あやとり

近江由

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~糸から外れて~無力な鍵

邂逅

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 格納庫につくと、ジュリオを見て驚いているマックスがいた。

 驚いているというよりも関わりたくないという感じだった。



「リコウ!!イジー!!」

 二人を見つけると助けを求めるように叫んだ。



「全く、待機場所に戻ってください!!」

 イジーはジュリオを見つけると目を吊り上げて言った。



 ジュリオは少し弱ったような表情をしたが、ふとマックスと一緒にいたユイを見た。



「この女性は?どう見ても軍人ではないし、整備士にも見えない。」

 ジュリオはユイを指差して言った。



「お前は避難してきただろ?彼女はいなかったのはわかるだろ。」

 ジュリオに対してマックスは呆れていた。

「…まったくこれだから脳筋は…」

 マックスはどうやらジュリオのような体育会系が苦手のようだ。



「あ、そういえば・・・」

 ジュリオは納得したように言ったが、どうやら彼女の正体が気になるようだ。



「私はさっきこの戦艦に保護された飛行船に乗っていたか弱い少女だよ。」

 ユイはジュリオににこりと笑った。



「あ…そうなんですね。」

 あまりにもユイがにっこりと笑うものだからジュリオは少し照れていた。



「だまされるな脳筋男。その女はか弱くない。」

 マックスはユイとジュリオを見比べて言った。



「お前の方がか弱そうだもんな。」

 リコウはマックスの様子が少しおかしくて思わず言ってしまった。



 マックスには睨まれたが、後ろにいたイジーが少し吹き出していた。









 久しぶりに乗ったドールは散々だった。

 シンタロウは心の底から思った。



 気付きたくないことを分かってしまったし、思い出したくない景色が何度も蘇った。



 絶対に言わないといけない。



 全て吐き出して共有すると約束した。



 早く言わないと、早く言いたい。



 ただ、頭がガンガンする。



 作戦開始からまともな休みを取っていないからかもしれないが、これよりキツイ生活をしたこともある。



『空気循環終わりました。出て大丈夫です。』

 格納庫の空気循環が終わったのか、通信が入った。



 隣に付いたコウヤのドールから人が降りる音がした。

 どうやらコウヤは降りたようだ。



 自分も降りないといけないとシンタロウは神経接続を外して、コックピットの扉を開いた。



 目の前に広がる景色は見慣れた戦艦の格納庫だ。



 コックピットから出るとコウヤが心配そうにシンタロウを見ていた。



 一年ぶりでもドールから降りるのも慣れたものだ。



「そんな顔するなよ。強かっただろ?俺。」

 シンタロウはコウヤの前に降りて、できる限りの笑顔で言った。



「そうだな。」

 コウヤはシンタロウの様子を見て苦笑いをした。



 人の感情に敏感な彼は気付いているのだろうとシンタロウは思った。



「少佐。どうしますか?」

 格納庫の内側からイジーが歩いてきた。

 イジーの他にもリコウとマックスとそれから確かジュリオ・ドレイクという学生がいた。



「…操舵室に連絡をする。」

 シンタロウはイジーに言うと通信機器の方を見た。



 彼が見たことに気付いた整備士たちは急いで機械を作動させようとした。



「・・・いや。いい。」

 シンタロウは諦めたように笑った。



 気付きたくなかったことの一つの自分の新たな視界に目を向けた。



 ザー



 通信機器が動き始めた。

 傍にいた整備士たちが飛び上がった。



『あ、少佐!!ご無事ですか!?』

 操舵室に繋がったようで、格納庫にオペレータの声が響いた。



「ああ。心配かけてすまない。」



『いえ。これからの指示をいただけますか?』



「悪いが事態の収束や艦内放送を任せていいか?情報収集のために時間が欲しい。」



『わかりました。少佐はどうされますか?』



