短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【花言葉には頼らない】

オマケSS【スミレの花言葉は『素直』】 下

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 鳥羽井の睨みをどう捉えたのか。


「あれっ? もしかして『素直』って言われて照れちゃった? それとも『好き』って言われた方かな? ふふっ。キミは本当に可愛いね?」


 田塚はさらに、鳥羽井を褒め始めた。

 ちなみに、田塚は本心から鳥羽井を褒めている。心から『好きだ』と思っているし、なによりも『可愛い』と思っているのだ。

 が、しかし。


「年下相手にそんな揶揄い方、大人げないですね」


 普段から女性を口説いている田塚がそんなことを言ったって、鳥羽井が素直に受け取るはずもない。……もう一度言うが、完全なる自業自得なのである。

 ツンとそっぽを向き、鳥羽井は掃き掃除を再開した。その様子を見て『怒らせてしまった』と直感したのだろう。


「あ、ご、ごめんね? 揶揄ったつもりじゃないんだよ? 本当に、純真な本心からの言葉だったんだけど──って、あぁ! こう言うとまた怒らせちゃうかな? えぇぇ、どうしたらいいんだろうっ?」


 本命相手にはどうにも上手いアプローチが思いつかないのか、田塚はオロオロとした様子で鳥羽井に近寄った。……何度でも言うが、ただの自業自得だ。

 慌てている田塚を見て、気分がスッとしたのだろう。鳥羽井はホウキを動かす手を止めて、田塚を見上げた。


「ふふっ。……私相手にそこまで怯えるだなんて、可愛らしいですね」


 そう言い、小さく笑みを浮かべる。

 ──仕返しをされた。田塚はすぐに、そう気付く。

 そして、田塚が『仕返しをされたと気付いた』と、鳥羽井も気付いた。
 田塚は頭を掻きながら、困ったように笑う。


「普段はこんな風に、誰かの顔色を窺ったりしないんだけどね」
「そうでしょうか?」
「そりゃ、接客業だからある程度は気にするけどさ。……そうじゃなくて、こんな風に……ずっと気にしちゃうのなんて、普段の僕なら有り得ないよ」


 そう言い、田塚は。


「──え、っ」


 ──鳥羽井の頭を、優しく撫でた。

 驚く鳥羽井を見つめて、田塚は優しく微笑む。


「──キミが相手だからだよ」


 田塚の、本心だった。
 ……が、しかし。さすがに四度目は割愛しよう。


「……。……あぁ、私としたことが。こんなところに、大きなゴミを残していたなんて」
「あっ、ちょっと、痛い! ホウキは地味にチクチクして痛いよ! いた、いたたっ! 後で痒くなっちゃう!」


 両手でしっかりとホウキを握り締め、鳥羽井は田塚の足元をせっせと掃き始める。……分かりづらいが、照れ隠しだ。

 ホウキによる猛攻を田塚がなんとか回避した頃。時刻は、開店時間直前にまで進んでいた。


「ふぅ、やれやれ。……さてと! 今日も仕事、頑張りますか!」


 エプロンを手で軽くはたいた後、田塚は鳥羽井の隣に並び、視線を送る。
 鳥羽井も、隣に並んだ田塚を見上げた。


「『口説くのを』……の、間違いでは?」
「あはは~。キミの中で僕ってそういうキャラなんだね~? ……はぁ、凹むなぁ」

「安心してください。その分、私が働きます」
「そんな店長が経営してる店って、安心できるのかなぁ?」


 二人はそんな軽口をたたき合いながら、見つめ合う。
 そしてもう一度、笑みをこぼした。




オマケSS【スミレの花言葉は『素直』】 了




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