救助の協力をしろ。』
「・・・・地連なんか・・・」
『ここは地連のものであるが、中にいるのは一般市民だ。ネイトラル市民も多くいる。』
「・・・・地連のドームにいる時点で敵よ。」
『ならば、ここいるゼウス共和国の者がいても同じことを言うか?』
「うるさい。地連寄りだな・・・・・中立国のくせに・・・」
そう言った途端鋭い痛みが彼女の頭に響いた。その痛みはまるで彼女が戦うのを止めるようであった。
『・・・・待て!!』
そう女が言った時は遅かった。
レイラは痛みから逃げるように飛び去って行った。
「・・・・痛い、頭が、割れそう・・・・助けてよ・・・・」
彼女はドールの中で女は呟いた。その眼には涙が浮かんでいた。
破壊の限りを尽くした赤銅色のドールが飛び去った後、白いドールの近くに小型飛行機が飛んできた。どうやらそれも戦艦から出てきたものの様だ。
『総裁・・・・大丈夫ですか?』
飛行機から白いドールに通信が入った。
「大丈夫だ・・・・わざわざすまないな。心配をかけて悪い。テイリー君。」
白いドールに乗ったディアは飛び去った赤銅色のドールを追うように遠くを見つめていた。
『無理しないでくださいね総裁。とりあえず病み上がりなんだから。』
「ああ、無理をするつもりはなかった。」
『しっかしあのドール見たことないです。ゼウス共和国のやつですかね。あいつら実験で相当強力なパイロットを増やしているらしいですよ。』
テイリーの声には軽蔑が滲んでいた。
「・・・・そうだな。だが、実験で作られてにしろ、中の者も相当だった。闘いが長引けば負けてたかもしれないレベルだな。」
ディアは冷や汗を拭うように額に手を当てた。
『・・・・不吉なこと言わないでください。総裁。自分はドールでは守れないのですから。そんなことを言うなら乗ってい欲しくないです。』
テイリーはきっぱりとディアに言った。
「そう言うな。私も中々強い方だ。だが、ゼウス共和国の実験がこのレベルに達しているのなら、我々も油断していられないな。」
『とにかく、シェルターに避難した市民の受け入れをしましょう。』
「そうだな。」
ディアと小型飛行機に乗ったテイリーは戦艦に戻り、第6ドームの中でも市街地の方に向かった。
汚染された地球を象徴するような、荒れた大地を颯爽と飛ぶ1体のドールがいた。
飛び続けるドールは何かから逃げるようであり、その中では一人の少女が何やら怯えていた。
「・・・わ、私はなんてことを・・・・どうしてこんなことを・・・」
彼女の手は震えていた。目には涙が浮かんでいた。
「・・・・ドームを壊すなんて、クロスのことをコウのことを忘れたの・・・・私は・・・」
彼女は自分の行いをひどく後悔していた。両手を見て歯を食いしばって何度も自分を傷つけるように唇を噛み、開いた両手は自分の手ごと握り潰すほど握った。
すると何やら通信が入った。
『ヘッセ少尉大丈夫ですか?・・・・・任務が終了したら戻りましょう・・・・』
どうやら彼女の部下からであったようだ。
「うるさい・・・・先に行け・・・・・・」
レイラは投げやりに部下に言い捨てると乱暴に通信を切った。
彼女はまだ痛む頭を抑えながら地面を蹴り高く飛び立った。彼女の向かう方向は彼女が壊したドームの方向であった。
親のいない彼と自分はいつも一緒だった。たまに彼の妹が恨めし気に自分を見ていたが、自分は構わず彼といた。
誰もいなかった私には彼がいた。そして、彼の他にもできた友達は親友と言った。
親友という言葉が私の中に無かったころ、彼に訊いた。
「ねえ・・・・親友ってどういう意味?」
「それはね、死ぬまでずっと友達ってことだよ。」
頭のいい彼は私の知らないことをいつも教えてくれる。たまに余計なことも教えてくれる。
「死ぬまで?」
「そう。何があってもずっと友達ってこと。」
彼が言うには友達の最上級が親友だと言っていた。最上級が何かは分からなかったが、一番と言われたらピンときた。
「そうだよ。一番である上に不変なんだ・・・・えっと、変わらないってことだよ。」
