あやとり

近江由

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六本の糸~「天」2編~

64.風光る

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 軍病院の入り口に白いブラウスに黒いパンツを履いた金髪の少女がいた。

「レイラ。少しいいか?」

 彼女に声をかけたのはプラチナブロンドのこの軍所属でない軍服を着た少女だった。

「ディア。どうしたの?」

「着替えたんだな。」

 ディアはレイラの恰好を見て少し驚いた顔をした。

「ああ。緊急事態になったとはいえ、あの軍服では動きにくい。色んな意味でな。そう言うあなたも地連コスプレじゃなくなっているわよ。」

 レイラはゼウス共和国の軍服を指している。また、彼女の言う通り、ディアも地連の軍服から着替えて今はおそらくネイトラルの軍服だろう。

「そうだな。お前もクロスと同様に口調が二つあるんだな。」

 ディアはレイラが口調を使い分けているのに感心していた。

「軍でこんな口調だったら部下は付いてこないわ。まあ、強気になった時とかはこっちの話し方になるけど・・・・あとは頭で切り換えたいときよ。」

「賢くなったな。」

「いろいろあったからね。」

 ディアの嫌味にも聞こえる感想にレイラは素直に答えた。

「そうだ。レイラ少しお願いしたいことがある。」

 ディアは思い出したように言った。

「なに?」

 レイラがディアに訊き返したとき・・・



「どこ行ったの!?コウノさん!!」

 病院の中から叫び声が聞こえた。



「・・・・コウノ・・・・」

 レイラが何か思い出そうとしてた。

「シンタロウ君だな。逃げ出したみたいだな。彼は思った以上に小回りの利く存在だな。」

 ディアは感心していた。

「そうね。」

 レイラはまた素直に頷いた。

「そうだ。レイラ。連れて行って欲しいところがある。」

 ディアはレイラに向き直り、真面目な表情をした。

「連れて行ってほしいところ?」

「ああ。」

 ディアは頷いた。







「ユイ。」

 コウヤは赤い髪の少女を呼んだ。

 少女はコウヤの方を振り向き満面の笑みを浮かべた。

「コウ。」

 少女はしゃがんでいた体勢から立ち上がった。

 コウヤはユイがいる場所を見て少し悲しい表情になった。



「ここにいたんだ。」

「うん。お父さんから聞いたから・・・・来ようと思っていたの。」

 ユイはそう言うと再び後ろにある墓石に向き直った。



「・・・・俺も来ないといけないと思っていたんだ。」

 コウヤはそう言うとユイの前にある墓石に彼女と同じように向き合った。



「・・・・こんにちは。『天』にいたのに来れなくてごめんね。ユッタちゃん。」

 コウヤは墓石に語り掛けるように言った。



 コウヤの言葉に応えるように、二人に風が吹いた。



「あっちにロッド家の屋敷があるんだってね。」

 ユイは墓地の外を見て言った。

「うん。実は俺、そこに滞在していたんだ。」

「聞いた。めっちゃVIPな生活していたらしいね。」

 ユイは羨ましそうな目でコウヤを見た。

「はは・・・そうだ。ずいぶん前のことに感じる。」

「私も・・・・今と昔が違いすぎて。」

 ユイは笑った。その笑顔の中に必死な想いが見えてコウヤは思わずユイの頬に手を伸ばした。

