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【星巡り】
【空のある星】
しおりを挟むその星で出会ったのは、地面に寝転がっている少年だった。
「空だよ。ボクたちには空があればそれでいい。だって、空って素晴らしいじゃないか。……ねぇ、お姉さん? お姉さんもそう思うでしょう?」
こちらを一切見ない少年は、空を眺めたまま囁くように言う。
この星は、空で満ちている。少し上を向けば、あちらこちらに雲や星が映った。
──貴方は今、空のどこを見ているのですか?
少年に訊ねると、静かな声が返された。
「全部だね。あの雲も、太陽も月も、星も……ボクは空の全部を見ている」
──【全部】?
もう一度空を見上げてみると、少年の言っていることが分かる気がする。
燦然と輝く太陽を雲が覆い、月と星々がその輝きを増す。……どうやら、この星は空に溢れている星らしい。
──広大な空に、色々な表情がありますよね?
──貴方はそれを、息苦しいとは思いませんか?
少年は、眉を寄せた。
「『息苦しいかどうか』って? そんなことはないよ。だってお姉さんも言った通り、空は広いんだよ? それに、ボクは強要されて空を見ているわけじゃない。そして、空も強要されて輝いているわけじゃない。だったら、これ以上にステキなことなんてないと思わない?」
──なるほど。
この星で重要なのは、空があるかどうか。空があるならそれで良くて、ないならそれまでらしい。
とても大規模な星だとは、思う。ここで暮らしたなら、私はきっと肩身の狭いを思いをしないのかもしれない。
──もうひとつ、質問してもいいですか?
「モチロンだよ。なんでも訊いて?」
少年の笑みに頷いた後、私は訊ねた。
──貴方と貴方の両親がお金も地位もなくなって、住んでいる家を追い出されたとしたら。……それでも貴方は、こうして寝そべっていられますか?
少年は……やはり、笑みを崩さなかった。
「──当然だよ。だってボクは、お金があるから寝そべっているわけじゃあない。両親が偉いから、寝そべることを許可されているわけでもないからね。ボクの幸福に、お金も地位も関係ないよ」
──どういうことでしょうか?
少年は淡々と、まるで空に輝く星座の説明をするかのような冷静さを見せる。
「お金があるから空を見上げる人なんて、きっといないよ。地位もそう。そういうものに固執する人ほど、空も他のものも見ない。目の前のリアルしか見ないで、空にある輝きを見ようともしない。それって、当たり前のなにかを見落とすこととイコールだって思うんだ。……違うかな?」
それは……私にとって目から鱗が落ちるような話だった。
それが、この星の【空】。この星の、全てなのだ。
──お金がなくても、空があるのなら。……貴方は、幸せですか?
私の呟きに対する返事は、私に対するものではなかった。
「──あぁ、そうだお姉さん。そろそろ流星群がくるから、なにかに捕まった方がいいよ」
不意に。
私は流星群に、捕まった。
足を踏み外した私は。……そのまま、星から落下した。
「あぁ、そうだ。そう言えば、お姉さん……どうして──」
少年の声が、よく聞こえない。
空のある星が、どんどん遠ざかっていく。
……もしも、もしも。
あの星の人々が、どこまでも空から引き離されてしまったら。少年たちは、どう思うのだろう。
あの星から落下していく私には、到底分かるはずもない話だけれど。
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