あやとり

近江由

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泥の中

思考

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 冷静に考えろ。

 頭の中で自身に言い聞かせる。

 沈められた戦艦は別として、壊滅させられたドール部隊。

 攻撃の傷跡が語るのは・・・・



「敵のドールにやられた。」

 キースは考えをまとめたうえで呟いた。



『俺も同感だ。』

 落ち着きを取り戻したサリヤンは同意した。

『ドール隊に・・・・』

 ウォルトは言葉に憎しみを込めている。



「・・・・近い可能性が高い・・・・」

 考えをまとめずに呟いた。



『!?』

 ウォルトとサリヤンが驚いて息を呑んだ。



「あ・・・いや、すまん。今のは考えなしで言った。」

 キースは二人の反応で自分が何を言ったか、初めて自覚した。



『いや、キースの言う通りかもしれない。』

 黙って聞いていたマツ中尉が言った。

『そうだな。キースのように適合率の高い奴が考えなしで言ったことっていうのは、当たる。実際ドール戦関係ないレベルだ。』

 マツ中尉に賛成するのはソアレスだ。



「ソアレスまで・・・・」

『感じ取ったことは全て言え。お前はどうして考え付いたことを否定するんだ?』

 サリヤンが呆れたようにため息交じりで言った。キースはこの発言が意外だったが、意外以上に嬉しかった。



『思ったことを言うのが大事か・・・・あながち仲良し期間は間違いじゃなかったってことだね。』

 ウォルトが感心したように言った。

「ウォル・・・・」

 キースは言いかけた時何かに気付いた。

 首筋に、耳の裏に、風が吹くわけでないのに何かがそよぐ気配。鼓膜を震わせているわけでないのにうるささを感じる音じゃない雑音。

 何かの息遣いを感じるような生ぬるい感覚。冷たさもある。これは一つの存在からの気配じゃない。



「3体だ!!」

 キースは叫ぶより早く動き出した。



 流れるドールの破片を群れから弾き出した。



 それにめがけて何かが飛びかかる。

『!!!!』

『ひっ』

 サリヤンとウォルトが驚く様子がわかる。



「マツ中尉。3体の敵に遭遇。」

 ドール戦は単純だ。



「戦闘開始します。」





 ドールで殺し合う。神経を接続された機械の鎧。傷つけられれば痛む。付属の武器を持つドールもある。

 レーザー砲があると噂では聞くが、適合率が高くないと制御できないと言われている。

 ドールを動かすドールプログラムについての解明がまだのため、適合率という名の安全装置が付いていると噂だ。

 となると、簡単だ。

「俺がひきつける。」

 喧嘩だ。戦略だ。殴り合いだ。



 動きは適合率が高い方が有利である。ただ、実際の肉弾戦のイメージがないとスムーズではない。生身の訓練も重要である。



 キースは未だ確認できない敵に向かって飛び出した。



 瓦礫の群れから飛び出たキースを待っていたのかそれはいた。



 グレーのドールのようだ。キースの両脇にいる。待ち伏せではない。

 キースはそこにいることがわかって飛び出した。



 相手のドールはまさかここに来るとは思っていなかったようでキースを確認したとき、一瞬動きが止まった。いや、常に止まっているのだが、思考が止まったという感じだ。



 迷わず片方のドールに飛び掛かる。伸ばした手は相手の左腕、人間でいう肘の部分に引っかかった。

 ひっかけた指に力を入れそこを支点とし、宇宙という無重力空間を利用し体を振り回す。



 メキ

 指先に相手のドールに傷を与えた感覚がある。

 相手ドールと体を入れ替え、腹部を狙う。腹部にはコックピットがある。

 ゴキ

 流石に装甲が固い。

 だが、ドールに振動を送った。振動によりパイロットの三半規管がやられるのは知っている。

 たまにやられない化け物もいるが、それはほとんどない。



