BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【家族以上】 *

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 そんなシチは、覚束ない足取りで部屋の畳を踏んだ。


「おまつり、みんな……いくって」


 俺のすぐ近くに立ったシチが、言葉を区切りながら呟く。

 つい数年前まで、シチはずっと海外に住んでいた。

 日本語が分からないわけではないが、話すのは得意ではないらしい。いつも、こんな調子だ。

 気付けば、家の中が静かになっている。

 シチの言葉から推測するに、親戚や家族総出で近所の夏祭りに行ったのだろう。


「あれだけ騒いでたくせに、随分と元気なこった。……シチは、行かないのか?」


 振り返ると、シチはフラフラと体を揺らしていた。


「おさけ、のんだ。だめって」


 二十歳になったばかりのシチに、酒を強引に勧めた奴がいたのだろう。

 かなり飲まされたのか、酒に弱いのかは分からないが……しっかり立っていられないくらいには、酔いが回っているようだ。


「とりあえず、座ったらどうだ?」
「ん」


 シチは俺の言葉を聞いてから小さく返事をすると、畳の上に座り込んだ。

 シチが着ている翠緑の浴衣ははだけていて、白い肌を無防備に晒している。

 そもそも……浴衣の正しい着方なんて、知らないのだろう。

 着させられたはいいが、乱れたらどうしていいのか分からないから、そのままにした。……といったところか。

 よく見ると……ほんのり、シチの目元が赤くなっている。

 ペタンと畳に座り込んだシチは、いつもと変わらずボーッとしているに見えた。

 おそらくなにも考えず、ただ畳を見ているだけだろうが。

 ……その姿は、同じ人間とは思えないほど……浮世離れしていて、美しい。

 だが、見た目に騙されてはいけない。

 今ここにいるシチは、ただの酔っ払いだ。

 現に……座っているだけなのに、フラフラと上体を揺らしている。


「オイ、倒れるなよ」


 今にも倒れてしまいそうなほど不安定なシチを見ていられず、俺は一度、作業を中断した。

 シチの後ろに膝をつき、その上体を支える。

 すると、シチが俺の膝の上に座った。

 そのまま、俺にもたれかかってくる。


「――うぉッ!」


 ……前言撤回。

 『もたれる』なんて可愛いもんじゃない。

 全体重を預けて、シチは俺ごと床に倒れようとしてきているようだ。

 慌ててシチの体に手を回し、バランスを取らせる。

 ――その瞬間。

 ――ピクン、と。……シチの肩が、跳ねた。


「――んっ」


 咄嗟に回した俺の手が、シチの素肌――胸に、触れたからだ。

 甘い響きを含んだ声が、薄く開かれたシチの口から漏れ出る。

 シチは俺に寄り掛かったまま、小さく息を吐く。

 ――その姿も、美しい。


「……ねえ」


 不意に、シチが俺を呼ぶ。

 いつもボーッとして、どこを見ているのかよく分からない瞳が、後ろに座っている俺に向けられた。

 白魚のように、それでいて儚い印象を与える細い腕が伸ばされ、華奢な指が俺の頭を撫でる。


「……あつ、い」


 言われてみると、シチの肌はうっすらと汗ばんでいた。


「……離れるか?」
「やだ」


 シチが、首を小さく横に振る。


「さわって」


 シチはそう言うと、脚をモゾモゾと動かし。

 そのまま……脚を、開いた。




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