「コウ?」

「・・・・ごめんな。・・・俺、ユイのこと忘れていて・・・・」

 ユイはコウヤの言葉に意地の悪い顔をした

「ほんとだよ。・・・・なーんてね。」

 直ぐに優しく笑いコウヤの手を取った。



「あの時はそれでよかったんだ。今、会えたから。」

 ユイは大切なもののように、掴んだコウヤの手を握った。

「ユイ。ゼウスプログラムを開くのに・・・・近くにいて欲しい。」

 コウヤはユイに体を向けて言った。

「・・・・うれしいけど・・・・」

 ユイは笑顔で答えたが、直ぐに目で横を見て気まずそうな顔をした。

「ユッタちゃんのお墓の前だから、彼女の冥福を祈ろうよ。」

 ユイはそう言うとコウヤを無理やりしゃがませ、並んでユッタのお墓に向いた。







「シンタロウ?」

 イジーは明らかに病院着のシンタロウを見て驚いていた。

「あ、イジー。」

 シンタロウは一瞬しまったという顔をしたが、直ぐに安堵の表情を浮かべた。

「ああ、あの病院なかなか外出させてくれないからね。特にあなたみたいな怪我は」

 イジーは察したような表情をした。

「というイジーもすごく心配されていたぜ。」

「添木をしているから大丈夫。」

 イジーは右手を挙げた。

「腫れているぞ。・・・・添木ずれてないか?」

 シンタロウはそう言うとイジーの右腕を掴み、折れている右手首を見た。

「ずれている?」

「相当痛いだろ。がっつりずれているぞ。見当違いのところを支えている。」

 イジーの手首に固定していた添木は患部を支えるはずが、患部からずれて斜めになっていた。

「痛みで気付かなかったな。」

 シンタロウの言葉が当たっていたようで、イジーはバツの悪そうな顔をした。

「支えなおす。ちょっと動かすぞ。」

 シンタロウはそう言うと添木を固定してる手首にまいた包帯をほどいた。



「痛いだろ。仕事も大事だけどな、休んでいいんだぞ。」

 シンタロウは添木の位置を調整しながら言った。

「シンタロウは、肺に穴が開いていたけど戦っていたじゃない。私の骨折ぐらいで・・・」

「あれは・・・あの時だったからだ。」

 添木を包帯で固定しながらシンタロウは言った。

「港が早く使えるようにならないと地球に降りれないでしょ。」

「そうだな。だけど、治せるときに治そう。無理をしなくていい時はしなくていいんだ。」

 包帯を巻き終えたシンタロウはよしと言いイジーの手を離した。

「イジーも俺と同じところに向かっているんだろ?行こうぜ。」

 シンタロウはそう言うと、歩きだした。



「ねえ、シンタロウ。」

 イジーはシンタロウを呼び止めた。

「なんだ?」

「・・・・その、さっき車で言っていたこと・・・」

 イジーは少しもごもごしながら言った。

「あ・・・・ああ。」

 シンタロウは思わずイジーから目を逸らした。



「いや、別に変な意味じゃなくて・・・・私は」

 イジーは何故か言い訳を始めた。



「変な意味ってなんだよ。」

 シンタロウは思わず笑った。

「いや・・・・・浮かれているとかじゃなくて・・・そもそも浮かれていられる身分でもないし・・・」

 イジーは消え入りそうな声だった。

「俺にレクチャーしろと言ったのはお前だ。」

 シンタロウははっきりと言った。

「約束しただろ。」