「俺に向いているドールの胴を狙え!!」

 キースは確認した片方のドールの気配を背後に感じながらウォルトとサリヤンに叫んだ。

 背後から近づいてくる殺気が撥ねた。



 流石ドール部隊に選ばれた。改めてそう思った。



 ウォルトが飛び出し敵を蹴り、サリヤンがウォルトの後ろに付き、反撃に対応できるようにしている。



 ゴゴ・・・ゴキン

 音が響いた。



 振り向くと先ほどキースが攻撃したドールが痛めつけた左腕を振り回していた。



「・・・・痛くないのか・・・・」

 神経接続をしている、ましてや関節部分は動きの精度を高めるために他のところ以上に接続が強いはず。そして、痛覚の同調も・・・・

『キース!!』

 サリヤンがキースをめがけて飛び出し蹴飛ばした。

 衝撃が響くがすぐにドールの体勢を立て直した。

 見るとキースが先ほどいたところに別のドールがいた。



 そういえば、俺は3体と言った。

 俺は自分で言ったことを忘れていたのだ。



『キース、サリヤン・・・・この3体のドール・・・・強いよ。』

 ウォルトは息切れをしていた。

『ああ・・・・それは俺も思った。平均すると俺より上の可能性が高い。』

 サリヤンは同意した。意外だったのはサリヤンが敵に対して素直に自分より戦力が高い可能性を発言することだ。



「・・・・二人とも、俺の合図で動いてくれないか・・・・・」

 またも、何も考えないで出た言葉だ。

 言って後悔するが



『わかった。』

『サポートか?』

 意外なほどあっさりと二人は了解した。



 キースは一瞬驚いたが、敵と対峙する状態でうかうかいしていられない。

「瓦礫・・・・突っ込ませる。」

 キースはそう言った。頭の中にはかつての戦友が操作ミスで瓦礫に突っ込んだ風景があった。



『・・・・・・』

 ウォルトは躊躇っているようだ。それはそうだ。瓦礫といえど、かつては同じ地連の軍人、しかも同じ作戦に参加したものが居たドールだ。

『わかった。』

 サリヤンはあっさりと了解し、キースの後ろに付いた。



 サリヤンは作戦に於いては驚くほど言うことを聞く。戦艦で言い合いをしてことを忘れるほどだ。

 ウォルトもサリヤンに倣いキースの後ろに付いた。



 目の前にいる3体のドールが動いた。キースに3体とも向かってくる。

「俺はしのぐ!!瓦礫を俺に構わず弾き出せ!!」



 キースの言葉通り、サリヤンとウォルトはキースをおとりに使うようにして瓦礫の群れに戻って行った。



 目の前に来るドールの腕を避け、次は掴まれる前に沈み、1体のドールの足を掴む。

 バタつく足の動きと無重力を利用し、キースは空中に飛ばされた。

 どうやらこの3体はキースを先に排除すべきと判断したようだ。

 飛ばされたキースについて来る。3体とも丁寧に。



 動きの滑らかさと切り換えの速さから、ウォルトとサリヤンの言った通りかなり強いことは分かった。

 だが、どうして視界からいなくなったサリヤンとウォルトを気に架けないのかは分からなかった。

 敵の落ち度だろうが、それはとても幸運だったのだろう。



 敵にドールの瓦礫が当たった。

 コックピットにしっかりと当てる。弾き飛ばすと言ったが、ここまで正確に飛ばすとは思わなかった。

 なにより、瓦礫を盾にし、武器にしてサリヤンとウォルトが突っ込んできたこと。

『キース!!』

 ウォルトが叫んだ。

 見るとウォルトは弾き出した瓦礫をキースにも向けた。



 意図をくみ取り、キースはすぐさま瓦礫の勢いを殺し掴んだ。





 突っ込んでくるサリヤンと受け取った瓦礫を盾にし、武器にしたキースは1体のドールを挟み撃ちにした。



 メキメキ



 ゴキャン



 斃した。

 手に残る感覚が後を引くが、残り2体。



 斃したばかりのドールを掴み次はウォルトと挟み撃ちにした。



『・・・う・・・・』

 ウォルトが何かを感じて呻いた。

 おそらく、先ほどキースが感じたものを感じているのだろう。



 斃した。

