リビングデッドと雪男

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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8話【翌日】

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 馬男木先生から飲みに誘われた当日の泥酔事件。終幕は、馬男木先生突然の睡眠だ。

 放っておいていいのかも分からず、そして結局アルコール摂取をした後のケアも分からないから飲むこともできず……なし崩し的に馬男木先生の部屋で一夜を明かした、翌日のこと。

 ――それは……怒涛の勢いだった。


「ごめんなさい! ス、スミマセンっ! ごめんなさい、スミマセンでした……っ! あ、あのっ、スミマセン!」


 室温が低い筈なのに、馬男木先生は吸収した雪を一気に融かすような勢いで水滴をポタポタと零しながら、俺に向かって何度も頭を下げてきたのだ。

 ペコペコと頭を下げている馬男木先生の顔は、昨晩の言動を恥じているのか……真っ赤。


「昨晩は、あ、あんな不埒なこと……よりにもよって、貴方に……スミマセン、ごめんなさいっ!」
「いえ、気にしていませんから」
「ですが、だって、こうして見張って――泊まって、くれたんですよね……っ?」
「放っておくのもどうかと思いまして」


 目が覚めた馬男木先生は、まず何よりも先に俺へ頭を下げてきた。半分寝ぼけていた俺の頭も、突然のことですぐに覚醒したくらいの驚きだ。

 昨日の積極的な一面はどこへやら。普段と同じく眉を八の字にして、情けなくもどこか安心してしまう……いつもの馬男木先生がそこにはいた。


「お酒に付き合うつもりが、付き合わせただけになってしまって……本当に本当に、ごめんなさいっ!」
「いえ――あ、そうです。何ですぐ酔うと分かっていたのに、飲みに誘ってくれたのですか」


 それは当然湧いてきた疑問だ。

 てっきり酒に弱いけど酒が好きだから、あぁなることを想定したうえでの飲み会だと思ったのだが……この謝り方を見ると、どうやら違うらしい。

 しかし、自分が酒に弱いとは知っていた筈だ。だからこそ、昨日の誘いは不思議そのもの。

 俺の問い掛けに、相変わらず情けない表情を浮かべたままの馬男木先生が答える。


「そ、れは……その。……ち、力になりたくて……っ」
「何のでしょうか」
「山瓶子麒麟さんが、リビングデッドになった後……どのくらいアルコールが平気なのかという、測定の……っ」
「だったら飲まなくたって……」


 そうだ。何も無理して飲まなくたって、俺の体調を確認してくれるだけでも良かったんじゃないか。……と、自分で言うのはあまりにも図々しいし何様だという気もするが、間違いではないだろう。

 だけど、俺と馬男木先生ではどうやら少し考えが違うらしい。


「ボクは、その……飲み会に参加したことが、本当に少なくて……でも、そういう席では、あの……飲まないと、つまらないなって、思われたりすると……テレビで見ました、ので……っ」


 なるほど、理解した。
 どうやら馬男木先生は想像通り――いや。

 想像以上に真面目な先生らしい。

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