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~糸から外れて~無力な鍵
方違え
しおりを挟む「コウヤ。通信を繋げられるか?」
マックスは去っていこうとする黒いドールを見て言った。
「やってみる。」
コウヤはマックスの言葉に頷くと集中するように目を細めてモニターに映る黒いドールを見た。
ザー
というノイズが響いた。
どうやらこれも遠隔操作らしい。ここまで来ると化け物だとリコウは思った。
マックスはノイズが聞こえたら息を吸った。
そして
「何のつもりだ?クロス・バトリー。お前、何をやっているのか分かっているのか?」
マックスは感情的に、怒鳴るように叫んだ。
どうやら黒いドールと通信が繋がったようだ。
『…マーズ博士。』
通信の向こうから男の声が聞こえた。
「お前が首謀者なのか?違うだろ?クロス。」
コウヤもマックスと同じように感情的だった。
『…あの赤い目は、本物だ。』
クロスと呼ばれた黒いドールのパイロットは忠告するように言った。
黒いドールは片腕を完全に捨ててウィンクラー少佐の乗っているグレーのドールから離れ、撤退に入っていた。
「おい。ふざけんな。クロス・バトリー逃げるな。」
マックスは操舵室に響く声で怒鳴った。
『ジューロクにこのことを話せ。コウ。』
クロスはそう言うと通信を切った。
「おい!説明しろ!!」
マックスは通信が繋がっていないのに関わらず怒鳴り続けていた。
「少佐。お返事ください。」
「少佐。大丈夫ですか!?」
オペレータたちは顔を青くして返事のしないウィンクラー少佐への呼びかけを続けた。
そんな周りの様子に関わらず、マックスは怒りというべきか、感情の乱れが収まらない様子だった。
「マックス。落ち着けって。それよりも少佐を・・・」
リコウが落ち着かないマックスの肩を叩いたらその手を払われた。
今まで親切に接してくれたマックスにそんなことをされてリコウはショックを受けたが、マックスの表情を見てそれどころではなくなった。
マックスは顔を歪めて、怒りと嫌悪を露わにしていた。
それはリコウに向けられたものではないのはわかっている。
先ほどのクロス・バトリーと呼ばれた黒いドールのパイロットに向けられているのだ。
「・・・マックス?」
リコウは腫れ物に触れるように恐る恐るマックスに声をかけた。
「悪いリコウ。」
マックスは首を振ると走って操舵室から飛び出した。
マックスが出て行ったのを見送るとリコウはコウヤを見た。
「先輩。クロスって戦士の一人ですよね。…やっぱり裏切られた感じで腹が立ったんですか?」
リコウはそれだけではないと感じながらもコウヤに訊いた。
「それだけじゃないって、わかっているんだろ。」
コウヤはリコウが察していることが分かっているようだ。
だが、そのことを説明しようとはしないことからかなり深刻な話題なのかもしれない。
『・・・悪い。』
ウィンクラー少佐からノイズ交じりの通信が入った。
「少佐!!」
その瞬間操舵室は歓声と安堵に包まれた。
『逃がしてしまった。・・・テロリストの対応に入る。』
ウィンクラー少佐は普段の声色に戻り、毅然と言った。
「はい。サポートします。」
オペレータは嬉しそうに頷いていた。
「ヤクシジ。サポートするぞ。」
コウヤはリコウの肩を叩いた。
「・・・はい。」
リコウが頷くとコウヤはリコウの肩に手をかけた。
リコウの目の前には光の糸が広がった。
「何か変なのいる。だれだれ?」
ユイは不安定に飛ぶ飛行船の中で叫んでいた。
「え?何が?」
アリアはユイの様子が気になりながらも操縦に必死だった。
「誰かいる。すごい勢いで近付いている。」
ユイはアリアの進んでいる方を指差した。
アリアは前を見た。
するとユイの言葉通り迫ってくる物体があった。
「ドール…」
アリアは息を呑んだ。
迫ってくるドールはすさまじいスピードで飛んできた。
それは真っ黒で、そして片腕を失くしていた。
「ちょっとちょっと、やばいやばい。」
アリアは正面から飛んでくるドールに慌てた。
黒いドールは正面からすさまじいスピードで飛んできて、どんどん迫ってくる。
「きゃ・・・・」
ぶつかると思ったところで黒いドールは高度を上げて二人がのる飛行船を避けた。
避けたことを確認したらアリアは腰が抜けたように座席に寄りかかった。
「はあ。びっくりした・・・」
「え?…クロス?」
ユイは何か察知したように座席から立ち上がり窓に張り付いた。
「ユイ。危険だから…」
アリアが注意してもユイは窓に張り付いていた。
「アリア。あれ、クロスだ。」
ユイは飛び去って行く黒いドールを指差した。
ゴゴゴゴゴ
後ろから何かが破壊された音が響いた。
振り向くと追いかけて来ていた戦闘機の動力部分が破壊されていた。
「何なのよ…」
アリアは安心したが、少し不気味に思っていた。
彼女に横にいるユイも嬉しそうに笑っていたが、不安そうにしていた。
『そこの飛行船。大丈夫か?』
さらに前方に見えてきた機影から通信が入った。
一瞬どきりとしたが、声を聞いてアリアもユイも笑顔になった。
「「シンタロウ。」」
『直ぐに助ける。軍艦にはコウヤもいるぞ。』
通信相手のシンタロウは声に笑みを含めて言った。
「シンタロウ。あの…」
ユイが何かを言いかけたとき
『詳しくは戦艦に入ってからでいいか?』
シンタロウの乗っているドールの機影が近づいてきた。
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