 残りは1体。



 横目で見るとサリヤンとウォルトは動きに何か重みがある。



 とっさに使えないと判断したキースは使えなくなった、敵のドールを捨て、先ほど斃したドールを同じように掴み、盾にし、残りの1体に向かった。



 強い。



 挟み撃ちにできないが、盾にしたドールを挟む状況でやり合う。



 お構いなしのキースと同様、向こうもお構いなしに味方のドールへの攻撃を気にしなかった。

 もう手遅れと分かっているのか完全につぶれたコックピットを横目で見ながら相手の動きを見ていた。

 手を出す。出させる。関節が見える。俺の方が早い。

 繰り出す攻撃、前に突き出す腕の関節を狙い攻撃する。

 もちろん、残骸と化した、敵のドールの腕であった部分でだ。



 粉砕した。使えない。この腕はだめだ。瓦礫となった敵のドール。一番強いところがある。一番強度があるのは・・・・



『やめろ。』



 響いた声。冷静だ。

 前に出された手。



『もう死んでいる。』

 この人はこんなに冷たい声をするのか。

 意外だ。そして、自分が冷静なことにも意外だった。



『それを放せ・・・・』

「はい・・・・」

 キースは彼の言うとおりにした。

 抱えていたドールの胴体を手放した。



『・・・・・・3人ともご苦労・・・・こんな不意打ちの状況でよくぞ対処した・・・・』

 マツ中尉はキース達を褒めたが、口調に硬さが見える。



 きっと襲撃に緊張しているのだろう。



 いや、違う。



「あ・・・・あ・・・・」

 キースは先ほど手放したドールの胴体を見て我に返った。いや、ずっと我があった。それを思うのが怖かったのだろう。



『・・・・軍事ドームに向かう。』



 マツ中尉と共に来た、ソアレスとマリオを確認した。仲間の姿を確認して、安心するはずなのに、まったく違う感情が生まれていた。



『・・・・警戒を怠るな。』

「・・・・・はい。」

 キースはマツ中尉の言葉に返事するしかできなかった。







 合流し、共に軍事ドームに向かうキース達はお互いの息遣いしか聞こえないくらい無言だった。

 キースはこの無言を作ったのは自分だと知っていた。



 考えを、自分の思考を手放したとき

 何をやっていたのか怖い。



 初めての任務の時、警護対象の輸送船が破壊された。撤退しようと思い戦艦に戻ると戦艦は沢山の敵のドールに囲まれていた。

 戦艦の破損状況から船員の生存は絶望的だった。

 通信の向こうからすすり泣きの声が聞こえていた。



 ああ、もうこの戦艦はだめなんだ。



 それよりも、あのドールたちをどうにかしないといけないな



 敵ドールの方を見てキースは戦艦の爆破だと思った。

 燃料はどこにあるかは知っている。

 応戦したドールの残骸があった。



 これはいい武器だ。





 衝撃波から逃げる仲間の息切れと恐怖に顎を鳴らす音。



 新兵のすることではない

 彼の機転のおかげで助かったんだ

 生存者はいなかった



 お咎めなしのなかに言われた小言だ



 自分の思考を手放し勘で動いて得た成果だ。

 生き残ったのだろうが、人間の生と尊厳を綺麗ごとのように重視していた俺は愕然とした。



『お前は間違っていない。』

 不意に響いた声で我に返った。



「・・え・・・・」

 キースは思わず疑問符が浮かんだ。



『間違っていない。』

 念を押すようにまた彼は言った。



「マツ中・・・・隊長。」



『俺もそう思う。』

 サリヤンは力強く言った。



「サリヤン・・・・・」



『俺もそう思う。』

 ウォルトも同意していた。



 ドールに乗ると仲間と感覚を共有することがある。

 彼らの感覚もキースは分かる。



 だからこそキースは涙がこぼれた。



 ウォルトもサリヤンもキースに対して恐怖を感じている。だが、それよりも信頼というのだろうか、肌がチクチクする感覚ではなく、じんわりと内側から広がる熱のような感覚がある。