 シンタロウは付け加えるように言った。

「約束・・・・したわね。」



 イジーの返事を聞きシンタロウは満足したように笑った。

「なんか・・・・ごめんね。急に変なこと聞いて・・・・」

 イジーは少し気まずそうにしていた。

「変じゃないって。」

「ありがとう。」

 イジーは笑顔でお礼を言った。





「道の真ん中でのおしゃべりは控えていただきたいな。」

 イジーとシンタロウの間を裂くように凛とした声がかけられた。



「!?」

 二人は思わず声の元を見た。



 そこにはクロスとハクトが並んで立っていた。

 二人とも面白そうに笑っていた。



「ちゅ・・・・中佐!!」

 イジーは思わず敬礼をした。

「いや・・・イジー。今はクロスでいい。」

「え・・・えっと・・・クロスさん。」

 イジーは気まずそうにシンタロウの方を見ていた。



「俺はわからないんだが・・・・なぜ、ルーカス中尉とお前が仲良さげでいい雰囲気なのか、レイラとも仲がいい。」

 ハクトは何かの疑惑の目をシンタロウに向けていた。



「いろいろあったんだ。」

 シンタロウは苦笑いをした。

「いろいろあったんです。」

 イジーはしみじみと言った。

「いろいろあったんだよ。」

 クロスはシンタロウとイジーの後ろに回り、二人の肩を叩いた。



「・・・・なんか釈然としない。俺だけ知らないみたいで・・・・」

 ハクトは少し不満そうだった。

「あとで説明するって。それより・・・ハクトとその・・・」

 シンタロウはクロスを見て何と呼ぼうか迷っていた。

「クロスでいいよ。君がいないと僕らはどうなっていたかわからないんだから。」

 クロスはそう言うと優しく微笑んだ。



「サンキュー・・・・クロス。なんか、宇宙一の軍人に気安いな。」

 シンタロウはむずがゆそうにしていた。

「君に宇宙一と言われるのはむず痒いな。もちろん、ロッド中佐の時はキチンと敬語を使ってもらうがな。」

 一転して、勇ましい口調でクロスは言った。



「はい。・・・ところで二人とも俺らと行くところ同じなんじゃないか?」

 シンタロウは自分たちの進行方向を指差して言った。



「そうみたいだな。」

 ハクトは頷いた。

「そうだね。お邪魔かもしれないけど、一緒に行こうか。」

 クロスはそう言うとイジーとシンタロウを冷やかすように見た。



「・・・・俺がいない間に何があったんだか・・・・」

 ハクトは眉を寄せていた。







 

「二人とも・・・・」

 ユイとコウヤは後ろの存在に気付き振り向いた。



「考えることは一緒か・・・・」

 ディアは目の前の二人を見て微笑んだ。

「そうみたいね。」

 レイラもディアと同じく微笑んでいた。



「レイラ!!ディア!!」

 ユイは二人に満面の笑みを浮かべた。



「お邪魔して悪いな。」

 ディアはコウヤに笑いかけた。

「そう言うディアだってハクトとはいいのか?」

 コウヤはむすっとした表情で反撃した。



「ハクトだが、クロスとどこか行ってしまった。」

 ディアの言葉にレイラは頷いた。

「あの二人って・・・相性悪いはずなんだけど、よく会話しているのよ。小賢しくて腹黒いクロスと真面目で融通が利かない優等生タイプのハクトってどう考えても合わないはずなのよ。間にコウがいないときはたいてい言い争いだし・・・」