「最初の予定通りで戦艦を進めてくれ。交代で休みも取ってくれ。」

 シンタロウはそれだけ言うと通信を切った。



 機械を直接動かさずにだが、彼が切ったことはわかった。



 その様子を見ていたコウヤは溜息をついていた。

「俺がお前に勝っていること無くなったじゃん。」

 困ったように笑っていたが、何か励ますようであった。









 先ほどの通信の様子はどう見てもマックスやコウヤが言っていた遠隔操作としか考えられなかった。



「少佐もできるんだな。」

 知っているリコウは納得できるが、何も知らないジュリオは何が起きたのかわからない様子だった。



「ユイ、コウヤ。総統に連絡を取る。俺の部屋に行っててくれ。」

 ウィンクラー少佐は慣れた様子で専用スーツの首元を寛げていた。



「俺らは?」

 マックスは自分とリコウを指差して訊いた。



「二人もだ。・・・それと。」

 ウィンクラー少佐はジュリオに目を向けた。



「はい。」

 ジュリオは姿勢を正した。

 この辺の反射神経が従軍経験を物語っている。



「お前もだ。ただし、他言しないことが条件だ。」

 ウィンクラー少佐の言葉にジュリオは目を輝かせた。



「はい!!」

 格納庫中に響く大きさで返事をした。



「ちょっと。私は?」



 先ほど受け入れた飛行船の中から声がした。



 そういえば、飛行船の中に人がいた。



「…アリアが。お前もだ。」

 声を聞いてウィンクラー少佐は苦笑いをした。



 名前は戦士の中には無かったが、何かの関係者かとリコウは構えた。



 どうやら出入口を開けられたため飛行船も閉め切っていたようで、多少大掛かりな開閉の音を立てて飛行船の扉は空いた。



 中からは飛行船に乗りこんだ整備士が出てきた。

 そして、その後ろからは一人の女性が出てきた。



「まったく。放っておかないでよ。」

 出てきたのは女性だった。









 豊かな紫がかった長い髪、大人びた雰囲気のある、その、とても綺麗な人だった。



「…」

 リコウは目が奪われた。



 たぶん世の中には綺麗な人はたくさんいる。だが、彼女は何か違った。



「…アリア…さん。」

 リコウは、忘れないようにウィンクラー少佐が呼んだ名を呟いた。



「アリア!!よかった。出てきたんだね。」

 ユイがアリアが出てきたのを見て飛び上がって喜んでいた。



「ユイ!!離れ離れになるかと思っちゃったわ。よかった。」

 同じ飛行船に乗って、同じ戦艦に乗っているのに大げさなことを言って二人は駆け寄り合った。



 どうやら仲良しのようだ。



 マックスはアリアがあまり得意ではないのか、少しリコウの影になるように隠れていた。



「じゃあ、俺らは行こう。」

 コウヤはシンタロウの方を見たあと、アリアとユイを戦艦内部に行くよう促すように言った。



「久しぶり。コウヤ。」

 アリアはコウヤを見つけて少し冷やかすように、嘲るように笑った。



「…久しぶり。」

 コウヤはアリアに弱みがあるのか参ったように目を逸らした。



 だが、リコウはそんなことを見ていなかった。ただ、アリアに目が釘付けだった。



「おい。リコウ。」

 マックスがリコウの髪を引っ張った。



「イタ!!」

 数本抜けたところでリコウはマックスの手を払った。



「行くぞ。俺らは邪魔になる。」

 マックスは、今度はリコウの腕を引いた。



「え?邪魔って?」

 腕をひかれるままに進むが、リコウは彼が何を意図して言っているのかわからなかった。



「じゃあ、イジーちゃん。後でね。」

 アリアはイジーを見つけると満面の笑みで言った。

 彼女に見せる笑顔は、親し気でアリアが戦士にも身近な存在であると分かったが、リコウはそんなことよりも彼女の見せる一つ一つの表情に目を奪われていた。



「…だめだな。」

 コウヤがリコウを見てボソリと呟いた。リコウの耳には入っていたが、頭の思考にまでは届かなかった。



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