『切り替えていこう。』

 マツ中尉の声にキースは無言で頷いた。



 キースの中にあった不安は確かに薄らいでいた。







 出発の時の様子とは違い、隊員全員が集中しているのがよくわかった。この一体感はドール操作独特のものだ。



『マツだ。ドーム入り口付近に到着。』

『ソアレス着いた。』

『マリオ着いた。』

 ソアレスとマリオ、二人の声色は硬さと恐怖と微かに興奮があった。

 この二人は先ほどの戦闘で何があったのか知らないようだ。

「キース着いた。」

『サリヤン着いた。』

『ウォルト着いた。』

 全員が定位置に着いた。そして、何より全員がお互いを視界にいれている。

 戦艦を出て仲間の隊の全滅、敵の殲滅と経験は重いが、間もないのに安心感が大きい。



『・・・・・ドームから返答がない。・・・・様子はわかるか?』

 マツ中尉はどうやらドームに通信を試みたようだ。

 ソワソワ

 背筋がむず痒いような悪寒がした。

「隊長・・・・・何か・・・・寒気がします。」

『何言ってんだ?風邪でも引いたのか?』

 ウォルトは揶揄うように言った。だが、その声に震えがあったことは全員が気付いていた。それを気付かないふりをするのではなく、気にしないふりをしていた。

『それ本当か?キース・・・・』

 マツ中尉はウォルトとは対照的に深刻に受け止めていた。

「いや・・・体調が悪いとかじゃないと思うんですよ・・・・風邪を・・・」

『さっき言ったことに通じるが、ドール乗りの都市伝説であるんだ。人がたくさん死んだ空域は寒気がする。オカルトだけではないようなんだ。適合率二桁以上だと感じることが・・・・』

 マツ中尉の言葉に隊員が息を呑む音が聞こえた。



『この付近で大量の人が死んだということですか・・・・さっきのゴミ・・・・ドール部隊じゃないんですか?』

 ソアレスはゴミと言いかけてすぐに言い直した。

『・・・・人がいるかわかりますか?・・・・通信以外の・・・・』

 マリオは何か気を遣っているのか、あやふやな言い方をした。



「・・・・中に生きている人はいるんですか・・・・」

 キースは聞かずにはいれなかった。わかるはずもないが、どうしても、怖かった。

『中に突入する。開けるコードは聞いている。』

 マツ中尉はそう言うと離れるようにと言い、ドームの入り口付近に近寄った。



『何人か外で待機して、中に数人が行くのがいいと思いますが、どうしますか?』

 ウォルトの問いにマツ中尉は笑った。

『だからそう作戦を立てただろ?まったく、聞いていなかったな。』

 笑いながら説教をするマツ中尉にウォルトは素直に謝った。

『作戦通りなら・・・・隊長たち三人が待機して俺とキースとウォルトが様子を見に行くということ』

 サリヤンは何かを窺うように呟いた。どうやら中に入るのが少し嫌なようだ。それを表に出さないようにしているのは彼なりの強がりだろう。

『俺かキースは必ず別々で行こう。戦力的にそれがバランスがいい。あとの組み合わせは自由だ。乗り気じゃない分役割はこなしてもらうがな。』

 マツ中尉はサリヤンの気持ちを受け取ったようだ。サリヤンの気持ちはよくわかる。先ほどのドール部隊であった残骸に会い、そして敵を斃したのだから、少しでも人の死に触れるのを避けたいようだ。



 サリヤンもウォルトも斃した後、尾を引いているのはよくわかっていた。



『俺行きますよ。』

「俺も、隊長が待機してください。」

 マリオとキースが名乗りを上げた。



『じゃあ、俺が行きます。』

 残る一人はソアレスだ。メンバー確認するとマツ中尉はうんと頷いた。どうやら名乗りを上げるのはこの三人だと思っていたようだ。

『ソアレス。お前は確か軍事ドーム付近のパトロールしていたよな。ドームの開閉の仕方は分かるよな。』

『はい。コードさえ教えてもらえれば入れます。』

 マツ中尉とソアレスの会話から彼はどうやら軍事ドーム関係の任務に就いていた様だ。

 もし、それが本当なら彼が戦場経験者という予想は当たっていた。

 宇宙のパトロール隊は小競り合いに巻き込まれることが多い。キース達の最初の任務がそうであったように、近くで戦闘があれば補給に動く必要がある。

『コードを送る。ドーム内に入ると通信も思わしくできないだろう。1時間で出てこなかったら俺たちは船に戻る。もしそれ以上かかる場合、緊急事態は連絡できればしろ。できない場合はコーダで会おう。無理はするな。』

