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【俺のカノジョは超一途】
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しおりを挟む衝撃を受けた叶は慌てた様子で席を立ち、俺に縋りついた。
「い、嫌ですっ! 私のこと、遊びなんて言わないでくださいっ!」
「待った、叶。そうじゃないって──」
「だって私とキスがしたいって言ったじゃないですか! あんな低俗なもの、汚物同士で勝手にしたらいいんです! 央先輩はそんなことしちゃダメです! しないでくださいっ!」
交際を始めて、二日後。まさか、カノジョを泣かせてしまうなんて。こんな展開、さっきまで読んでいた恋愛小説にはなかったぞ。
……などと言う現実逃避は、一旦保留としよう。
「あのな、叶。それだと、叶も【汚物】ってことになるだろ。だから、そんな言い方するなよ。叶は汚くなんてないし、そもそもキスってやつは──」
「嫌です聞きたくないですっ! 央先輩から真剣に『叶とは遊びだった』なんて言われたくないっ!」
「いやだから、そうじゃなくて……」
なんとも、驚愕だ。なぜなら俺はこの日、ふたつの新事実を発見してしまったのだから。
「やだっ、なにも聞きたくありません! 央先輩に嫌われるのは絶対に嫌なんですっ! 私から央先輩を奪わないでくださいっ!」
ひとつは、俺のカノジョはかなりの困ったちゃん兼、俺の想定以上に俺へベタ惚れだったということだ。ほんのり度し難く、なんとも悩ましい。
そして、もうひとつの発見は──。
「叶」
「嫌ですっ、なにも聞きたくな──ん、っ!」
泣き出して、髪を振り乱して。怯えた様子で体を震わせた叶の肩に、手を乗せる。
──そして俺は、震える叶の唇にキスをした。
宝石みたいな叶の瞳は、普段から大きいくせに驚きで見開かれたことにより、さらに大きくなって。だから、その瞳に映る男が照れくさそうにしている様がハッキリと見えてしまった。
「いいか、叶。キスってのは、好きな奴とする大事な行為だ。だからみんなは間接的だろうがキスで騒ぐし、はしゃぐし、盛り上がるんだよ」
「好きな人とする、大事な行為……?」
「おう。俺は今、初めてキスをしたんだが、その……分かる、だろ」
丸くなった叶の目が、しっかりと俺を映している。
……叶、やめろ。そんなに、今の俺をまじまじと見るなよ。
「──央先輩のお顔、真っ赤です。汗も、たくさん……」
ほら、ヤッパリ。今の俺がどれだけ情けないか、丸分かりじゃないか。
叶の目から逃れるように顔を背けつつ、俺は早口になりながら意見をぶつけた。
「つまり、そういうことだ。好きな奴とするキスは緊張するし、照れくさいし、だけど……う、嬉しいんだよ!」
「うれ、しい……?」
「っつぅか、こういう状況で俺の表情がどう変化したかっていうのは気付いても指摘するなよな! 照れくさいどころの話じゃないだろうが! あと、他の男とキスするなよ! 俺にだって嫉妬心くらいはあるんだぞ、分からずや!」
「……っ」
あぁ、くそっ、顔が熱い。秋になったからと言って部室の空調設定を弄らなかった俺が悪いのか、これは?
……おっと。そう言えば、脱線したな。本日発見した、ふたつ目の新事実を伝えなくては。俺は気持ちを落ち着けるためにも、心の中で呟く。
ふたつ目の、発見。それは──。
「──キスって、スゴいことだったんですね……っ。心臓、壊れちゃいそうです……っ」
唇を指で押さえて、真っ赤になって、さっきまでとは全く違う意味合いで体を震わせている叶が──。
──俺のカノジョが、俺の思っていた以上に……メチャクチャ可愛い、ということだ。
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