難しい言葉を使われると私は鼻に皺を寄せる。その様子を見て彼は慌てて説明を加えた。
「じゃあ、私死ぬまで一人になることない!!」
彼の説明に飛び上がって喜び、私ははしゃいだ。
「僕もだよ。」
珍しく彼も私とはしゃいだ。
「よかった」
彼の様子を見て更に変わらないものだと思った。
「私達・・・・ずっと友達なんだ・・・・いや、違うね。」
親友が友達の最上級なら、一番大切な人は何というのだろう。言葉を知らない私は首を傾げて彼を見た。
彼は私に優しく微笑んだ。彼の瞳の赤が、私にとってこの世で一番綺麗なものだった。
「私は、クロスがずっと一番。親友より上って何?」
彼は困った顔をした。当然だ。家族がいないと言っても、彼には妹がいる。私も大切なのだろうが、妹も大切なのだ。優しい彼は意地の悪い私の問いにいつも黙る。
「・・・僕だけが、答えを出すわけにはいかない。」
彼は綺麗な栗色の髪を掻き上げて、遠くを見た。
「いつか、ユッタにも一番が出来た時に、僕は君に答えを言うべきなんだと思う。」
彼は妹思いだ。私にもこんな兄が居たらきっと違っただろう。でも、彼が兄でなくてよかったとも思っている。
彼の瞳の赤は私の一番好きな色。それと同時に一番嫌いな色。彼を包んだ炎の色でもあるからだ。
出発準備に入ったシャトルの中は静かであった。
「どこに行っていた?」
席に着くとロッド中佐がイジーの方を見て訊いた。サングラスをしているから起きているのか寝ているのか全く分からない。
「・・・・いえ、お手洗いの場所を確認していました。」
イジーは気まずそうに言った。
「珍しいな、君が自分の乗るものの確認を乗る前にしないとは。」
ロッド中佐は珍しくイジーに対して棘のある言い方をした。
イジーは確信した。
《この人・・・・私が何しに行ったのか気づいている。》
イジーは手元に置いていた名簿表にまた見た。
ずらりと並ぶ名前・・・・さっきと同じはずなのに
今度はどこにも【クロス・バトリー】の名前がどこにもなかった。
イジーは目を疑った。
「どうした?」
ロッド中佐がいつもと変わりない口調で聞いてきた。
「・・・・いえ」
イジーは隣に座る自分の上司に確信を抱いた。この人はクロス・バトリーの存在を隠したがっている。
だが、それと同時に彼の存在を主張するような手段にも思えた。
名簿に載らないようにするのは簡単だ。なぜ自分には隠すのに名簿には載せたのだろうか。
ただ、言えることは、この船にはきっとクロス・バトリーが乗っている。
レイラは何でこんなことをしているのかわからなかった。
彼女はさっき自分で壊したはずのドームの憎んでいた建物に向かった。
さっき切ったはずの通信が入った。
『ヘッセ少尉・・・・これ以上の単独行動は・・・・・』
レイラは通信の受信を拒否した。あれから1時間近くじっとしていた。
何か引っかかるものがあった。自分の行動がわからなかった。
憎んでいてもドームを壊すことはするはずはなかった。
その行為は、大切な友人、特別な人、彼らを裏切る行為であったからだ。
レイラは自分がほぼ更地にした建物の跡地に着くとドールから降りた。外気は汚染されているものが中心になっており、マスクが無いと長時間の活動は苦しそうだった。
建物から離れた住宅街では救助活動が行われている。
様子を見ると、空気汚染の被害はあっても死人は出ていないようだ。
この建物以外は。
隠れるようにドールを置くと彼女はロックをかけ、外気用マスクをして瓦礫の山に降りた。
ボコボコする地面が懐かしく悲しい感触だった。いてもたってもいられなくなって走り出した。
徹底的に破壊した建物には人の名残しか見えなかった。残酷な光景だった。
それを見た途端彼女は罪悪感に襲われた。ひどく胸が痛んだ。
自分で壊すという確実な意思を持って壊したものなのになんて残酷なことをしたのか、彼女は手を伸ばした。誰でもいいから生きていて欲しい。あんなに殺したがったのに、自分でもわからなかった。ただ、誰もいないのに、誰も頼れないのに縋りたかった。