 マツ中尉の言葉は明らかにドーム内に何かがあると思っているものだった。



 キースは単独の回路でマツ中尉に通信を繋げた。

『・・・・・どうした?』

 マツ中尉は一旦他の通信を切ってキースに応えた。

「・・・・いえ、ウォルトとサリヤン・・・・きっと堪えているはずです。なので・・・・」

 キースは尾を引いているサリヤン達の傍にマツ中尉がついていた方がいいと思った。



『・・・・お前は・・・・全く。』

 マツ中尉はそう言うとすぐに通信を戻した。



『頼むぞ。ソアレス。』

 どうやらコードを送ったようだ。







 手慣れた様子でドームの港を開くソアレスの様子から、その機会が多かったことが察せられる。

『ソアレスはパトロール隊だったのか?』

『まあな。そう言うマリオだって、最初の輸送船の任務は聞いている。キースもだろ?』

 ソアレスの気を遣っている様子から、その任務で何があったのかは知っているようだ。

「ああ。よく知っているな。」

『有名だ。』

 詳しくは言わなかったが、いい意味で有名とは思えなかった。

「そうか」

 そうとしか言えなかった。

 軍事ドームの港が開かれ、中の様子を見て入れることを確認した。



『では、入ります。1時間後に会いましょう。』

 ソアレスはマツ中尉に通信を繋げた。

『ああ。無理はするな。』

 マツ中尉は念を押した。

 ドームの外なら通信ができるが、ドーム内に入ってしまうと通信ができなくなる。連絡手段はドーム自体の通信施設を使うことになる。

『ここは任せろ!!』

『・・・・すまん。』

 ウォルトとサリヤンは少し罪悪感があるようだ。

 出会ってまだ間もないが、同じ部隊で動いているからかそれとも、恐ろしい残骸を見ていたからか、共闘したからか、キースに恐怖しても信頼してくれたからかわからないが、彼らをキースは身近に感じた。



 マツ中尉に関しても、以前より苦手意識が薄くなっていた。

 彼の意図することが共に任務に就くことで、なんとなくだが読み取れ始めているからか・・・

 なにより、彼を頼る自分があった。

 出発するまではそんな自分に苛立っていたのに、まったく都合のいい自分だと呆れる。



 ドームに入るといつもの軍事ドームの景色だった。

 だが、何かがおかしい。

『・・・・この先、生身でも出られる。』

 ソアレスは確認事項のように言った。だが、彼もキースと同じ違和感を覚えているようだ。

『もう少し先に行こう・・・・』

 マリオもキースやソアレスと同じようだ。

「なあ・・・・・俺たちは先に出た戦艦と連絡を取れるのを確認して出港したんだよな。」

 キースはもやもやとよぎる疑問があった。

『タイミングがいいか・・・・運が悪いかだな。ヴィーデは。もしくは・・・』

 ソアレスはキースの言おうとしていたことを同じように思っていた様だ。

『レイモンド・ウィンクラー大将の危惧が当たっているというわけか?』

 マリオは鼻で笑いながら言っていた。だが、その笑いは仮説を否定し馬鹿にするものではない。

『ソアレス、キース・・・・・このドーム・・・・人がいないぞ。』

 先ほどからキースの中にあった違和感の正体をマリオは代弁した。

『軍事ドームの造りはだいたい同じだ。港の厳重な扉の先に戦艦最大10艦を置ける港と整備するための施設と倉庫への移送路。港の先には通信施設と簡易的な拠点、そして所属兵たちの住居。』

