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【幼馴染みは恋愛がヘタ!】
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しおりを挟む生徒玄関に向かって再度、二人は歩き出す。
「もしかして、心配してくれたのっ? わたしが悩んでるって思って、だからわたしを隣の教室まで探しに来てくれたのっ?」
「あーっ、言うんじゃなかった。なんで目ん玉キラキラさせんだよ、ヤな性格だな」
丸くなっていた瞳が、今度はキラキラと輝く。完全に【喜】と言いたげな輝きだ。
玲の分かりづらい優しさに感動している姫毬から、玲はぷいっと顔を背ける。
「まっ、放課後になるまでの間で元気になったならいいわ。それならそれで、サッサと帰ろうぜ」
メッセージを受け取ってから今の今まで心配していたのが、実に馬鹿馬鹿しい。すっかりいつも通りに見える姫毬を半ば置いて行くような速度で、玲は歩き出す。
こちとら、帰宅部。好き好んで学校に長居するなんて、もってのほか。そうした心情のもとでスタスタと歩く玲を、姫毬は慌てて追いかけて……。
「──待って、れーくん!」
「──おわッ!」
追いつくと同時に姫毬は、玲の腕をガシッと両腕でホールドした。
グンと後ろに引かれた玲は、予想外の引力にバランスを崩しかける。玲は急いで姫毬を振り返り、眉を寄せた。
「オマエなぁ、いきなり腕を引っ張るなって。転ぶところだっただろうが」
しかしすぐに、玲の表情は【呆れ】から【驚き】に変わる。
「相談、あるの。わたし至上、四天王レベルの相談」
なんとも、深刻そうな規模。俯いた姫毬の頭部を見ながら、玲は再度、眉を寄せた。
「……ちなみに、残りのみっつは?」
「あっ、まだないよ。これから増える予定だから」
「信憑性のねぇ格付けだな」
やはり、姫毬は姫毬だ。玲は姫毬の頭から視線を外す。
「じゃあ、早く移動するぞ。歩きながら話せるならそれでもいいけど」
「いつもの公園で話したい、かな」
「あっそ。ならヤッパリ、サッサと移動に限るな」
玲の態度を受けて、だろうか。姫毬が、心なしかシュンとしている。
いつもの能天気で天然で、おバカ丸出しな言動も困ると言えば困るのだが。……こうして元気のない姫毬の方が、玲としては困りものだ。
「公園に行くなら、近くのコンビニでなにか買うか?」
「っ! うんっ! お菓子食べたいっ、チョコが食べたいっ!」
「あいよ。買ってやるから元気出せよ」
顔を上げた姫毬は、すっかり笑顔に戻っている。明るいその笑みを見て、つられたかのように玲はふっと小さく笑った。
……笑った、のだが。
「……ところで、姫毬さんや」
「なんでしょう、れーくんさんや」
「──腕、そろそろ放していただけませんかね」
強引に両腕でホールドしてきたものだから、当たっているのだ。なにが、というのは察してほしい。玲だって、年頃の男の子なのだから。
状況に気付いたのか、姫毬は玲の腕を慌ててパッと放した。
「あっ、ごめんねっ! そうだよね、歩きづらいもんね」
「や、そうじゃないけど。じゃあ、そういうことで──」
「──並んで歩くなら腕じゃなくて手を掴まないとねっ」
「──なんで引っ付く前提なんだよ放せッ!」
繋がれかけた手を、今度は玲がペイッと振り払う。姫毬は当然、ガガーンとショックを受けていた。なんとも間抜けな姫毬を見て、玲は堪らず思う。
……本当に【相談したい四天王レベルの悩み】なんてあるのだろうか、と。
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