 レイラはコウヤを見て呟いた。

「そうなのか?相性はいいとは思っていなかったけど・・・・そんなに言い争いしていたんだ。」

 コウヤはそう言って二人の会話を思い返してみた。

「あ・・・・考えてみれば俺が二人に絡んでいくときって、言い争いしている時が大半だ。」

「それより・・・レイラは随分とクロスのことひどく貶すな。」

 ディアは苦笑いしていた。

「私、クロスによく優しいけど性格悪いとか言っていたし、あっちも私のことキツイ奴とかいっているわよ。」

「羨ましいな・・・・コウ。私にも本音で話してね。」

 ユイはそう言うとコウヤに何かを期待する目をした。

「・・・・いや。それは本音とかとは違う気が・・・・」



「真面目なのも融通が利かないのもいいところだし・・・・あいつは悪いところがないな。」

 ディアは満足げに言った。



「お前らの惚気はサラッというから腹立つな。」

 コウヤは迷いのない言葉で惚気るディアを見た。



「まあまあ、せっかく二人もユッタちゃんのところに来たんだし、惚気どころじゃないでしょ?」

 ユイはユッタの墓石にディアとレイラを招いた。



「そうだったな。」

 ディアは真面目な顔をした。

「こうしてまた来れるとは思わなかった。」

 レイラは以前来た時のことを思い出していた。



「久しぶり・・・・ユッタちゃん。」

 ディアは墓石に視線を合わせるようにしゃがんだ。

「また間を置かずに来ちゃった。でも、前とは違うわよ。」

 レイラもディアと同じようにしゃがんだ。



「ユッタちゃん。君の兄貴、どうにかしてくれよ。」

「ほんとよ。せっかく再会したのに大事なことは隠しているようだし、さっさと行動しちゃう。」

「君の兄貴は宇宙最強の軍人だが、単独行動が癖になっている。」

「ほんとよ。作戦効率も悪くなるから仲良くした方がいいのに、せめて私たちとの再会を喜んでくれれば・・・・・」



「お前が言うな。」

 レイラの言葉にコウヤとディアは同時に言った。



「レイラ何かしたの?」

 ユイはレイラのやらかしが嬉しいのか、笑顔でレイラを見ていた。



「・・・・あれは、私は子供だっただけで・・・」

 レイラはプログラムから救われた時にコウヤとディアの助けを拒んだことを思い出していた。



「子供だよ。俺たちは。」

 コウヤはそう言うとディアを見た。

「そうだな。」

「え?ディアも何かやらかしたの?」

 ユイは興味津々だ。



「・・・・子供なのよね・・・・結局は戦場にいたとしても、私たちはまだガキなのよ。」

 レイラは何かを考えているようだ。



「レイラ?」

「・・・・コウヤ。地球に降りるときに私も連れて行って欲しい。」

「レイラ?いいけど・・・・どうした?」

 コウヤは真面目な顔をしたレイラに驚いた。



「私・・・・地球に残ったゼウス軍を落ち着かせる。無理かもしれないけど・・・・力量的に可能だと思う。もちろん准将とあと、シンタロウも引っ張っていくわ。おそらく私が一番できる可能性がある。」



「それなら、クロスとかは?最強なんでしょ?」

 ユイはけろっとした表情で言った。



「ユイは外のことあまり知らなかったと思うけど、クロスはロッド中佐として沢山のゼウス兵を殺しているんだ。ロッド中佐というより、黒い奴って言った方がいいかな?・・・・実際に俺の前でもゼウス兵を殺した。」