 俺はだいたいの軍事ドームを見てきた。と最後に付け加えてソアレスは説明した。

「それにしては・・・人がいない。」

『俺が降りよう。二人は待っていてくれ。ドームの通信施設から外にいる隊長達に連絡できるようにする。』

 そう言うとソアレスはドールのコックピットを開いて外に出ようとした。

「待てソアレス。マリオ。お前はドールで待機していろ。俺はソアレスと一緒に見に行く。」

 キースは何か嫌な気がしてソアレスを止めた。

『俺が行くよ。ドールの操作ならお前の方が・・・・』

「小回りはお前の方が効く。ここは狭いドームだ。俺は大振りすぎる。」

 キースはそう言うとソアレスに続きドールを降りた。



「俺一人で・・・」

「いや。嫌な気がする。」

 キースがソアレスの拒否の言葉を止めた。

 何を言ってもついて来るだろうとソアレスは思ったようだ。宇宙空間用のヘルメットを外しながら困ったように笑った。



「キース!!ソアレス!!」

 後ろからマリオの声が響いた。

 振り返るとマリオがドールのコックピットを開きこっちを見ていた。



「あとでな!!」

 必死に叫ぶマリオを見てソアレスはふと笑った。

「大げさな奴だな。」

「いい奴だ。」

「だろうな。」

 ソアレスは納得したように頷いて言った。







「キースは隊長のこと嫌いなのか?」

 ソアレスは不意にそんなことを聞いてきた。

「え?」

 キースは質問の内容に驚きながら納得してしまった。だが、肯定できるはずない。そもそも違う。

 先ほどの戦闘の最後をマツ中尉に止められたことにキースは感謝していた。

 その後のフォローもキースが言われたかった言葉なのだろう。



「いや・・・嫌いじゃないけど・・・・」

 キースの言葉にソアレスは安心したように笑った。

「そうか。隊のエースと隊長が仲悪いとか困るからな。」

「エースなんて・・・・」

「いや、適合率二桁は立派なエースだ。」

 キースの謙遜にソアレスは首を振った。

「あと・・・・お前賢いだろ?俺たちには見えていないものがわかっているんじゃないか?」

「え?」

 キースはドールの適合率は褒められたことはよくあった。だが、賢いなどとはあまり褒められなかった。

 お前は小賢しい。頑固だ。考えすぎだ。

 こんなことはよく言われた。

「人間的には賢くは見えないけどな。」

 ソアレスは最後に貶し笑った。

「なんだそれ。・・・・よく言われるけどよ。」

 キースは褒められるだけの心地悪さとぎこちなさに、多少落としてくれることのありがたみを感じた。

「だから・・・・隊長はお前を頼りにしているんだろうな。」

 ソアレスはそう言うとキースの前を歩き、手の平を前に出し、制止するようなジェスチャーをした。

「俺が前に出る。お前はエースだ。」

 表情は一変してまじめな顔をしたソアレスを見て、キースは彼が犠牲者の多い任務で生き残っている理由が分かった気がした。

 キースは無言で頷き各隊員に配布されている携帯銃に手をかけて目でソアレスに合図した。

 キースが武器をいつでも出せると合図したことでソアレスは進み始めた。

 サブドールでの戦いがメインの任務に就いていたはずだが、ソアレスは隠密活動に慣れているようだった。動きは静かで無駄がない。目線は常に動き呼吸は整っている。

 キースはソアレスに合わせるよう意識をしすぎて気が付いたら息を止めていた。

「息するのを忘れるな。」

 ソアレスはキースの状況に気付きすぐに指摘した。視野が広い。もしや、マツ中尉は彼のこの能力を知っていたのではないか。そんなことがよぎった。

 ソアレスの足が止まり、キースの前にまた手の平を出し、制止するようなジェスチャーをした。

 心なしか呼吸も潜めるようになっている。



「・・・・臭う・・・・」

 そう言うとアンモニアをかぐときのように手を振り、臭気をキースにも扇いだ。

 つーんとした臭いがした。鉄臭さと腐敗臭、そして胃液のような酸の臭い。

 臭いが鼻を刺激した瞬間に喉の奥から胃液が沸き上がる。

 沸き上がる胃液を唾液と共に強制的に飲み込むと涙が出てきた。おそらく人間的な行動をするのを無理やり抑えたために生理的な涙が出たのだろう。

 キースは塵になったサブドールや船により死んだ仲間を見る機会は多かった。しかし、このように直接的な死を、生生しいものとして見るのは初めてだった。

「・・・・まじかよ・・・・」

 対してソアレスは何度か見たことがあるようだ。悲痛な表情だが、慣れているようだ。その慣れというものが悲しいものであるのは分かる。



 キース達の視線の先には無残に殺された兵士たちの死体があった。

 機関銃のようで、軍服と人であった残骸しか確認できなかった。

「新しくない・・・・・最低でも二日以上は経っている。」

 ソアレスは嫌悪を示すことなく、兵士たちの残骸に近寄った。

 そして、その残骸から軍服のボタンを取り上げて悲しそうな顔をした。

「・・・・・これだけでも持って帰ってやる。」



 各服に右袖の一番上のボタンは一つ違うデザインになっている。それは損害がひどい死体でも犠牲者の人数を確かめれるようにするためだ。ボタンの中には個人情報のチップが入っている。それが破壊されていても糸には血液が着く。それからDNA鑑定をして身元を確認する。行方不明者を出さないようにする工夫がされている。

 それは『天』の襲撃での行方不明者が多いことで新たに考えらえたものだ。

 ソアレスは目を瞑り、無残に殺された兵士のために祈った。キースもそれに倣うように祈った。瞼の裏に死んだ戦友が浮かんだ。おそらくソアレスも死んだ戦友を思い出しているのだろう。