「・・・どこ行ったの」
急に頭が痛んだ。鋭い痛みが彼女の脳内に振動のように響いた。
「・・・・・ぐ、痛い・・・・ああ・・・う」
思わず体を屈ませた。何やら視界がぼやけてきた。
ドールに乗っていた時の強い意志が嘘のように彼女の心は乱れた。
「・・・・クロス、パパ」
いないはずのものを呼んでいた。
「・・・・ユイ・・・ディア・・・・ハクト・・・・・・・コウ」
彼女は最愛の友人たちの名前を不意に呼んだ。
彼女の声に反応するように物音が聞こえた。
レイラは飛び上がり、音の元を探った。壊滅的に壊されたが、どうやら建物には地下があったようだ。
瓦礫の下敷きであるから、相当無残なものだろう。だが、彼女は地下部分に流れ込んでいる瓦礫を出来る限り避けようとした。いくら強いとはいえ、一人の力では難しい。そのうえ瓦礫の一つ一つが大きい。こんなのを食らったら、ひとたまりもない。そう判断したときにまた罪悪感が襲った。だが、物音にうめき声混ざっていた。
「・・・・生きている。」
レイラはそれがまるで自分の声に答えてくれていたように思えた。
声の元を探る様に彼女瓦礫を懸命にどけた。
「どこにいるの!?・・・・返事して。」
彼女は何かに縋るように必死であった。絶対に救わないといけない。
うめき声の主が無事な理由がレイラは分かった。
瓦礫をどけていくと、見覚えのある無機質な凹んだ物体が見えた。
凹んだドールのコックピット部分だ。それが壁になり瓦礫の直撃を防いだようだ。
だが、凹みが大きく中の人が無傷とは思えなかった。
「ここね。返事をして!!」
レイラはコックピットをガンガンと殴りつけた。
「誰・・・だ?」
声の主は男だった。声に力はなく、相当弱っていそうだった。
「いいから。生きているのね。」
「・・・・友人に、伝言を・・・・」
どうやら声の主は自分の命をあきらめ伝言をレイラに託すつもりであった。
「待って、助けるから・・・・」
レイラは躊躇うことなくコックピットの扉を剥がしにかかった。途中で何度も伝言を聞いて欲しいと言われた気がしたが、その声を聞くつもりがなかった。
「大丈夫よ。もうすぐ出られるわ。」
元気づけるように言うと声は止んだ。剥がそうとしてもなかなか扉は剥がれなかった。内側からロックをかけているのだろう。ドールで戦うのだったら当然だ。レイラは腰に付けていた銃で継ぎ目を狙って壊した。破片は蹴散らした。
開かれたコックピットは血の匂いが充満していた。出血をしているのがわかり慌てた。
下から咳き込むような声が聞えた。どうやら砂埃と汚染された空気が流れ込んだようだ。
レイラは慌てて自分のつけている外気用マスクを外した。
「もう出られるわよ。」
レイラはやっと見えた声の主に向かって笑って言った。
「・・・・あ、ありがと・・・。」
どうやら声の主は地中に長くいたため外の光がまぶしく何も見えなかったようであった。
そして、出血が多く意識が朦朧としているようだ。顔色が悪いが、相当若い。同い年くらいの少年だった。
彼に自分の外気用マスクをつけてから引き上げた。
「・・・・大丈夫?」
そう問いかけると少年は
「・・・・はい」
と言い、意識を失った。だが、生きている。
レイラは少年を救ったことで救われた気がした。
ドールの材料調達が与えられた任務だった。だが、蓋を開けてみればひたすら敵に追われる。
前と違い今回は何も乗せていない。ドールは乗せているが、材料はまだだ。
ハクトは迫りくる敵の気配に舌打ちをした。できるなら見逃してほしい。でないとこちらも見逃せないのだからだ。
「敵発見・・・・砲撃しますか?」
レーダーに映った敵を見つけ、ソフィはハクトの様子を窺った。
「いや・・・・ドールで出てもらう。」
苛立っているのだろう。少し声に力が無く、投げやりにハクトは言った。
ハクトが苛立つほど、戦艦フィーネは敵に追われていた。
最初の内は砲撃で退けていたが、対処しきれないほど追われる。
まるで、何かフィーネに目的があるようだ。
「・・・・お前等の言う通りにしているのに。」