 コウヤはマックスの弟たちの最期を思い出していた。



「え?」

 黒い奴と聞いた時にユイの表情が強張った。

「あれ・・・・クロスだったの・・・・」

「やっぱり噂は聞いていたか。そうだ。地連最強の冷酷な・・・・」



「私・・・・クロスと戦ったことある。」

 ユイの発言にコウヤ、レイラ、ディアは目を丸くした。



「え?」



「なんか、どっかのドームで戦った。その時に黒いドールは銀色かな?そんなドールを庇って・・・・」

 ユイの言葉にコウヤは見開いた目を更に開いた。

「うそ・・・・あれ、ユイだったの?」

「え?・・・・じゃあ、コウも・・・・」



「とにかく・・・・クロスはゼウス軍を殺し過ぎている。だから、ゼウス軍がついていくとは思えない。」

 レイラは会話が停滞し始めていたのに気付いて結論を言った。

「・・・・・」

 ディアはそう話すレイラを見て何か考えるように目を伏せた。



 ユッタの墓石の前で考え込むように話す4人に風が吹いた。



 なびく銀髪を掻き上げディアは苦笑した。

「ユッタちゃんの前で無粋な話をしてしまったな。」

 同じく金髪を掻き上げレイラも頷いた。

「だめね。話していると脱線するか聞かせたくないものばっかり・・・・」

「それだけ、俺らは話さないといけないことが多いってことだな。」

 コウヤは笑った。



「そうだね。私たちは離れていた。一緒にいないといけなかったのに、長い間離れていた。だから、それを埋めるほどの何かが必要なんだよ。」

 ユイは必死な、縋りつくような表情をした。



「そうだな。私たちは共にあるべきだった。」

 ディアはそう言うとコウヤ達を順番に見た。

「でも、離れてもまた集まれた。」

 レイラはそう言うとコウヤ達を順番に見た。



「あ・・・・あー!!」

 ユイは何かに気付いたように叫んだ。



「どうした?」

 3人はユイの指差す方を見た。



「はは・・・・考えることは一緒か・・・・」

 ユイの指差した方向には4人の男女がいた。



「クロス、ハクト・・・それにイジーちゃんにシンタロウ」

 レイラはその姿を確認すると笑顔になった。



「全く・・・・察知する能力があるのだから、そんな顔するなよ。」

 必要以上驚くユイ達にハクトはため息をついた。



「察知するのに集中力が必要だからな。今は休み時間だ。」

 ディアはハクトを見て微笑んだ。



「シンタロウまで、ユッタちゃんのところに来るなんて・・・」

 コウヤは驚いたと同時に嬉しそうな顔をした。



「言ってなかったっけ?俺この前、ここにレイラと来ているんだ。」

 シンタロウはレイラに同意を求めた。

「ええ。その時にここでイジーちゃんと遭遇したのよ。そういえば、二人はここで初めて会ったのよね。」

 レイラは頷くと、意地の悪い笑顔でイジーとシンタロウを見た。



「そう言えば・・・・・コウのお友達だよね。」

 ユイはシンタロウを見て確かめるように訊いた。

「ああ。俺はシンタロウ・コウノ。コウヤとは第一ドームで知り合ってな。色々あって今ここにいる。」

 シンタロウはざっくりと自己紹介をした。



「その色々が気になるんだ。レイラと一緒にここに来た?・・・・全く掴めない。」

 ハクトは相変わらず不満そうだ。



「まあ、まだ時間があるんだし、その間に訊けばいいだろう。」

 ディアはハクトをたしなめるように言った。



「ゆっくりしていていいのか?明日にでも出た方が・・・・」

 クロスの問いにディアは首を振った。



「クロス。急ぐのは分かるが・・・・今日の港を見ただろ。そして、ネイトラルと連絡を取ったが、今地球降下している船が多すぎて地球含めての宇宙が混乱状態らしい。月と地球の間で船がたくさん停滞している。いくら回っているとはいえ、船が多すぎるらしい。あと二日は見た方がいい。」

 ディアはそう言うとイジーを見た。



「ええ。船の混雑はまだ続きそうで、ハンプス少佐が艦長とか船長の間に入っていました。」

 イジーは頷いて、港で見たことを話した。



「ということだ。作戦など特にないだろうが、対策は立てた方がいい。ゆっくり話す時間も大事だ。ましてや、俺たちは精神力と集中力を摩耗するドールプログラムで戦うんだ。」

 ハクトはクロスを説得するような口調で言った。

 クロスは一瞬眉を顰めたが諦めたような顔をした。



「まあ、4人ともそれより、ユッタちゃんに挨拶したら?」

 レイラは新たに来た4人にそう言うとユッタの墓石の前から移動して、そこに4人を招いた。



 4人は頷くとユッタの墓石の前にしゃがんだ。



「・・・・久しぶり。ユッタ。この前ぶりね・・・・」

 イジーは親友に笑いかけた。

「この前はありがとな。・・・・俺の気のせいかもしれないけど、おかげで色々と助かった。」

 シンタロウはイジーとユッタの墓石を交互に見て笑った。



「久しぶりだな。おそらく6年ぶりか・・・・ユッタちゃん。君のお兄ちゃんには非常にお世話になっている。だが、君の力でこの男をもう少し素直にしてくれ。」

 ハクトは手を合わせると横のクロスをチラリと見て言った。



「ハクトの言うことは気にしないでくれ。ユッタ。しばらく来れなくてごめん。レスリーと色々やっていたんだ。君は怒るだろうけど、僕は沢山ひどいことをしたんだ。でも、それも終わるよ。だから、僕たちを見守っていてくれ。」

 クロスは優しく語り掛けた。



 コウヤは再びユッタに手を合わせた。

「・・・・終わっても」

 こっそり呟いた。



 コウヤの聞こえないように呟いた言葉に反応するように優しい風が吹いた気がした。

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