 目に付くボタンを回収するとソアレスはあたりを見渡した。

「この先に通信施設がある。こいつらはおそらく見張りだ。軍事ドームの構造は分かっているだろう?」

「・・・・ああ。」

 分かっているからこそ、この先に人の気配・・・・いや、生命の気配がないのが恐ろしいのだ。







 キースの危惧は当たっていた。

 通信施設に入ると職員の死体が転がっていた。

 先ほどの兵士たちの死体とは違い、人の形をして、人間だったことがわかる。

 ただ、見た瞬間にキースもソアレスも悲痛ではない、畏れと憐みと嫌悪を覚えた。

 職員たち、彼らの腕は、指は本来曲がる方向ではない向きにぐにゃりとまがり、大きい四肢の関節はぐしゃぐしゃに砕かれており、ばらばらな方向を見る指の爪は全部剥がされていた。

「・・・・・通信コードを聞き出すためだな・・・・」

 ソアレスは拷問か・・・・と呟いた。

 軍事ドーム専用の通信コードはそれを知ると本部と連絡が取れる。このコードで連絡を取らないと有事であるということだ。つまり、コードさえ知れば、何事もなかったかのように装える。



「・・・・ソアレス。彼らは死んでまだ間もないんじゃないか?」

 キースはこの部屋に漂う空気に腐敗が少ないことに気付いた。ソアレスは頷いた。

「俺らの出発の前までは生きていた。かろうじて・・・・」

 ソアレスはあたりを見渡し銃に手をかけた。

「いるかもしれない。」

「隊長たちに連絡を取る。キースは見張っててくれ。」

 キースは頷き出入口を確認した。幸い人の気配はない。そもそもこのドームに生きている人間の臭いがしない。

 鼻をつく死の臭いと機械の臭い。死んだ有機的な臭いと変わらず生きている無機的な臭い。



 カタリ・・・カタ

 何かが動く音が聞こえた。

 キースは音の方向を見た。そこは壁だ。壁の向こうに何かが動いている。

 カタ・・・・

 動いている。近づいてくる気配はない。

 機械か何かか?通信施設だからそういう機械が動いていてもおかしくない。

 カタ・・・ドサ

 ガタ・・・・ギギギ

 違う音が混じった。その音は意志を持っているような、人を感じさせる音だ。

 カ・・・カカカカ・・・カタカタカタ

 不規則な音。音に重みがある。質量が加わってきている。何かを動かしているのか・・・・



「隊長・・・隊長!!」

 ソアレスの声が響いた。



 ギギギギ



 耳障りな機械音が響き

『ソアレスか?どうした?』

 マツ中尉の声が響いた。



 ギー



「隊長。軍事ドームは壊滅状態。全滅と考えていいでしょう。だいぶ前から潜伏を赦していたようです。コードを聞き出すために職員を拷問にかけてます。兵士たちは・・・・」



 ゴトン

 カタリ





 カチ

 その音の正体がキースは分かった。



「ソアレス!!伏せろ!!」

 キースはソアレスに飛びかかり、部屋の隅に転がった。

 ガタンゴロゴロ

 壁に背中を強打したソアレスは呻いた。キースも顎を打ち、舌を噛みそうになった。

 痛みに感覚が浸る前に部屋に振動が響いた。



 ガガガガガガッガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッガガ

 ダダダダッダダッダダッダダダダダダダダダダダダダダダダダッダダダダダダダダダダ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴゴゴ

 連続する轟音と振動がひとしきり響いたあと



 ガタン・・・・パラパラ・・・・

 何かが壊れる音と何かが舞う音

 ギギギギ

 何かがきしみ、何かの重さに負けるときの音



 パラパラ

 何かが舞う音がキース達の上に



 ガタンゴゴ

「!?」

 天井が迫ってきていた。

「こっち来い!!」

 ソアレスの声が響いた。

 衝撃音と衝撃がキースの頭に響いた。

 壁が崩れ落ちる音が聞こえた。





 タタタタ

 誰かの足音が聞こえた。

 誰かいただろうか・・・



 この軍事ドームはいつから・・・・俺たちが来る前からだ・・・・

 この軍事ドームに向かう途中で流れてきた残骸に遭った。

 残骸を作った、ヴィーデを壊滅させたのはこの軍事ドームに潜伏していた敵なのか。







「ゲホゲホ」

 舞う粉塵が喉をくすぐり、肺に満たされた気がした。吐き出そうと咳き込む。

「・・・・う・・・・」

 よこのうめき声に気付いた。

「ソ・・・ソアレス!!」

 キースは横に転がるソアレスを呼んだ。

「・・・・大丈夫だ・・・・・」

 呻きながら目を開けるソアレスは痛みに顔を歪めていた。

「・・・・お前、こんな怪我・・・・」

 ソアレスの左腕に鉄筋が刺さっていた。床に血が滴り、池を作っている。



 ソアレスはとっさにキースを押し出した。キースを助けるために負った傷だ。

「俺を助けなければ・・・・」

 キースはさっきまで自分が横たわっていた場所を見た。

 大きいコンクリートの瓦礫がある。キースの体より大きい。

「お前が死ぬより、俺の左腕の方がましだ。」

 ソアレスはそう言うと笑った。

「それに、お前は俺を助けてくれた。さっきお前が俺を突き飛ばさないと、俺は蜂の巣だ。」

 ソアレスの言う通り、先ほどの轟音は銃撃だった。

 おそらく兵士たちを殺したものと同じだろう。機関銃は部屋のコンクリートの壁を破壊し、支えを失った天井が崩れ落とすほどの威力だった。



「ソアレス大丈夫か?」

「幸い・・・・この鉄筋は長くない・・・・キース。悪いがそのコンクリート砕けるか?」

 ソアレスは自分の腕に刺さった鉄筋が伸びているコンクリートを指して言った。

「砕けるかわからないが・・・・ヒビが入っているからいけると思う。」

 キースはそう言うとコンクリートを叩き始めた。

「・・・・ダメそうだな。」

 思ったより頑丈で微かな破片を飛び散らせるぐらいで壊れる気配がないのを見るとソアレスは左腕の傷より上を布できつく縛った。



「悪いな。キース。急いで戻るぞ。」

 ソアレスはキースを見た。キースは頷いた。

「わかった。おそらく俺らを撃った奴らは俺らが死んだと思っている。」

 キースはそう言うとソアレスの右腕を肩にかけた。

「・・・・少し肩を借りるぜ。」

 ソアレスはキースの肩に力を込め立ち上がった。

 ズズズズ

 左腕から鉄筋を引き抜く。

 水気の含んだ新鮮な音が響いた。

 血を噴き出させながら引き抜かれた鉄筋は赤く光っていた。

「・・・・ってー・・・・」

 ソアレスは左腕を上げた。

「急ぐか。」

「ああ。」

 キースはソアレスの腕を肩にかけた。

「ソアレスは・・・・すごいな・・・俺だったらこの状況とこの怪我でここまで平静にいられない・・・」

 キースはソアレスの場慣れ感と痛みの耐性に素直に感心した。

「・・・・・慣れだ。俺はパトロール隊の前はいわゆるマフィアとかを相手にしていた。悲惨な拷問も見てきたし、ひどいケガを負わされて死にかけもした。」

「ごめん・・・・聞き出そうとしたわけじゃ・・・・」

 マツ中尉が経歴は関係ないと言った時にソアレスが安心していたことを思い出した。



「別にいいさ。隠したいわけじゃない・・・・そんなことで怯む奴がこんな任務に就くか?それにこんなご時世だ。」

 ソアレスは安心させるようにキースに笑いかけた。

「そうだな・・・・みんな色々あるもんな・・・・」

 そう自身で口に出してキースはウォルトが見せた憎しみとマリオが弟を失っても気丈に強くいることを考えた。自分は何でこんなに偉そうに物事を考えているのだろう。

 自分の発言と正義感がひどく薄く、どこかの古典であった一文



 風の前の塵に同じ



 それほどの儚さだ。

 直感に任せた行動で助かったことがある。その行動は正義感とは程遠い仲間の死を利用するものだ。



「過去を言いたくなかったわけは・・・思い出したくなかったからだ。」

 ソアレスは足元を見ていた。だが、その瞳が映しているのは床ではない景色なのだろう。



「・・・・悪いな。重い話をして。」

「いや・・・・行こうか・・・」

 慎重に急ぎながら進みだした。



 戻る途中は二人とも何も話さなかった。
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