ハクトは思わず舌打ち交じりに呟いた。リリーが不思議そうに見たが、何も無いように首を振った。
「ハヤセ二等兵、ハンプス少佐出てもらう。・・・・準備は大丈夫か?」
リリーに通信を指示した。即座に彼女は二人に繋げて通信を操舵室に繋げた。
『おっけー!!二等兵どのも出られるぜ。』
底抜けに明るいキースの声が響いた。事態が事態であり、彼のことを知るハクトはどんな心境でこのように振舞っているのか考えて胸が痛んだ。
『待ってました。艦長。』
嬉しそうに出撃を喜ぶコウヤの声がハクトの気持ちを更に痛めた。
「頼む・・・・では行ってくれ。」
ハクトは出撃許可をひどく投げやりに出した。疲れているのだろうと思われているが、砲撃指示や周囲の察知だけでない疲れが彼にはあった。
ひどく頭が痛み、頭を軽く押さえていると
「艦長・・・大丈夫ですか?」
心配そうにリリーがハクトを見ていた。
「ああ・・・・ここまでたくさんの敵に追われたことがなかったからな。」
ハクトは椅子に座り、珍しくモニターから目を外した。だいぶ疲れているのは見てわかった。
「艦長、しばらく神経を休ませてください。ここはドールに任せましょう。」
ソフィはハクトに休むことを薦めた。
「・・・・馬鹿言うな。死んだら何もない。この追手を撃退すれば休めるんだ。」
ハクトはそういうとまた目を閉じた。どうやら全部ドールに任せることはしないようだ。
しばらくの沈黙のあと・・・・
「・・・・1の大砲向きを変えずに撃て、4の大砲北へ10度動かして撃て。」
その指示に従って大砲は撃たれていく。
白銀のドールは以前乗った時よりコウヤの体になじんだ。まるで自分の手足の如く動く兵器にコウヤは感嘆の声を上げた。
「すごい・・・・前よりずっと動ける。」
コウヤは空を舞うように飛んだ。
「これが・・・・俺に与えられたドール・・・・」
『・・・・コウヤ君、君は・・・・』
コウヤのそんな動きを後ろから見ながらキースは不安を抱いていた。
可能性を秘めた兵士であるからこそ、コウヤの持つ不安定さはひどく目立った。
「・・・・ははは・・・・」
コウヤは何かに気づいたように片手を差し出し、手からレーザーを出した。あまりにあっけなく放たれたレーザーに向かって来た艦隊の先頭は対処できない様子だった。
「すごい・・・・こんなことまで・・・・・」
コウヤは感激し残っている戦艦に向かい始めた。速さは圧倒的であり、キースは追い付けない。彼を置いて行ったことで自分の力を実感し、さらに感動した。
そのまま新しいおもちゃを試すように、敵艦隊に突っ込んでいった。
『あほ!!二等兵!!何やってんだ?』
キースの怒声が響いた。
だが、コウヤはそんな声を気にせず艦隊の間を突っ切った。疾風のごとく飛び、両腕でひたすら破壊する。ただ不器用に動かすように見えるが、確実に破壊していた。
一つの戦艦が音を立てて炎を上げた。小さな爆発が起こりやがてそれは戦艦全体を包む爆発となり戦艦は炎の中で黒くなり
地面に分裂しながらばら撒かれていった。
「・・・・すごい・・・・この力があれば・・・・俺は・・・・」
コウヤのその言葉にはかつてザックを殺したことを悔やんだ痕跡はなかった。
コウヤは後ろにさらに控えた戦艦とドールの部隊に目を移した。
「・・・・お前等かわいそうだな・・・・」
コウヤはそう憐れみを込めた皮肉を呟き、腕を振るだけの不器用で暴力的な攻撃を振るった。
『今はこれでいいかもしれないが、・・・いつかガタがくる。君には、感情だけで意思が無いのだから。』
キースは鬼神の如く戦艦を沈めるコウヤを見つめ不安を確信として呟いた。
モニターに敵艦隊が沈んでいく様子が映り、操舵室は安堵に包まれた。
「艦長!!コウヤ君が活躍しています。これで艦長も楽になりますよ。」
ソフィは嬉しそうに言った。
「・・・・そうだな」
同意しながらもハクトはどこか悲しそうな顔をしていた。
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